118 / 139
118.
突きつけてくる指先が弱々しく、らしくないところを見せるが、いつもの傲慢さをうかがえた。
でも、なんでだろう。嬉しく感じる。
同時にきゅうんと切なくも感じる。
「それって、妬いているってこと?」
「⋯⋯何、抜かしたことを言っている。⋯⋯オレは、ただ⋯お前のペアだと、自覚してやろうと⋯⋯」
「魔道具が外されたから、きっとフリグスの手を煩わせないかも」
「⋯⋯その程度で⋯⋯よく大口を叩けるな⋯⋯」
言ってくることは、いつものフリグスだ。
だが、少し見せた表情が小さく笑った顔のようで、ミコの瞳孔は開いた。
「とにかく、煩わしいものはなくなった⋯⋯。⋯⋯精々、オレのために、成績を上げろよ」
「⋯⋯はーい⋯⋯」
魔道具がなくなったから、きっと今までよりも成績は良くなると思う。同時に、これからは魔道具のせいで成績が良くならないという言い訳は通用しないのだから、頑張らないと。
「あと、アイツの話を⋯⋯今後一切、話するな」
「先生と何があったの?」
「⋯⋯お前に、言うことではない⋯⋯」
言うのを渋っているようで、言う気はなさそうだ。
それが一番気になることだが、そのことをいつまでも追及してしまうと、本気で怒られてしまうだろう。
それに今、彼は具合が悪い。
そっとしてあげないと。
けど、これだけは言ってあげようか。
「ぼくね、フリグスがなんでそういう気持ちになるのか知ってるよ」
「⋯⋯なんだ」
「それはね⋯⋯」
フリグスの耳にこそっと告げた。
途端、耳も、さっきよりも顔を真っ赤にしたフリグスが信じられないといった目をし、怒っている顔も見せた。
自分の気持ちに素直になれない彼を見るのが初めてで、怒っていることさえも愛おしく感じられる。
素直にならないのが彼らしい。
けど、そうやって認められなくて、具合が悪いのにも関わらずさっきよりも声を荒らげて怒っている彼を窘めるよりも、おかしくて笑ってしまう。
その顔が、態度が口にせずともミコと同じような気持ちだと思ってしまって、嬉しくて笑顔になる。
ぼくも好きなんだよ、って言ったら、フリグスはどんな顔をするんだろう。
そんな悪戯を思いついたようなことを考えながらも、ミコは二人きりとなっていた部屋で笑い続けていたのであった。
ともだちにシェアしよう!

