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第5章:裏切り編 第1話

「おねが……アレク、取って……これ、取ってよぉ……」  性器を戒めるリング。苦しくてボロボロと涙を零す。屹立した性器の先端からは先走りがダラダラと零れていた。  しかし、根本で堰き止められて吐精には至れない。  そんな状態でアレクは圭の性器への口淫を続けている。後孔へと指を挿れながら。 「はっ、あっ……」  アレクの頭を撫でる。本当は髪の毛を掴んで引っ張ってでも下腹から引き剥がしたかったが、そんなことをすれば後がどうなるか分からない。  今の圭にとって、アレクはただの「恐怖」が具現化した存在だから。 「んんっ!」  性器だけでなく睾丸までも口の中に含まれる。アレクの男根と違って圭の性器は(ささ)やかだ。だから睾丸まで含んでもそこまで無理はない。  睾丸を舌の表面で舐められる。湿った軟体動物が纏わりついているようだった。チュパチュパと音がする。更に前立腺を叩く指も快感をもたらしていた。 「出させて! 出させてよぉ……」  過ぎる快感が体にはツラい。思い切り出させてくれるのなら問題などないというのに。堰き止められ、行き場を失った快感が体の奥をグルグルと巡る。  イきすぎるのもキツいが、止められるのも耐えられない。どちらかを選ばせられても答えは出ないだろう。  この数日、アレクからどちらの責め苦も体験させられた。その度に泣き喚く。意識が途切れれば前立腺へと微弱な電気のような魔法を流され、無理矢理に起こされた。  休む間も与えられず、ただただ快感に喘ぐだけの日々。  こんなはずじゃなかった。  選択を間違わなければ、今もここには優しくぬるま湯に浸かったような甘い情交があったはずなのに。  思い返しても後の祭り。ただただ後悔に咽び泣くばかりだった。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆  アレクから告白を受けてからというもの、彼は更に人が変わったように思う。  最も大きく変わったことは、アレクが「圭以外の人間の意見を聞くようになった」ということだろう。  これに関してはユルゲンだけでなく、たくさんの使用人たちからも続々と礼を言われるようになった。  別に圭が何かをした訳ではない。アレク自身が意識を変えただけなのだ。そのきっかけ作りをしたに過ぎない。努力しているのはアレクである。  そんなに礼を言われても困るといくら言っても感謝を述べられることは尽きなかった。  悪いことをしている訳ではない。圭本人としても悪い気はしなかった。  純粋に嬉しかった。アレクがきちんと圭の言葉を受け止めて、自分自身を変えようと努力しようとしてくれたことが。  『人は変えられる』。揺るぎない自信ができた。  しかし、これに関しては少し申し訳ないと思う点もあった。  多くの異なる意見を聞くというのは時間がかかり、その利点や不合理な点を洗い出して取捨選択することの必要性を迫られる。それまでワンマンで行ってきたアレクにとって、それは多大なる労力を生む作業であった。 「お帰り……あー……」  ガチャリと扉を開き、入って来た男からの言葉はない。ガックリと項垂れ、その背には疲労の色が見える。  時刻は既に日付が変わる時間に近い。そう言えば、今日も昼食や夕食を共に食べることはできなかった。  ここ最近、アレクは圭の提案を取り入れて「ランチタイムミーティング」などを導入している。これは圭の兄が自宅で話していたものだった。共に食事を摂りながら打ち合わせや雑談などを行うというもの。食事を通して歓談のきっかけにもなるし、忙しい現代人の有効な時間の使い道らしい。社会人になると好きに飯も食えなくなるのかと、聞いた時には辟易したが、アレクのような多忙な職業の者にとっては合理的だ。  圭と一緒に食事を摂る以前の頃、アレクは執務の片手間に摘まめる物を食べていたらしい。美味いか好きかはどうだって良い。何かをしながらでも手早く食べられる物が彼にとっての第一義であったとユルゲンが困りながら話していた。  