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第2章:性奴隷編 第1話

「ふ、っ、――っく…ぅ、あ…ん、う…っ……あ、…っぅあっ!」  パンパンと小気味の良く肌を打つ音が部屋に響いていた。  カリが結腸を通り抜ける悦楽に陶酔する。前立腺を責められるのも気持ち良いが、結腸を抜かれる時の快楽はそれを超える。この行為に慣れた今、性器を弄るよりも直腸を擦られる方が余程気持ち良い。既に性器を慰めずとも、絶頂を迎えることなど容易い体になっていた。  むしろ、後ろを穿たれないと達することすらできない。射精に至るには後孔への愛撫が欠かせなくなっていた。  ただ、欲を吐き出すためだけの一人慰みなどすることないが。  羞恥を煽られるためだけに彼の前で自慰をさせられることはある。その度に卑猥な言葉を投げかけられて、羞恥に身を赤くしながらも興奮してしまう。  そして勃起しても一人で達することもできず、淫らな台詞で強請るのだ。後孔に慈悲をくれと。彼へと向けて尻タブを開き、孔を見せつけながら。  必要とあらば、尻を振る。漏れる粘液や昨夜の名残が脚を伝うのにすら感じ入りながら。 「まんこ、壊れちゃう、こわれ、ちゃうっ!」  獣のように後背位で突かれ興奮する。もう何度この体勢で貫かれたかなんて覚えていない。それくらい、この行為を受け入れていた。 「ちんぽ、いいよぉ! すきぃ! ジュポジュポ、もっとしてぇ!」  淫らな言葉だって、もう言い慣れてしまった。毎夜……日によっては、朝からの時もあれば昼間にだって求められればその場で身を委ねる。そうすることがココにいられる唯一の理由だと飽きる程に言われ続けてきたから。 「俺のまんこ、壊して! アレクのちんぽで、メスにして!」  笑みを浮かべながら首だけで後ろを振り向いた。口角がヒクついていないかと少し心配だったが、彼は圭の顔を見ることを喜ぶ。こんなつまらない顔、見たところで楽しくも何ともないだろうに。この世界には存在しない黒髪黒目がそんなに珍しいのだろうか。もう見慣れて飽きても良い頃合いだろうに。  美人すら三日で飽きると言う諺があるのに、圭の絶対的な支配者はそんな素振りを微塵も見せない。そんなにこの体が良いというのか。何も知らず、彼の好みになるようにと躾けられたこの貧相な体が。 「そろそろ出すぞ」 「ほしい! マンコの奥、いっぱい種付けして……ッ」  抉るように最奥に穿たれる性器は力を漲らせている。本当は、まだちょっと受け入れるのは苦しい。圭と彼の体格は全く見合っていないのだ。40センチ近い身長差。ガタイだって全然違う。実用的な筋肉を身に着けた彼と、受験を経て少し筋肉の落ちてしまった貧相な体。覆い被されば圭の体など彼に隠れて見えなくなってしまう。 「ああああっ!」  ガツガツと容赦なく抉られた後、今日一発目の射精が最奥の柔肉へと浴びせられた。ドクドクと勢い良く放たれた大量の粘液の攻撃に後孔が完敗する。  射精の快感に導かれるように圭も絶頂へと達した。奥に挿し込まれた男の凶器とは比べるまでもなく、愛らしいとすら揶揄され笑われる自らの分身からも精を放った。 (やば、失敗した……)  吐精しながら後悔する。ここでイってしまったら、この後の長く続く淫らな夜を耐えられる気がしない。中を穿つ男は、圭が気をやることを酷く嫌う。元々、体操で鍛えた体力のお陰で、同い年の男子よりは体力測定の結果だって良い。クラスの中でもトップ5に入る程だ。運動部に所属していないにも拘らず、運動神経は負けない自信がある。その証拠に何度か運動部の助っ人を頼まれていたし、入学した頃は勧誘に引っ張りだこだった。「体操部がない」と言う理由をつけて頑なに拒否していたら初夏には落ち着いたが。  それでも運動部のエースを張る先輩たちは、廊下などで会えば勧誘の言葉を投げかけてくる。「いつでも待っている」「気が向いたら来てくれよな」と。  ハァハァと吐精の余韻に浸りながら触り心地の良いシーツに頬を擦り付ける。力の抜けた性器が直腸を引き抜かれる感覚。精を放ってもなお大きい男根は男なら憧れるものだろう。受け入れる側にとっては凶悪以外の何物でもないが。  ヌポリと音をさせて亀頭の先端が抜け出た。巨大なイチモツに犯されていた直腸はすぐに口を閉じることができない。