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「⋯あ⋯⋯あ⋯⋯」 痛みに耐える日々を送っていたある日のこと。 口周りの皮膚が再生され、試しに口を動かしてみた。 多少痛むが、支障はないだろう。 あとはその上部分が上手く再生すれば。 ぐっと、拳を作った。 と、そこで空腹を告げる音が鳴った。 これだけ魔力を消費しているとどうしても空腹になってしまう。 食事をするのは面倒だ。だが、食事を摂らないと再生するのにも時間がかかる。 億劫そうな足取りで、魔法で作り上げた家から出、散策しに行った。 「う⋯⋯っ、⋯⋯」 何かないかと見渡しながら歩いていた時、どこからかすすり泣いているような声が聞こえた。 知らぬ間にこの森に捨てられて以来、ここから出たことがない。 だから、自分以外に人がいるとは思わなく、しかし、警戒した。 顔の上半分が自分でも見たくないぐらいの酷い有り様で、こんな顔を見られてしまったらなんて言われるか。 ──二度とそんな顔を見せるな。 親の投げられた言葉が頭に響く。 目を合わせることすら許してくれなくなった人達。 その言葉が呪いとなって、ざわつく木々がかつて罵倒してきた言葉のように責め立ててきた。 嫌だ。そんな言葉を言わないで。 両耳を塞ぎ、その場にうずくまる。 と、ふとあることを思い出し、ハッとする。 どこからか聞こえる泣いている相手も、自分のように捨てられてしまったのかもしれない。 同情した。 だったら、助けてあげないと。 そう思った時には、その声の方へ歩き出していた。 今はもう、雑音は聞こえない。 少し拓けたところにその子はいた。 その場に座り込み、「おとうさん、おかあさん」と泣きじゃくっていた。 立ち止まりそうになった。 自分達の望み通りのことができない息子に手を上げて、痛くて泣いていた時のことを思い出した。 そんなことを言っても誰も助けてくれないのに。 ぐっと込み上げてくるものを堪え、代わりの言葉を発した。

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