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「フリグスはどこにいるの?」
「きっと部屋で寝ていると思うよ。まだ完全ではないと思うし。⋯⋯気になる?」
「うんっ、気になる」
力一杯頷くと、一瞬目を見開いたリエヴルが目を細めて微笑を浮かべた。
「じゃあ、フリグスの元へ行こうか」
意気込んで頷いたものの、フリグスがいる寮に近づくにつれ、緊張感が増していった。
今日はちょうど学校が休みの日。時間帯は昼過ぎ。恐らくフリグスの性格的に自堕落なことはしていなく、己を律し、日々勉強に励んでいるだろうから、この時間帯に惰眠を貪っているとは考えられない。
寝ているって、どういうことだろう。
「フリグス、入るよ」
リエヴルが扉を数度叩き、中にいる者に言う。
ちなみにベンゲルは「もうオレは帰るぞ」と言って、寮へと帰って行った。
その際に、「ぼくとペアになろうとしてくれてありがとう」と言った。
すると、ベンゲルは返事代わりに後ろ手で振った。
その時の背中がどことなく寂しげに見えたのは気のせいだっただろうか。
先ほどの出来事を頭の隅に置き、部屋にいるはずの相手からの返事を待たずにリエヴルは開けた。
部屋の先にはソファとローテーブル、その右手に見える扉が寝室だ。
この部屋にいないということは、寝室にいるのだろう。
だとしたら、聞こえないのも当然か。
リエヴルと共にその寝室へと通じる扉を断りも入れずに入っていった。
部屋の大半の面積を占める大きなベッド。
マントを返しに行った時にマーキングのためにといつもよりも魔力を注ぎ込まれ、馴染むまでいてもいいと言われたあの日のことを思い出し、人知れず顔を赤くさせていたが、本来そのベッドを使うべき主の姿を見た時、血相を変えた。
ほんのりと赤くさせ、浅く息をしているらしく、息継ぎがどことなく早く口を動かしているフリグスが眠り心地いい敷布団に身を沈めていた。
こんな姿を見たことがなかった。
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