ハクハクと何度も開閉させながら、ゆっくりと時間をかけて後孔が閉まっていく。  圭の体に受け入れるにはあまりにも大きすぎる陰茎。一度犯されただけで体への疲労は相当なものだ。  しかし、この世界の住人は体格同様に日本人の圭よりも体力や腕力で大いに優れている。ある程度の運動神経によって行動などはカバーできても、体力面という一点においては埋められる差ではない。  毎日体力作りができているというのならいざ知らず、座学とセックスばかりを繰り返す日々の中でなど。  後ろを責める男による性交は激しい。夜の営みは男の仕事の終わり時間にもよるが、4~5時間はこの淫らな行為に耽っているのではなかろうか。何度も体位を変えては穿たれ、もう許してほしいと泣きながら乞う。そんな頃には夜も更け、グズグズにされた体は指一本動かすことすら億劫になり、意識を失うように眠りに落ちる。  何度か外が白み始めるくらいまで犯され続けた時には、次に目を覚ました時、既に夕方近い時間になっていた。そこから湯浴みと食事を済ませると、もう男が仕事を終える頃合いに近くなっている。セックスだけしかできないという生活だけはどうか勘弁してくれと懇願し、渋々ながらも承諾を取り付けたのはここに来てからどれくらい経った頃だったかすら忘れてしまった。それでも男の機嫌によっては、朝方まで貪られることもあるのだが。  比較対象となる人物を知らないから、もしかしたらこれが普通なのかもしれない。圭よりも体力溢れる人種たちだし、こっちの世界で会った人など本当に一握りしかいない。名前を知る者など片手で足りてしまう。圭の所有者によって禁じられているのか、身の回りの世話をする使用人たちとはまともに話をしたことがほとんどない。話しかけても無視こそはされないものの、世間話に至れるほど会話に繋がらない。  何度かチャレンジはしてみた。しかし全く結果に繋がらず早々に諦めてしまった。「諦める」なんてスポーツマンとしてあるまじきことだと分かっているのに。  来たばかりの頃に持ち前のコミュニケーション能力を駆使して仲良くなろうとしてみたし、実際少し心を開いてくれた人がいない訳ではなかった。  しかし、そういった人は例外なく世話人からは外れ、姿を見なくなった。そんなことが幾度か続き、使用人たちも圭に関わろうという人はいなくなったし、圭自身も自分のせいだということを理解してからは余計なことを話しかけなくなった。 (普通、セックスって一回イったら終わりじゃねーのかよ)  ハァハァと荒く息を吐き出しながら、乱れた呼吸を元に戻そうとする。まだ高校一年の圭にとって、童貞を捨てた友人はそこまで多くない。しかし、オナニーくらいは皆しているから、一日の吐精の回数くらいなら会話にのぼったことがある。  男子高校生の性欲は強いと言っても、一度放てば大体はスッキリする。一日の最高オナニー回数自慢で盛り上がったこともあるが、射精を伴わない絶頂を会得した今、イった回数だけで言うならば友人たちの回数を優に超える。  ただ、空っぽの精巣のままイき続けることは体への負担が非常に大きい。疲労度は射精時とほぼ変わらず、そんな絶頂がずっと続くのだ。心身への負荷の大きさは体力漲る十代とは言え程がある。  それがほぼ毎日。欠かすことなく行われる日常。  自分の存在価値がそれだからと言われればそれまでだが、それでも180度変わってしまった日常というのは受け入れがたいものがあった。  今はすっかり慣れてしまった気もするが。 「房事の真っ最中に考えごとか?」 「あっ」  腕を引かれ、男の膝へと乗り上げた。見上げた瞬間、噛みつかれるようなキス。我が物顔で口内を暴れ回る男の舌になすすべなどない。されるがままに舌を差し出し、相手の情欲へと応える。  キスの最中に胸を弄られ身を捩る。出したばかりの敏感な体を弄ばれるのはツラい。ムクムクと頭を擡げる下腹の分身。これ以上、序盤でイきすぎるのは本当に勘弁してほしい。胸で戯れる彼の手へと指を絡ませ、恋人のように握り締める。これ以上、悪さをしないように。  体を押し倒され、ベッドへと背を縫い付けられた。角度を変えて何度も唇を貪られる。重なる胸板。綺麗についた無駄のない筋肉が羨ましくすらある。  彼は今宵、どうやらキスを所望する日のようだ。口の中で暴れ回る男の気分には本当にムラがある。