だから圭と共に食事をするようになり、バランスのとれた食生活や、何より休憩をしっかりとるようになったのは喜ばれた。  上の者が休憩すらとらないような生活をしていては、下もゆっくりなどしていられない。昼食時のみでなく、夜も遅くまで仕事に没頭しているのだから堪らない。文官たちの多くは疲弊し、家庭を顧みないブラックな職場だったようだ。  それが圭と一緒に夕食を摂るようになってからガラリと変わった。夕食前に入浴するため、夕方には執務を終えて部屋へと戻る。すると、翌日までに持ち越しの作業をする時間も取れるし、何より早く家へ帰れるようになったと絶賛の声が上がっていた。  そんな改革をした覚えなど一切ないのだが、みんなが幸せになったのなら圭としても良かった。  シルヴァリアは広大な国土に比例するように人口も多い。土地によっては多様な民族がいて、統治は一筋縄ではいかない。いくらでも問題は出てくる。解決するためには時間も人足も必要だ。  それまで、アレクはその全てを一手に引き受けていた。己の考えが全てで異論は認めない。白と言ったら黒い物でも白。塗り替えてでも白にする。いや、白にさせる。それが今までのアレクのやり方だった。  それが、圭が来てから少しずつ変わり始めた。他者に少しばかりの裁量を持たせるようになったのだ。  もちろん結果は求めるし、ハードルとしては上がった部分もある。それでも、アレク自身が決断しなければならない物事が減ったため、必然的にアレクの執務量が減ったのだ。  ただし、その分しっかりと報告や経緯などを求めるようになった。それはそれで各自大変な部分はあったが、全て独断で通されていたことに自分たちの意思を反映できるようになったことはやる気へと繋がったらしい。これまで以上に国は国力を上げ、活気に満ちているとユルゲンは自分のことのように誇らしく圭に語ってくれた。  そして、このやり方にはアレクに対する負荷がかかる部分もある。信頼して任せられるかどうか、そして、任せたものに不備や悪意のある改ざんなどはないか。全てを慎重に見極めなければならない。  それは自分自身で行うよりもより一層複雑で神経をすり減らすことだ。本来であれば省力化できることが、逆に過重な負荷へと変わることもある。  更に「人を信用する」という最もコミュニケーションにおいて大切なことをこれまでしてこなかったアレクにとっては、この行為自体がアレク本人に多大なる負担をかけていた。  心配や不安を抱きながらも、それを表には一切出さない。これは心をすり減らす行為である。圭は口を出さずとも、そんなアレクを傍で見ながらハラハラしていた。  そして、もう一つの変革があった。問題が起これば、アレクに直接直訴することも可能となったのだ。  一国の皇帝の時間を消費する。これは生半可な覚悟でできるものではない。それでも幾人かが名乗りを上げ、課題解決へと乗り上げていると聞いた。  国民からの信頼もこれまで以上に厚くなったらしい。  それまでアレクは「正しく、強いが恐ろしい皇帝陛下」だった。それが今や「正しく強く、賢明な皇帝陛下」へと認識が変わりつつあるそうだ。街ではアレクのことを『希代の賢帝』と呼び、今後生まれ出でることのないであろう伝説のような扱いをする者すら出て来ているらしい。  誇らしくもあれば、少しモヤモヤすることもある。  人望が厚くなったということは、人気が出たということにも繋がる。人気者のところには人が集まり、そこには彼を恋い慕う者も出てくる。  ユルゲンは隠しているようだったが、アレクに諸外国から様々な婚姻話が届いていることを圭は知っていた。知りたくて知ったのではなく、つい耳に入ってしまったのだ。  どこぞの姫君だの、高位貴族の娘だの、その縁談の話は様々で。きっと皆一様に美しく、教養もあり、一国の主の妃として素晴らしい者たちばかりなのだろう。それぐらいは容易に想像ができる。  アレクもいい歳だ。皇帝として国を繁栄させるのであれば、子の一人や二人はなさねばならない。そんなことはアレク本人が一番知っているであろう。だから圭がわざわざ言うことではない。  アレクからの求愛を素直に受け止められないのはここにもあった。男の圭ではアレクの子供など産んでやれない。