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「どうしたの、迷子?」
当たり障りのない言葉を掛けた。
すると、急に声を掛けられて驚いたらしいその子は、見るからに肩をびっくりさせ、こちらを見上げた。
胸が高鳴った。
生まれつき魔法を持たぬ者の特徴である栗毛色の髪に、まだ幼さが残る顔立ちの少年の潤んだ瞳に吸い込まれそうになった。
可愛い。こんな可愛い子がいるなんて。
ずっと見ていたいが、こちらを見た時から怯えた目を見せている子に、見続けるのは不愉快だろう。
フードを目深に被っているとはいえ、ふとしたことで不気味な顔を見せてしまうかもしれない。
ひとまず、今は安心させておこうと口元を微笑ませた。
少年が瞳を輝かせたように見えた。
なんで、そんな反応を見せるのか。
そんな反応を見せてしまったら、同じような気持ちだと思ってしまうではないか。
この子の気持ちが知りたい。
「暗かったから怖かったんだね。でももう大丈夫。今は暗くて危ないから、一晩泊まっていきなさい。朝になったら帰ろうか」
この子ともっと話がしたい。
顔も見えない知らない人について来てくれたその子は、その素直さといい、緊張で固まっていたというのに、目の前に食事を置いてみると、空腹音を鳴らし、それが聞こえてしまって笑われたこともあって、顔を真っ赤し、それを見られたくないと隠すように食べ出したりと、可愛らしいところを多々見せる。
こんなにも素直で純粋な子、他にはいない。
そばに置きたい。
そしたら、毎日花が咲くみたいに可愛らしい笑顔を見せ、小鳥がさえずるみたいな声で話しかけてくれるだろう。
欲しい。この子が欲しい。
でも、この顔を見せられない。
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