放った直後にお掃除フェラを要求されることもあれば、今日のように激しいキスを求めてくることもザラにある。  そのどちらであるにせよ、射精後の賢者タイムと言えども休ませてくれる時間など与えてくれない。寝台の上で行為に耽っている時間の全てが奉仕の刻であり、自分の時間であって自分の時間ではない。目の前の男のために全てを捧げなければならない乱れた蜜夜なのだ。  恋人繋ぎした手に力が籠められる。シーツに押し付けるように握られた手から逃れるなんてできない。  こんな風に求められれば勘違いしてしまいそうになる。  まるで好かれているのだと。  この男に限って、そんなことはないというのに。  彼にとってはどんな人間もが些末な存在。普段から周りにいる者も全て。  仕事に関してある程度信頼の置ける人間はいるであろうが、それでもきっとこの男の深い部分……真に互いに分かり合える者というのはいないだろう。  どんなに秀でた者であったとしても。  そんな中で、圭のような存在が彼の『特別』たりえるなんて思っていない。  だって、大切だと言うのであれば、こんな扱いするはずもないのだから。  良くて男娼、悪ければ愛玩動物。人ですらない。きっと、そんな程度であろう。 「今日は随分と気もそぞろではないか」  荒々しい唇が離れる。口づけの激しさは、離れても互いの唇を銀糸が繋いでいることが物語っていた。 「そんなに考え事がしたいなら、存分にさせてやろう」 「ちがっ、そ、そんなんじゃ……ッ!」  慌てて否定しようとしたが、時すでに遅し。  ……いや、彼にとって、遅いというのは問題ではないのかもしれない。そう思わせてしまったこと自体が罪なのだ。  組み敷かれていた圭の体が起き上がる。自分の意思ではない。勝手に体が動いているのだ。 「ぁっ、や……」  嫌だと口にしてしまいそうになり、咄嗟に両手で口を塞ぐ。  彼に対して拒否の言葉はご法度だった。意に添わぬ言葉を口にして人生を終わらせた者は数知れない。  立てつかずとも、機嫌を損ねただけで明日の朝日を拝めないなんてことも十分にあり得る話なのだ。 「……………ッ!!」  彼の体の下から抜け出て、今度は相手をベッドの上で仰向けにさせる。自分の思うようにならないことを嫌う男が、特に異論を唱えることもなくされるがままになっていた。  男の顔に浮かぶ嘲りに近い笑み。それが圭の体の自由を奪っている張本人であることを表している。  この男のこういう表情は好きじゃない。せっかく綺麗な顔をしているのに、まるで悪役だ。  そうでなくても普段から無表情か至極つまらなそうな顔ばかりしている。眉間の皺はもはや固定されているのではと思わせる。それか不機嫌面か。  笑ってくれたら、きっと誰をも魅了するような麗人になるだろうに。ここに来てもうひと月近く経つが、そんな顔をしている姿を一度たりとて見たことがない。 「あっ……」  体がひとりでに動き、彼の腰を跨ぐ。男の中心は隆々と勃ち上がり天を向いていた。先ほど放ったばかりだということを忘れたように。  鈴口から零れる透明な粘液が竿をしとどに濡らす。今日も浮き出た脈が凶悪さを表していた。  主人の意思を無視して勝手をする圭の体が相手の陰茎を握った。そして、まだ閉じ切れていない後孔をその先端へと付ける。 「ぅぐっ!!」  ズボリと一気に根本まで腰を落とした。未だ一度目の行為の余韻が色濃く残る敏感な体が悲鳴を上げる。  本来ならばS状結腸を守るために堰き止めてくれるはずの結腸すらも何の役にも立たない。彼の体格に見合った……いや、それ以上の凶悪な男根を全て飲み込むには結腸などただの通過点にしかならない。むしろ、先ほど後背位で責められた時、既に抜かれている。 「あ、あが……っ」  結腸を超え、S状結腸の奥の壁に深々と突き刺さった巨大な性器。腹の奥全てを埋め尽くす苦しさはやはりなくならない。  本来ならば絶対にキャパシティを超えている男根を一気に咥え込んだ衝撃を吸収する間もなく、腰が勝手に浮き始めた。 「ああっ! あっ! んぁあっ!!」  体が上下して激しい注挿を開始した。ベッドに横になる男はニヤニヤと楽しそうに腰を振る圭を眺めている。 (これやだっ! やだぁっ!)  ポロポロと涙が零れる。意思を無視されて自由を奪われる非道さに感情のタガが外れた。 「もっと咥えている所を見せてみろ」  男の言葉に、膝が左右へと開く。