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第6章:別れ編 第9話

 アレクの唇が圭の首筋を這いまわる。時にキスを落とし、時に舌で舐められながら。そして時折訪れるチクリとした感覚。痛覚の後、唇を離したアレクはその場所を見て満足そうに微笑んだ。 「シャワー、浴びないと……」 「いらない。ケイの匂いが薄れる」 「でも、俺、走ったりしたから汗くさいだろうし」 「うるさい」 「んっ」  不機嫌面で強引にキスをされる。この押しの強さが懐かしくて、圭も目を閉じて大人しく口づけを受け入れた。  水音をさせながら濃厚なキスを交わす。口の中までアレクでいっぱいになり、胸の内の充足感に歓喜を覚えた。  口づけの最中にアレクの手は器用に圭のシャツのボタンを外していった。胸元が露わになり、解放感にフルリと薄い胸を上下させる。 「良かった。俺の証、きちんとついていて」 「んっ」  胸元のピアスを弄られ、刺激に声が漏れてしまう。アレクのイタズラ好きな指はそのまま乳首を愛撫する。そして、もう片方の乳首を吸われ、その快感に圭は身を震わせた。 「んんっ、んっ……」  腰をモゾリと蠢かす。胸への刺激はダイレクトに下腹へと直結する。股間が早く出してくれと疼いていた。  しかし、アレクは下腹へは何もせず、しきりに胸だけを愛撫し続ける。乳頭を食まれ、尖らせた舌先が何度も先端を上下に舐めた。 「……っン……は、ぁっんっ」  決して我慢できない程の強すぎる刺激という訳ではない。しかし確実に性感を高ぶらせ、性器の屹立へと促す動きに頭の中が白くなる。 「やっ、もぉ……下……触って……よ、ぉ……」  乳首を吸われ、もう片方も指で引っ張られて堪らなくなった。腰が主張するように勝手に揺れる。  下腹が苦しく、圭はベルトを寛げた。下着ごとズボンを脱ぎ捨てる。既に勃起している屹立は透明な液を鈴口から滴らせていた。 「アレクぅ……」  自ら手淫を施し屹立を慰める。先走りが圭の手を濡らした。  そんな圭の姿を食い入るように見つめていたアレクが自慰をする圭の手を掴んだ。そして口元へと持っていくと、粘液に塗れた圭の掌をベロリと舐め上げた。 「何人たりとも、俺の許可なくケイのモノに触るのを許さない。……例え、それがケイ自身でもな」  野性味の溢れる視線で見つめられ、ゾクゾクと背筋を快感が走り抜けた。  すっかり身も心もアレクに囚われてしまっている圭にとって、こんな言葉はご褒美でしかない。 「んっ、じゃあ、アレクが触って」  脚を大きく左右に広げた。屹立は期待に震え、その下にある蕾すらもアレクの眼前に晒されている。 「ケイの好きにしてやろう」 「んんっ!」  アレクの整った顔が圭の性器へと近づいていく。大きく口を開くと、天を仰ぐ勃起を口内へと含んだ。 「んんー……ハアッ、んっ……」  温かい口内に包まれる。唾液で濡れた肉筒が気持ち良すぎる。快感を反らすためにシーツを強く握り締めた。  アレクの舌が丹念に圭の性器を舐めしゃぶる。裏筋を尖らせた舌先で何度も小刻みに愛撫されたかと思うと、次の瞬間にはカリ首をグルリと舌で舐め回される。そして鈴口へと舌を入れられ、過ぎる刺激に涙が浮かんだ。 「――ひっ、! ……う゛あッ! んっぁ……」  腰がガクガクと震える。夜な夜な慰めていた時には得られなかった悦楽に包まれていた。  一人寂しく自慰に耽っていた時はあれほど物足りなかったというのに。今は腰から下が溶けてなくなってしまいそうなくらいに気持ちが良すぎる。 