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ひそひそ声ですら耳障りに感じる静かな書斎で、まだ幼さが残る一人の少年が充血した目で本に目を走らせていた。
それは何かを血なまこになって探すように、それは何かを追い求めるように。
充血しているのは、目が腫れていることから泣き腫らしたからと思え、目元が隈になっていることから一睡もせずとも思えた。
少年の周りを囲むように積み上がった本達は、少年が必死になっている証拠であったが、当の本人はそれでも納得している様子はなく、何かに囚われているかのように本に齧り付いていた。
が、ついにその本を読み終えてしまった頃、閉じたのと同時に椅子から滑り落ちるように下り、そしてそのまま床に寝転んだ。
いくら読んでも、いくら書かれている通りの呪文を唱えても望む通りのものが発動できなかった。
両親の望む、魔法が。
寝食を疎かにし、書かれている呪文を片っ端から喚んでも、何の反応もしなかった。
どうして、どうしてあの魔法だけは唱えられないの。
他の魔法はいくら唱えてもいとも簡単に発動できるのに、光魔法だけはどうしても発動できない。
読み方だって合っているはずなのに、発音だって合っているはずなのに。
何が違うっていうんだろう。
両親に言われた通りのことをしてきたのに、何がだめだというのか。
早く、早く光魔法を扱えるようにならないと、いつまで経っても両親が見向きもしてくれない。
鋭い口調で言われても、頬を叩かれても、食事を抜きにされても、寝てはいけないと言われても、その時は接してくれたのに、今はまるで最初から存在していなかったように振る舞われている。
どんなに痛いことをされるよりも、食べられないよりも、寝られないよりも、無視をされるのが一番心が痛んだ。
できるようになるから、お願い、見て。
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