こんな無体を強いられているにも関わらず、慣らされた敏感な場所を何度も擦り上げられていることによって圭の陰茎は勃ち上がっていた。  相手に咥えている部分がもっとよく見えるように上半身を後ろへと少し倒す。バランスを崩して後ろに倒れるのを防ぐため、両手をベッドへとついた。 「んんっ、んっ……、んはっ」  ヘコヘコと腰を動かし、その痴態を見せつける。大きく拡げた脚により、赤黒い陰茎が大きく口を広げた後孔を行き来するのが丸見えだ。  羞恥に顔を染める。もう何度もしてきたことではあるものの、回数を重ねたから全く恥ずかしくなくなるというものでもない。それくらいの羞恥心は未だに持ち合わせている。  だからこそ、居た堪れなくもなるのだが。  心が壊れてしまえば、もっと楽になるのにと考えたことが無いわけではない。  しかし、それでは「安達圭」という人間全てが失われてしまいそうで怖かった。  いつかきっと帰れると信じている元の世界に帰った時、壊れてしまった心では当たり前だった日常に戻れなくなってしまいそうだったから。 「もっと自分のイイところに当ててみろ」 「ひうんっ!!」  その言葉通り、前立腺目掛けて陰茎を擦り付ける。それまでできる限り刺激しないようにと避けていた場所にグリグリと亀頭を押し付けられ、堪らず首を振った。 「ココが悦いのだろう?」 「ああああっ!!」  腰を持たれてガツガツと前立腺ばかりを攻撃され始めた。途端にプシャリと潮を噴く。まだ本日二度目の挿入だというのに、こんな序盤で潮を噴いていたらこの後、本当にもたない。 「う、ああ、あ、―っ!」  ガクガクと体が痙攣して、脚も手も役に立たなくなっていた。上半身を支えられなくなって体が倒れてしまいそうになるのを彼が背へと腕を回して留めてくれる。 「ほら、もっと淫らに啼け」  手を彼の両肩を掴むよう導かれ、ペチリと小気味良い音を立てて尻タブをぶたれる。痛いというほど強い力ではなかったが、叩かれた場所が熱を持ち、そこからジワジワと快感が上るようだった。 「はっ……う゛あッ! っン……は、ぁっう……」  グチュグチュと腰の上下運動を自分から再開させた。彼が上半身を起こしたことで、距離の縮まった下腹は屹立した圭の性器が彼の割れた腹筋に擦られる。  それすらも気持ち良くて、唾液が零れるのを止められない。  きっと今、とんでもない間抜け面を晒していることだろう。以前、背面座位の態勢で鏡の前で犯された時、酷く自分がだらしのない顔をしていて嫌悪した。感じ入りすぎた時の白目がちな蕩け顔なんて見られたものではない。セックスが好きで好きで堪らないといった表情は、性交だけが全てだと雄弁に語っていた。  あんな顔、自分じゃない。こんな行為、人生で知るはずなんてなかったのにと翌日、自己嫌悪でいっぱいになったのは数日前のこと。 「っン……は、ぁっあ……あ、くっ、ぅあッ……あああっ……!」  中を擦る性器が前立腺を擦った後、結腸を勢いそのままに通過する強すぎる快感に頭がボーッとし始めた。  腰が悦楽を求めて性器を強く男の腹筋へと擦る。彼の六つに割れた綺麗な腹筋は既に圭の先走りでグチョグチョに濡れていた。  それだけじゃ足りない……。ピンと張った胸元も、彼の肌へと擦り付ける。上からもやんわりとした刺激が与えられ、後孔をキュウキュウと締め付けた。  後頭部を支えられ、唇を奪われる。グチュグチュと口内からも激しい水音が鳴り、聴覚をも犯される。  肩に乗せていた手を彼の背へと回した。過ぎる刺激に耐えるように爪を立てる。  ヘコヘコと動く下半身からは肌を打つ音も聞こえてくる。目の前の相手は一切何もしていないというのに。快楽を求めて圭が自ら動いている。  自分の意思ではないが。 「淫乱、お前の体は今、どうなっている?」  耳元で囁くように告げられた。低い声と息が耳の中へと入ってくる。ビクリと体が跳ねた。  後孔も唇も犯されて、耳まで犯さないでほしい。女の子の可愛い声ではないのに、興奮して堪らなくなってしまうのだから。 「まんこ、グチュグチュされて、きもち、い……」  耳殻を舐められ、背筋が伸びる。そのまま耳の孔の中すらも舌を入れられ、悶えた。 「もう、イ、きたぁ……」 「イけば良い。俺は止めてなどない」 「ひっ、ぅああっ!!」  