「だ、め……もう、出ちゃう……」 「まだイくな。先は長いぞ」 「じゃ……止め、て……」 「分かった」  アレクが口淫をしながら圭の陰茎の根本を指で握り締める。突如としてもたらされた堰き止められる苦しさに嫌々と首を横に振った。 「ち、がうぅ! そ、じゃなく……てぇ……」 「ダメだ。もっとケイを味わわせろ」 「ひっ、んっ!」  アレクの口内が注挿を始めた。頬を窄ませ性器へと吸い付いてくる。キツくぬかるんだ口内から施される快感はそれまでの口淫以上に圭を悦楽の淵へと追い詰める。 「あ、……っぅあっ、―っ!」  体がビクビクと跳ねた。堰き止められている精液は爆ぜる場所を失い、圭の体内で巡る。射精していないにも関わらず、体が感じる過度な刺激。久しぶりに吐精を伴わない絶頂へと導かれる。射精した時も体への疲労は大きいが、この空イキと呼ばれる現象の厄介なところは精を吐き出さないことによって何度でも絶頂感に襲われることにもある。  実際にアレクは空イキ後の敏感な性器に口淫をし続けているのだ。 「はっ……あ……あ、くっ、ハアッ、んっ!!」  何度も訪れるオルガズム。その度に背を反らして快感の波に攫われる。そして何度目かの空イキの後、腰の奥から湧き出てきた別の感覚に圭は顔面を蒼白にさせた。 「やっ、らめ、アレクっ! なん、か……ち、がうのれちゃ……」  彼の髪を掴んで引き剥がそうと引っ張るも、幾度にも及ぶ絶頂で力の抜けた体では何の抵抗にもならなかった。  そうこうしている間中にも、どんどんと体の奥から別の感覚が湧き上がる。 「ひっんっ! ぅぅ、ああっ、あっ!!」  ブシャッと勢い良くアレクの口内へと飛沫が爆ぜた。  以前からあまりにも潮を噴くため、心配になってユルゲンに聞いた時には小水とは別物だから安心して良いとは言われた。それでも性器から放たれた液体で好きな相手を汚してしまうというのは嬉しいことではない。  それなのに、アレクは喉をゴクリと鳴らして飲み下してしまう。 「もう、やらぁっ! ちんぽらけなの、やぁっ!」 「じゃあ、ケイはどうしてほしい?」 「まんこもしてよぉ! アレクのでズポズポされたいぃ!」 「分かった。じゃあ、コチラもきちんと可愛がってやろう」 「ひぃっ! あっ!」  アレクの指が2本、一気に後孔へと突き立てられた。突然の侵入者に直腸が驚き、締め付ける。しかし、それが愛しい人の体の一部であるとすぐに認識すると淫らにうねりながら指へと絡みついた。 「ンぁっ、……ん、う……っ……」  指を注挿されて久しぶりの感覚に肉筒が疼いた。手入れの行き届いた長く綺麗な指からもたらされる刺激。そして、愛おしい彼の体を受け入れているという歓喜に全身が湧く。 「う、ああ、あ、―っ!」  前立腺を見つけた指先がトントンとしこりを叩いた。中から射精を煽る動きに性器が反応する。そしてアレクは前立腺を愛撫したまま今度は圭の睾丸を揉みしだき始めた。 「ンぁっ、――っく……ぅ、あ……んっぁ……」  敏感な2点を同時に責められ、あんなに何度も空イキを繰り返したというのに再度絶頂へと追い詰められる。  ヒクヒクと括約筋が震え、直腸はキツく指を締め付けた。  しかし、あと少しでイけると期待した時に指が叩くのをやめてしまう。そして睾丸を弄っていた手も離され、中途半端に高ぶらせられるだけに終わる。 「や、らぁ! イかせて……イかせてよぉ!!」  ボロボロと涙が零れる。括約筋が指を食い締め、もっとしてくれとねだるが、アレクの指は圭の願いを聞き入れてはくれない。  