それは人間の構造上不可能であるのだから。  本来であれば、この状況を汲み取ってさっさとどこか別の場所へ移動するなりすべきなのだろう。アレクはもう大丈夫だ。一人ではない。周囲には彼が頼れる優秀な人物たちがたくさんいる。「安達圭」という存在は国の存続にとって邪魔でしかない。  しかし実際のところ圭には行くアテもないし手段もない。できることもなければ頼れる人もいない。  この世界で圭が依存できるのは、アレクただ一人だけだった。  だから圭は自分自身に免罪符を与えていた。  アレクが必要としてくれるのであれば、自分はここにいても良い。  誰が認めてくれる訳でもないけれど、そう思っていなければやっていられなかった。  薄っすらと。しかし、着実に圭の中で積もっていく不安。まるで雪のようにしんしんと深まってゆく。 「アレクは今日は甘えたな日か~?」  無言で圭に抱き付き、頭上にアレクの頭が乗っている重みを感じる。ポンポンと背を叩けば、ギュッと腕の力が強くなった。  圭は知っている。この部屋に来るまでアレクはその背筋をピンと張り、一切の弱さの片りんを周囲に見せないことを。扉が閉まった瞬間から、やっとその緊張の糸を緩めることができるのだと。 「……今日は、一緒にお風呂Hでもするかぁ?」 「もう入浴は済んだんじゃないか?」 「んー、なんか、もう一回入りたい気分になった」  クンクンとケイの髪の香りをかぎながら、アレクが怪訝な声を出した。確かに既に入浴は済ませたが、入っちゃいけないということもない。日本人は温泉好きで、旅館にいけば元を取りたい! と何度でも入浴する。家族旅行で行った熱海など、そうやって湯あたりして姉から何度も揶揄われた。  普段、風呂での性交は禁じている。浴場は声が響いて恥ずかしいし、湯の中に精液が混じるのが衛生的に許せない。それに風呂場で何度もイってしまうと、ベッドでもたなくなってしまう。だから風呂でのセックスを認めたのは随分久しぶりな気がする。 「いいのか?」  コクリと頷いた。自分から提案しておいてダメなはずがない。  許可を出すと、アレクは圭を抱き上げ大股で浴室へと向かい歩いて行った。それまでの落ち込みようなどどこ吹く風。脱衣場であっという間に夜着を脱がされ、浴室へと連れられる。 「んっ」  温かい湯気に包まれながら唇を奪われた。互いに全裸の下半身が触れる。アレクの勃起した陰茎から零れ落ちる先走りで圭の腹が濡れる。  おもむろに伸びてきたアレクの指が後孔の縁をなぞった。その手首を取り、やんわりとそこから離す。 「まだこっちはダメ。ちゃんと洗ってからしよう?」  不機嫌面でジッと見つめてくるが、もう怯えるような圭ではない。  以前であれば怖くて何でも言いなりになっていたが、今ではアレクの扱いがちょっと分かってきた。 「綺麗にしてから、いっぱい遊ぼう?」  掴んだアレクの手首を圭は自分の口元へと持ってくる。チュッとその悪戯好きな指へとキスを一つ。舌を出して見せつけるように人差し指を舐めた。一本ずつ順番に舐めねぶり、最後に人差し指から薬指まで三本をまとめて口内へと迎え入れる。あえてグチュグチュと音をさせ、口全体で愛撫した。  そこまですればアレクの方も分かっている。指先で口内を逆に撫で、圭の弱いところを重点的に責めたてる。  視線だけで見上げれば興奮したように息を荒げる美丈夫の姿。額には青筋が浮き、興奮する本能を理性で無理やり押さえつけているのが分かる。  この人を可愛く思うことが増えてきた。本当ならすぐにでも組み敷いて思う存分腰を振りたいだろうに、決してそうはしない。圭の意思を尊重し、己を律する意思の強さを見せてくれる。  腹に付いた勃起は痛くすらあるだろう。でも、まだ触ってあげない。お楽しみはこれからだ。 「今日はアレクは何もしなくても良いよ? 全部俺が洗ってあげる」  指を口から出し、ギュッと抱き締めた。フゥフゥと頭上から興奮の息遣いが聞こえてくる。  圭の中にゾクゾクと駆け抜ける何かがあった。多分、圭自身も興奮しているのだ。その証拠に、圭の陰茎も勃ち上がり主張している。  アレクをバスチェアへと座らせ、かけ湯を一杯。