圭の腰の上下運動だけでなく、抱き留める男も下から腰を突き上げてくるのだから堪らない。何度かビクビクと激しく痙攣した後、性器から二度目の逐情を果たした。  圭の絶頂に導かれるように男の陰茎からも勢い良く粘液が放たれる。S状結腸の奥の壁が飛沫に歓喜し、直腸を淫らに引き絞った。  ピンと伸びた両足から力が抜けた。全身をだらりと相手の体へと凭れかける。しとどに濡れた筋肉質な肌。弾力があり、上質な肉布団だ。  二度の吐精ですら、未だ中を占領する男の肉塊はまだまだ力を漲らせている。この世界の無尽蔵な体力は本当に呆れんばかりだ。  気怠い体に鞭を打ち、背筋を伸ばして上を向く。瞳を閉じれば重なる唇。二度にわたる吐精の後だからだろうか、激しさというよりもフェザーキスのような軽さで何度も啄まれる。  チュッチュッと、控え目な口づけの音が寝室に響いた。段々と眠気が襲ってくる。  これで眠れたら至極幸せなのに。  調度良い疲労感に包まれたまま泥のように眠れるなら、これ以上快適なことはない。  しかし、そんな上手くいかないことくらいは分かっている。  いや、分からせられたという方が正しい。  ムクリムクリと徐々に大きさを増す陰茎を直腸で感じていた。本当にこの淫らな陰茎は復活が早い。中から押し広げられる肉の塊に今宵もまだまだ長い夜が終わらないことを悟る。  背中を抱いていた腕を首へと回し、深い口づけをねだる。相手も興が乗ってきたのか、舌を絡ませて圭からの催促を受け入れた。 「もっと……もっと、して……。今日も、訳、分かんなくなるまで、いっぱい、俺のこと犯して……」  相手が悦ぶ言葉を敢えて言えば、ベッドへと押し倒されて注挿が再開される。  ギシギシと鳴るスプリングの音を聞きながら、圭は天蓋を見つめていた。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆  心地良い風が部屋の中へと吹いてくる。この国では一部を除いて四季はない。通年を通して快適な気温のもと暮らせるそうだ。その分、二毛作などに適していて農業にはもってこいらしい。  空は見事なまでの茜色。眼下に広がる城下町は賑やかな音に包まれている。  座学の時間を終え、夕食までの時間。特にやることもなく今日も窓から外を眺めていた。  外に出られない圭にとって、その喧噪は至極羨ましいものであった。  城の中でも上層部に位置するこの部屋からは、城下町で動く人たちは小人のように小さくしか見えない。それでも複数人で楽しそうに話していたり、自由に走り回ったりしている人たちを眺めていると、一人ぼっちのこの境遇が空しくなる。  きっと、この人たちはこの後、家に帰って家族と共に夕飯を囲むのだろう。  和気あいあいとした実家での暮らしを思い起こして気が滅入った。賑やかで気兼ねのない食卓。その日、学校であったことなどを話し、それを祖父母はいつでも楽しそうに首肯しながら聞いてくれた。母の作る手料理も大好きだったし、末っ子の圭は割と自由にさせてもらえていたと思う。  城で出てくる食事も別に不味いわけではない。むしろ相当高級な料理であろうことは想像に易い。  しかし一人きり、部屋の中で食べることほど味気ないものはない。家でも学校でも、食事の時は絶対に誰かが傍にいた。たわいもない話をして、笑い合って。昼食時は弁当のおかず交換で大いにはしゃいだ。  様々な料理が食べきれないほど出てきても、その感動を共有する人もいない。いつも一人黙々と咀嚼しては飲み込むばかりだった。  窓枠に腰をかけたまま立膝をついた。コテリと膝頭に頭を乗せる。 「……良いなぁ……俺も……外出てぇ」  もう何度呟いたか分からない。唇を尖らせながらジト目で城下を見る。ここにいれば衣食住には困らない。それどころか庶民の何倍も良い暮らしができているだろう。  でも、ここには自由がない。楽しみがない。ただ生きて、身を差し出すだけの生活。 「こんなの、死んでるのと何が違うんだろうな……」  自嘲の言葉は部屋の中へと入り込んでくる風に溶ける。  ゆっくりと瞳を閉じた。思い出すのは彼と出会った翌日のこと。  圭の生活のほぼ全てがこの小さな部屋の中で完結するようになってしまった、あの日。
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