圭に覆いかぶさるアレクは恍惚とした表情で圭の頬を伝う涙を舌で舐め取った。 「ああ、ケイ……あれほど夢見たケイだ……」  時折、指先が前立腺を掠める。それだけで体がビクリと跳ねた。  しかし、そんな些細な刺激では絶頂を迎えられない。もっと確定的な刺激が欲しい。 「あれくぅ……もう、挿れて……よ……」 「挿れてるじゃないか」 「ひぅんっ!」  奥へと向けて指を抜き差しされる。直腸が擦られて気持ち良いが、もっと深い場所での悦楽を知ってしまっている肉筒はヒクヒクと剛直を締め付けて期待を表した。 「ちがっ、……もっと、おく……ぅ」 「ん? どこだ?」 「ここ、ぉ……」  ヘソの上辺りに手を置き、挿入をねだる。結腸を突き破り、S状結腸の壁を性器で突かれる快感に酔いしれたい。 「アレクの、で……奥ぅ……ドンドンして……っ! めちゃくちゃに……いじめ、られたい……ッ!!」 「好きなだけくれてやろう!」 「あっ……は、ァァッ!」  一気に指が引き抜かれ、剛直が突き刺された。久しぶりに貫かれる結腸。腹の奥が快感にわなないた。 「あ……あ、くっ、ハアッ、んっ……ぅ゛っ……――!!」  注挿は始めから激しいものだった。ズボズボと奥まで挿し込まれる。結腸をカリ嵩の性器で何度も行き来されるのも、抜かれる直前まで引かれた後、前立腺を強く擦りながら直腸を穿たれるのも。どちらも甲乙つけ難い程に気持ちが良い。  そのどちらも空しい一人遊びでは得られなかった快楽だったから。 「ふ、っ、……う゛あッ! んっぁ……」  腹の奥で得られる快楽に夢中になる。重く衝突されると言って良い程の衝撃をくらいながら、その剛直でしか体感できない刺激が愛おしい。  ずっと、ずっと待ち望んでいたのだと思う。元の世界に戻ってから深層心理の奥底で欲してやまなかったこの存在が。 「あれ、く……ごめ、も、……イっきた……」 「早いな」 「もた、な……」  覆い被さっている相手の首へと腕を回し、脚をアレクの腰へと絡めた。ギュッと脚に力を入れる。  胸の内が充足感に満たされる。  多分、ずっとこうしたかった。心身共に全てを預けて縋れる存在。  逞しい背中に爪を立てる。筋肉の屈強な弾力を感じながら、自分の痕を付けるのが心地良い。  この強靭で見目の良い、愛おしい人が自分の物だと主張できるような気がした。  誰に見せる訳でもないというのに。 「あ、……っぅあっ、ハアッ、んっ……ぅ゛っ……――!!」  ドンドンと集中的にS状結腸の壁を叩かれ、射精感に襲われる。柔な壁は陥落寸前だ。 「あれく……あい、してる……」 「俺もだ、ケイ」  ギュッと抱き締められた。密着した肌は互いに汗ばんでいる。ドクドクと伝わる早鐘を打つ鼓動。どれもが嬉しくて、心が満たされる喜びに涙が流れた。  激しい注挿を受けながら、どちらからともなく唇を重ね合う。流れた涙で少ししょっぱい。当然のように舌が入り込み、互いに絡ませ合う。その交わり合いすら強くて窒息してしまいそうだ。  強引に求められる、その強さが堪らない。相手がアレクだというだけで腰の奥は疼き、体は無意識の内に彼を求める。  中を穿たれる圧迫感。受け入れているのだという自覚を覚えさせられる。その満たされる感覚に酔いしれた。 「んっ……ン……んんんっ!」  ドチュドチュと激しい水音が鳴る中、ひと際浅くまで引き抜かれたかと思うと、一気に奥まで突かれ衝撃で射精する。S状結腸の中に満ちる熱い飛沫。腹の中がアレクの粘液で満ちる感覚に溺れてしまいそうだ。  ガクガクと腰が震え、射精の快感に酔う。