魔道具により、風呂はいつでも綺麗で適温に保たれている。圭が入浴した後、使用人たちが片付け、その後適温になるよう管理されるのだ。本当に魔法というものは便利である。 「どうする? 一回抜いとく? それとも洗う?」  ここまで勃起し続けているとツラいだろうと思い提案したが、アレクはフルフルと首を横に振った。抜かなくて良いらしい。別にフェラチオくらいもう慣れたのに。まだ上手いとまではいかないとは思うが。 「じゃあ、お体ゴシゴシしていきますねー」  スポンジに石鹸を大量に付け、普段よりも多く泡まみれにする。アレクと向き合うように膝の上へと座り、美しく筋肉のついた二の腕から擦り始めた。 「わー、お客さん、とっても良い体してますね~。何かスポーツでもしてたんですか~?」  以前、友人たちとノリで見たソープ嬢の会話を真似てみた。アレクは一瞬怪訝な表情をしたものの、どうやらこの悪乗りに乗っかることを決めたらしい。 「剣術を少々」 「キャー素敵ー! だからこんなに逞しいんですねー! お客さん、カッコいいしモテるでしょー?」 「否定はしない。だが、俺には心に決めた人がいる」 「わー、一途~!」  お茶らけた返しで濁すが、頬が赤くなる。その「心に決めた人物」が圭であることを分かっているし、こんな風に直接言われると気恥ずかしい。日本人は元々、奥ゆかしい人種なのだ。こんなに面と向かって言われて照れるなと言う方が難しい。 「も~、お客さんたら、そんな好きな人がいるのにこういうお店来たらダメですよ~?」 「……?」  どうやら、これがソープごっこだとは気付いていないらしい。その前に、そもそもこの世界にソープという物があるかどうかの方が微妙だった。何となく娼館らしき商売が存在していることは薄々知ってはいるものの、もしかしたらソープはないのかもしれない。確か、元々あの類の施設は日本の法を搔い潜って作られたものであり、娼館が堂々と建てられるのであれば必要のないものだ。 「お体、痒いところはないですか~?」  話の方向性を無理やり変えた。あのまま続けて、必要以上に根掘り葉掘り聞かれても厄介だからだ。何か地雷を踏み抜いて強引なセックスにもっていかれても困る。  アレクにとって圭は大切な存在ではあるが、お仕置きセックスはまた少し次元の違う話のようだ。その辺りの境界線が圭にはよく分からないが。 「快適だ」 「うふふー良かった~。私まだ新人なんでぇ、ごひいきにしてくださいね~?」 「新人か。それは良い。ウブな方が燃える」 「あっ」  唐突に乳首を摘ままれ身を捩った。 「あっ、お客さん、ダメですよぉ。まだキレイキレイしてる途中ですからぁ」 「すまない、こいつが呼んでいる気がしてな」 「勝手にそんなことしちゃ、あんっ!」  キュッと抓られて甲高い声が漏れた。慣れた体はこの程度の意地悪を快感に自動変換する。必然的に後孔の中が疼き始めた。 「だ、め……。ちゃんと、して、からぁ……」  グリグリと乳頭を押し潰されて背を反らした。今や乳首は飾りなどではなく、立派な性感帯だ。愛撫されれば感じるし、そこだけでイくことだってできる。  その全てを叩き込んだのが、目の前で意地悪な顔をしながら乳頭ばかりを狙って仕掛けてくる美丈夫である。 「あっ、あっ……」  徐々に性感が高まり、性器から零れ落ちる先走りの量が増えた。ここだけでイかされてしまったら、本当に後が困る。精液は無尽蔵ではないのだ。出す物がなくなっても空イキという強制絶頂を覚えた体はいくらでも達することができる。  しかし、それは身体への負担があまりにも大きい。翌日、体が使い物にならず、悲鳴を上げるのは圭自身なのだ。  乳頭を苛めるのに飽きたのか、今度はそこだけを避けて愛撫を続けてきた。  乳輪の形をなぞるように指先で円を描く。それを左右両方の乳首で行われるのだから質が悪い。快感の逃がし場所がなくなり、キュンキュンと後孔が寂しさを訴える。 「あっ、それ、は、まだ、ダメ……ほんとに」  胸へとアレクの唇が近づいてきた。アレクの両頬に手を添え、フルフルと首を横に振る。  口での刺激は強すぎる。敏感な乳頭を巧みな舌技で弄られたら、すぐに達してしまう自信があった。  