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1-1とある魔術師になれなかった者の末路

五つの国が隣接する大陸の、その中の一つの国のある名門貴族の家に、子どもが産まれた。 その両親は大変喜んだ。なにせ男子であり、将来は自分達や、先祖代々がやってきた王宮魔法使いとなり、国に貢献するような魔法研究、そして有事の際に隣国の対抗手段として役に立てるのだから、諸手を上げるほど喜んだ。 だから、その子どもが喋れる頃合いで家庭教師を雇い、魔術の勉強を厳しく教えた。 ところが。火の魔法、水の魔法、植物の魔法、土の魔法と基本の魔法は一通り扱えるというのに、肝心の光魔法が扱えなかったのだ。 魔法の中で最も扱うのが難しく、それゆえ扱える者が少ない光魔法は、どんな闇も払い、闇夜さえも照らし、生きる希望を与え、人々を生きる活力を促す高等魔法は、国に貢献するのにふさわしいものだった。 代々容易く扱えたその魔法を、この子どもにいくら教えても何一つ発動できない。 発音が悪いのかと、まだ幼さが残る言葉を、家庭教師が言った言葉と少しでも違っていたりしたら、頬を叩いて徹底的に矯正させた。 自分達が思っている通りの発音ができた頃、今度は基礎魔法の本に書かれている魔法を最初から最後まで完璧に発動させることができるまで、食事を抜きにさせた。 それらができた頃、再び光魔法を教えたものの、何一つ発動させることができなかった。 本に書かれている基礎のことですら、何一つも。 それを機に両親は完全に見放した。

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