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悲痛な叫びが涙となって、視界を滲ませる。 誰も慰めてくれない悲しみは、ただ虚しいだけ。 すすり泣く中、ゴトッと重たいものが落ちる音がした。 驚いた拍子に一瞬で泣き止み、溢れ落ちそうな涙を急いで拭った目で音がした先を見た。 どうやら本棚から本が落ちたようで、その拍子にページが開かれた状態となった。 書斎にある本を全て読み終えたかと思ったが、まだ読んでいない本があったのかとその本に吸い寄せられるように歩み寄り、手に取った。 闇夜のように真っ黒で、しかし題字や装飾は銀色にまるで星が散りばめられているかのようにきらきらと輝いていた。 綺麗だなと思った。 ひと目で印象づく代物であるのに気づかなかったのか、食事も摂らない上に睡眠不足のせいで頭が働いていなかったのだろうと自問自答をしつつ、改めて開いた。 見たことがない文字だった。 今まで見てきた文字とは似ても似つかない文字で、一瞬慄いたものの、次の瞬間当たり前に読めるようになっていた。 産まれた時から聞き馴染みがある言語のように、滑らかに読んでいたその文は、何度も読んできた本達よりもずっと馴染みがあるものだった。 しかし、この本に書かれているものは、口にしてはならないもののようだった。 けれども、今の状況ではとても必要性のあるものだった。 見放された間に、いつの間にか兄弟ができていたのだ。 そのせいで余計に自分のことなんて見てくれなくなった。 自分の存在を否定された。 兄弟に向ける目は、かつて自分に向けられていた愛情溢れる慈愛に満ちたもので、その目をどこの誰とも分からない者に向けている度に、胸が痛んだ。 この胸の痛みの原因となるものを取り除かないと。 あの兄弟が消えれば、また両親は見てくれる。 そんな期待を胸に原因を取り除いてくれるらしい魔法を唱えた。

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