アレクの顔を胸の代わりに顔へと近づける。圭の意図を察してか、アレクはその動きに身を任せていた。  唇を合わせる。クチュリクチュリと、ゆったりとした水音が口内から漏れだし、耳を犯した。  性急で激しい睦み合いも嫌いではないが、こうしたスローセックスも好きだ。愛されていると実感できる。  まだアレクがくれるのと同じ〝愛〟を返せはしないが、愛されること自体は嬉しい。  誰だってそうだろう。嫌われるよりは好かれたい。  スポンジを落としてしまったが、もう気になどならなかった。  泡に塗れた手でその背を撫でる。  人肌同士は気持ちが良い。『手当て』という言葉があるが、人は手を当てるだけでも相手を癒すことができると思う。  そこから「思いやり」や「いたわり」などの気持ちがきっと相手にも伝わるから。 「どうせ洗ってくれるのなら、ケイのここで洗ってほしいんだが」  ツンツンと乳頭を指先でつつかれる。プクリと膨れた先端が刺激で快感を訴えた。 「あぅ、い、良いよ? じゃ、俺にもいっぱい、泡、付けて?」  アレクが喜々として落ちたスポンジを拾い上げる。そして、圭の胸から腹までを泡まみれにした。 「あんっ! ん、っうっ」  それだけでイきそうになる敏感すぎる体が憎い。 「ほら」  アレクが両腕を広げてきた。飛び込んで来いとの意図を察し、その通りに抱き着いた。 「んっ、んんっ」  体を上下に擦り付ける。弾力のある胸板で乳首が擦られ、その刺激でもう睾丸はパンパンだ。  無意識の内に性器もアレクの綺麗に割れた腹筋を辿ってしまう。裏筋が擦れて限界の近い性器がとめどなく涙を零していた。 「あ、れく……も、後ろぉ……我慢、でき、ないよぉ……」  体を上下させながら懇願した。括約筋がクパクパと開閉しながら怒っている。他は可愛がってもらっているのに、どうして自分だけ放っておかれているのだと。 「あああっ、あっ!」  待ちに待った指が直腸へと到来した。人差し指と中指がクプリと音をさせて侵入してくる。  全ての襞が歓待した。ようやく訪れた客人へと絡みつきヒクヒクと内部を蠢かす。  そんな締め付けなどものともせずに、アレクの指は明確な目的を持って前立腺へと一気に向かう。 「ひあぅっ!!」  コリッとしこりを弾かれた。ダイレクトな刺激に背を反らす。 「ああっ! あんっ、ああっ!!」  敏感な3点への刺激に耐えられない。いや、耐える術なんて知らない。脳を直接揺さぶってくるような過激な快楽の大波にもみくちゃにされていた。 「ああああっ!!」  堪らず吐精する。泡に圭の白濁が塗れ、綺麗になったはずが汚してしまった。 「ケイ、可愛い。お前は何をしても可愛い」  後孔から指を引き抜き、アレクは強く圭を抱きしめた。吐精による疲労でハァハァと荒く息を荒げたまま、アレクのなすが儘にされていた。  互いの腹の間でアレクの剛直がビクビクと存在を訴えている。出番はまだかと。少し性器同士で触れ合わせた程度で、まだまともに触ってすらいない。 「イったばかりで悪いのだが、俺の息子も可愛がってはもらえないか?」 「手、でも……良い……?」 「いや、ケイの中で」  アレクが意図的に圭の腹へと剛直を擦り付けてきた。入りたいと熱望しながら。 「ちょっと……待って? まだ、イった……ばっか……」 「すまない。もう待てない。ケイの痴態でこいつが苛ついて機嫌が悪くてな」 「あっ」  抱き締めていた圭の体をひっくり返し、バスタブへと手をかけさせた。アレクへと尻を突き出す格好になる。 「んっ」  腰を持たれてズブズブと剛直が挿入り込んできた。まだ敏感な襞が擦られ刺激に身を捩る。 「ケイ……ケイ……」  熱にうなされたような声で何度も名を呼ばれる。その度に中がキュンキュンと締まり、アレクの進行を遮った。しかし剛直にとってはそんな抵抗は赤子の手を捻るようなもの。何の障害にもならない。 「ああっ」  剛直の切っ先が結腸にまで到着した。閉じられている最奥を熱い肉棒でズンズンと突かれる。 「ケイ、ほら、いきんで。もっと深くまで俺を受け入れて」  今日のアレクは優しいモード全開だ。アレクがやろうと思えば結腸などすぐにでもぶち抜ける。  でも、今日はそうしない。