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意識が朦朧とする中、辛うじて感じるのは、背中に伝わる草の柔らかさと草の匂いと、遠くに聞こえる小鳥の鳴き声だった。
さっきいた場所ではないことは確かなようだ。
あの家ではない、どこかの場所に捨てられてしまったのだろう。
何が、いけなかったの。
散々泣いたと思っていた涙が溢れ、溢れ落ちる。
しかし、目元から落ちた瞬間、激しい痛みが襲った。
思わず叫んだ。だが、それも痛みに変わってしまった。
何が起きたのかと、自身の顔に触れる。
⋯⋯皮膚の感触ではないものが伝わった。
ぞっとした。
父親が何か唱えていた。そのせいで、もしかしたら顔が焼け爛れたのだと思われる。
なんでこんなことをしたの。
泣きたくても泣けなくて、呆然とした。
けれども、その悲しい感情が胸の奥に潜んでいた暗い感情を呼び起こすきっかけとなった。
あの両親も、しんでしまえばいいんだ。
しんでしまったら、もうぼくのことを痛めつける人も、こんな顔にするひともいなくなる。
ころしてやる。
かつて両親が自分に向けていた憎悪の感情が湧き上がり、それを糧に日々を送った。
まずは顔をどうにかしないといけない。
気が遠くなるほどの膨大な魔法の知識を頭の中に巡らせ、それを口にする。
「⋯⋯っ」
じわじわと新しい皮膚が形成されていっているのを感じる。
同時に、先ほどとは違う鋭い痛みが来て、それでも痛みに苦しむこととなった。
痛い痛い、許せない。許せない。
何故、自分だけがこんなにも痛みで苦しまなければならないのか。
この痛み、あの二人も味わえばいいのに。
許せない。許せない⋯⋯。
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