ケイとのスローセックスを楽しんでいる証である。イっても休ませてはくれないが。 「んっ……ああっ!」  言われた通り排便の要領で尻へと力を入れた。結腸が開き、その隙間へとアレクが亀頭をねじ込ませる。  ズボンッと結腸が敗北した。性器が圭の奥まで深々と突き刺さる。 「ああ、これだ。ケイのココ。本当に気持ちが良い」 「ああんっ! あっ、ああっ!!」  ツポツポと結腸付近を中心に小刻みに動かされた。  圭もアレクも結腸での刺激が最も好きだった。腹の奥を容赦なく殴られる刺激。普段、閉じているのが当たり前なのに、その場所を無理やり拓かれ蹂躙される。人体の構造を無視した蛮行。その背徳感も相まって、脳内でおびただしい量のアドレナリンが放出される。 「ああっ! ぁっ、も、もっと! もっと、してよぉ!」 「いくらでも、やってやる!」 「ひあぁぁぁっ!」  最奥を超えた最奥……S状結腸の壁を突かれ、何度も潮を噴いた。そこを苛められると耐えられないのだ。 「いやぁ! ばかに、なっひゃうぅ!!」 「いくらでもなれば良い! 俺が、ずっと面倒見てやるからな!!」 「ひぅっ、ああっ!!」  腰を持たれてガシガシと力強く注挿される。あまりの刺激に手から力が抜ける。バスタブを持っていられなくなり、ズルズルとバスタブの側面をずり落ちる。そして浴室の床へと上半身を伏せた。 「ひぎっ! んぁあっ!」  それでもアレクのピストンは止まらない。腰だけ上げた圭を発情期の獣の交尾のように犯し尽くす。  意識が朦朧としてくる。まだアレクは一度たりとて出していないのに。きっと夜は長い。ちゃんと付き合ってあげないと。頑張っているこの人を褒め称え、ご褒美をあげないと。  圭も褒められて伸びる子だと言われ、事あるごとにたくさんの大人から褒められてきた。  結果の伴わなかった体操の大会でも「よく頑張れたね」と頭を撫でられ、金色の折り紙で作られた特製の金メダルを貰った。  家の手伝いをすれば母が喜び「良い子だ」と言って褒めてくれる。  苦手な理科の勉強でも、クラスの平均点より下だったというのに「前よりも上がったな! すごいじゃないか」と言われて答案を返された。  どれも全部頑張ったことだったから、単純に嬉しかった。  頑張れば誰かがどこかで見てくれている。そして、その頑張りに対してねぎらってくれる。  褒められるために頑張る訳ではない。でも、褒められれば誰だって嬉しい。  多分アレクはそんな子供時代を過ごしてこられなかった。彼を賛美する者はいただろうが、本当はその時に言われるだけで良かったのだ。  「よく頑張ったね。偉いね」って。  きっとそうすれば、そのまままっすぐに育つことができたはずなのだ。  圭自身がそうだったから。 「んんぅ、うっ、はっ……ああっ」  浴室の床に伏したまま、怒涛の快楽に耐える。括約筋も前立腺も結腸も、全部が全部限界だ。限界なのに許してもらえない。  中の剛直の太さはアレクの吐精の近さを物語っている。つまり、今が一番太くて硬い。  圭の柔肉など突き破る勢いで抜き差しされる後孔。排泄物よりも長く太い異物で何度も擦られ、馬鹿になっているはずなのに。毎日服用している秘薬による影響で濡れそぼった直腸はいくらでも咥え込めるとばかりに大口を開けて剛直を飲み込んでいる。  性器の出し入れと共に中を潤している透明な粘液が圭の脚を伝う。涎を垂らして好物を頬張る淫らな孔。その卑猥な光景はアレクを深い深い快楽の深淵へと堕とす。  床を這っていた手首を取られ、後ろへと引かれた。上半身が持ち上がる。 「ああっ!」  ズンッズンッとその勢いのままピストンされる。縋る物のない体はただ翻弄されるばかりだった。 「んああああっ!」  大きく腰を引かれた後、ズンと貫かれた一撃で吐精する。バスタブや浴室の床を圭の白濁が舞い落ちた。  体の深い部分でも熱い飛沫を浴びる。量の多い精液は圭と比較にならない。  しばらく射精が止まるまでアレクは態勢を維持していた。圭は舌を出したまま白目を剥いてしまっている。  気持ち良すぎて何も考えられない。ビクビクと痙攣する体。根こそぎアレクの精液を搾り取ろうとでもするかのように剛直へと絡みついていた。  腕を更に後ろへと引かれる。アレクの胸板に圭の背中がくっついた。やっと支えてくれるものを見つけて圭は自分からその体へとすり寄った。  手首が解き放たれる。力任せに引かれた手首はアレクの指の形で赤くなっていた。 「ひぁっ!」  太腿の裏へと手を差し入れられ、床から脚が浮く。腰を中心にV字になるような格好で持たれると、まだ混じり合ったままの下腹は自重で更にアレクを飲み込んだ。 「んぁぁああっ!」  見悶えして快楽を外へと逃がそうと努力する。もう、2度逐情した。イったばかりの敏感な体を弄ぶのはやめてほしい。 「やめ、へ……くる、ひ……よ……ぉ……」 「これ以上はココではもうしない。ただ、ケイの中にはいさせてくれ」  その言葉通り無理なピストンなどはせず、アレクはただ圭の中に剛直を埋めたままじっとしていた。  背後からチュッチュッと何度も口づけを落とされる。額、頬、鼻の頭……。圭の顔を上向かせ、全ての部分に愛を囁きながら。 「このままでは風邪をひいてしまうな」  その格好のまま持ち上げられ浴槽へと入水する。温かい湯に包まれて緊張していた筋肉が解れていくのを感じる。フゥと息を吐けば背後からも同じ反応。ほぼ同時に行った似た行動。思わず互いに笑ってしまった。  チャプリチャプリと音をさせ、湯を掬っては零しを繰り返した。  アレクは中に入れたまま動かない。その巨大すぎる存在を無視することなどできないが、これ以上の刺激を受けなければ何とか己を保っていられる。  それなのに、悪戯好きのアレクの指が圭の乳首ばかりを狙って遊びを仕掛けてくるのだから堪らない。 「アレク」 「何だ?」 「手、お休み」  ぺチンと彼の右手首を叩く。しかし、楽しそうな声が返ってくるだけでその手は止まることを知らない。 「あ、そーゆーことするんだ。良いの? 抜いちゃうよ?」 「悪かった。それは困る」  ピタリと乳頭の先端をこねていた指が止まった。しかし、名残惜しそうにその場から動こうとしない。 「アーレク?」 「これだけは許してほしい」  首だけで背後を振り向けば罰が悪そうな顔があり、吹き出してしまった。 「可愛い俺のケイ。お前に贈り物をしたい」 「えー、いいよ。いつもよくしてもらってるし。俺、別に欲しい物ないし」  それは本当のことだった。元の世界なら新しいシューズやらいくらでも出てくるが、この世界ではそもそも何があるのかもよく知らない。だから欲しいという感情が湧かない。 「そうじゃない。俺が贈りたいんだ」 「うーん……」  何か意図がありそうな含みのある言い方をされ、思案する。基本的に物はなくて困ることはあっても、あって困るということはない。この広い城の中では、日本の狭い住宅と違って置き場に困るなんてことはないのだから。 「分かった。良いよ。じゃあ、ありがたく貰う」 「ありがとう」  すぐにバシャリと音をさせ、アレクが湯舟で立ち上がった。そのままの態勢で歩き出す。 「え、待って!? 移動するなら下ろしてよ!」 「ケイは軽いから問題ない」 「いや、そっちの問題じゃ……んぅっ!」  歩く度に奥を打たれる。その都度、背を反らし、悶えるばかりであった。  アレクは寝室に備え付けられていた鏡台へとまっすぐ突き進む。そして引き出しを開けた。取り出したのは掌サイズのジュエリーボックス。見覚えがあった。 「アレク、それ……」  ジュエリーボックスを手にしたまま、アレクは寝台の端に腰を落とす。やっと中を突く動きが止まり、一息吐けた。  敏感な場所を何度も穿たれ、圭の性器はすっかり臨戦態勢を整えてしまっているが。 「んっ」  抜かずにそのまま向かい合う態勢へと体を回される。圭の手の上にジュエリーボックスを置かれる。開くと、やはり中には金色のリングとエメラルドグリーンの鉱石が付いたピアスが入っていた。 「俺、耳、穴空いてないよ?」 「問題ない」  圭の頭上に疑問符が飛ぶ。ピアスは穴がなければ付けられない。アレクはどうするつもりなのだろうか。ただ持っているだけで良いということか。 「今から開ける」 「えっ!? 今から!?」  圭の背がピンと伸びた。耳たぶを押さえてガードする。 「いや、ピアスは校則違反だし!」 「校則? そんなものより、俺の方が断然偉い」 「ジャイアンかよ~!!」  圭のツッコミは無視してアレクがジュエリーボックスの中に入っていた針を取り出した。その鋭利な針を見て、ゾゾゾと背筋に悪寒が走る。 「え、待って? まさか、それで開ける気じゃないよね? ちゃんと専門の人がいる所で、専門の機械使って、衛生面とかもバッチリで開けてくれるんだよね!?」 「ケイ、うるさい。少し黙っていろ。男だろうが。グチグチと弱音を吐くな」 「ひゃんっ!」  圭の手が勝手に動く。後ろで勝手に一纏めになり、ガッチリと動かない。 「ちょ、アレク、おま、魔法使ったな!?」 「暴れられて手元が狂うよりは良いだろう」 「暴れるようなことするなよ~!!」  上半身も宙で固定されたように動けない。まるで体が硬直してしまったようだ。 「アレク! 同意のない行為は良くないぞ!」 「あんまりやかましいと、その口も塞ぐが」  アレクの目は本気だ。これ以上、何も言えなくなる。  アレクが摘んだ針の先端が徐々に真っ赤に染まっていく。きっと先端に炎系の魔法をかけているのだろう。 (え、マジ? 俺、今からあれで耳に穴開けられんの!?)  ダラダラと冷や汗が出てくる。さすがにこんな原始的な方法で開けるなんて思っていなかった。怖すぎる。 「アレクさん、あの、ちゃんと開ける所を冷やすとか、そういう基本的なことはやっていただけるのでしょうか……?」 「当たり前だろう。それくらいの常識はある。ケイは俺のことを一体何だと思っている」 (俺様アレク様暴君サマですけどぉ!?)  ガタガタと震えていると、アレクの指が圭の右乳首の先端を摘まんだ。摘ままれた部分が冷たくなる。 「え?」  感覚の鈍くなった乳頭を引っ張られる。伸びた部分に針が迫って来た。 「まさか、まさかのまさか?」  圭の顔面は蒼白になっていた。 「ぎゃあああああ!!!!!」  一気に針を突き刺される。穴の開く痛みに襲われた。  すぐに抜かれ、もう一方の乳首へと手が伸びる。 「やめてやめてやめてやめて……ああああああ!!」  冷やされたと思った次の瞬間、細い悪魔が貫通する。  熱いというよりも痛さが勝り、熱をあまり感じなかった。 「さすがによく締まるな」  未だに繋がっている下肢のことを言っているのだろう。しかし、圭にとってはそれどころではない。ジクジクと胸の先端が痛みを訴える。 「よく頑張った。……ああ、何か温かいと思ったら、漏らしてしまったか。良いぞ? こんなことで俺は怒らないから」  よしよしと頭を撫でられる。やめろと手を振り払いたかったが、魔法で一纏めにされている腕はビクリともしない。 「すまない。血が出てしまったか。でも、この程度ならすぐに治してやれるから気にするな」  流血する穴をペロリと舐め、アレクは滴る血を拭き取った。そしてベッドの上へと落ちていたジュエリーボックスの中からピアスを取り出す。  今しがた開けたばかりの穴へとリングを通していく。通したリングは不思議なことに、端同士をくっつけると切れ目のない輪へと変わった。 「これは俺の許可がなければ取れない。無理に引っ張ればケイの可愛い乳首が切れて無残な姿になるから、くれぐれも無理はするなよ?」  アレクの指先が白く光り、血を流していた乳頭の傷がなくなる。つまり、ピアスを通したまま元に戻ってしまったのだ。 「ああ、可愛いケイ。ずっと夢だった。俺の色を身に着けて、淫らに喘ぐケイを見るのを」 「ひっ!」  ズンと下から強く突き上げられた。S状結腸が押され快楽に身を捩る。 「こんなに締め付けて……強請(ねだ)っているのか? いくらでもくれてやろう。今日は特別な日だ。いくらでもイかせてやる。それこそ、朝までだって、ずっと」 「やあああ!!」  ベッドの中央まで連れて移動して、正常位で激しく突き始めた。その動きに連動するように胸元のピアスが揺れる。 「好きだ……愛してる。俺のケイ……」  うわ言のように繰り返しながらアレクは恍惚とした表情で腰を振り続ける。  その日、本当にアレクは空が白み始めるまで圭の体を離さなかった。
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