圭の放った精液は互いの腹を濡らした。  激しい行為により、汗に塗れた肌同士が触れている。これが素知らぬ他人だったら気持ち悪いだけだが、愛しい人の体液だと思うとそれすら嬉しくなる。  口づけを解き、肩口へと顔を埋める。激しく動いたために息は上がり、肩は上下していた。筋肉に覆われた肩にカプリと軽く嚙みつく。そして舌の表面で肌を舐めた。涙とはまた一味違う塩味を感じる。それがアレクの体液だと実感し、性器を咥えたままの後孔がキュンとわななく。 「そんな締めて催促か?」 「ん……」  否定はしない。この程度なんかじゃ物足りないから。  アレクとの性交に慣れきってしまった体は、1度や2度の逐情なんかで満足なんてできやしない。それに今回、アレクにしては早すぎた。彼は元々遅漏気味なのだ。この程度の注挿で射精するなんて相当溜まっていたに違いない。  そう言えば夢の中でアレクを見ていた時にも、彼が誰かと褥を共にする姿を見ることは一度としてなかった。アレクが求めれば、どんな美男美女だろうとより取り見取りだろうに。  ただ、そんなところを見てしまったら、きっと今頃アレクのことを信じられなかった気がする。圭と共に過ごしていた時、アレクは一度として圭以外を抱くことがなかったから。毎夜求められていたことに、今では喜びすら感じる。  こんなに美しく、何でも持っている人が自分だけに操を立ててくれているというのが嬉しくて堪らない。そう思っただけでキュウキュウと括約筋が淫らに強請る。 「……もっとしてって言ったら、……してくれる?」 「この程度で終わるとでも思うか?」  フルフルと首を横に振った。圭の知るアレクという男は、嫌だと言っても絶対にやめない傲慢さを持っている。最後の方は訳が分からなくなって性も根も尽き果てて意識を失うまで求められる。もしかしたら、気をやった後もされているかもしれないが。 「アレクが足りない。できなかった時の分まで、いっぱい頂戴」 「言われなくとも、離すはずがないだろう。これより三日三晩は寝所から出られると思うなよ?」 「え、いや、さすがにそれはちょっと……んんっ!」  アレクが腰の動きを再開させる。まだ敏感な中を性器が蠢き、圭は腰をくねらせた。 「ちょ、はやっ……まだ、イった……ばっかし……」 「ケイが足りない」 「あ、……っぅあっ、ハアッ、んっ……ぅ゛っ……――!!」  いつの間にかアレクの剛直は力を取り戻していた。圭の未だ力の抜けた性器がアレクの腹筋に擦られる。それだけでも気持ちが良くて感じすぎる体は涙腺を馬鹿にさせる。 「ぐっ、……う゛あッ! ん、う……っ……あ、……っ」  敏感すぎる中をかき回される刺激の強さに翻弄されていた。しかし、それすらも良い。頭の中をグチャグチャにされ、快感以外の何も分からなくなる。  プシャッと潮を噴いた。互いの腹に温かい液体がかかる。寝台を汚してしまうなんて考えは既に脳内から消え失せていた。気持ち良い。ただ、それだけ。 「ぅあっ、ハアッ、んっ……ぅ゛っ……――!!」  悦楽の海に沈められた状態で揺蕩う。擦られ続けている直腸が熱い。その熱すらもアレクから与えられていると思うと愛おしい。 「あれく……あれく……っ!」  広い背中を掻き抱いた。何度も名を呼ぶ。その度に呼応するようにアレクの性器が力強く最奥を穿った。連動して圭の体が甘イキを繰り返した。性器の先端からはトプトプと微量の精液が零れ落ちる。  ずっと絶頂が続いているようで少し苦しい。しかし、それを上回る喜びに浸されていた。  アレクとの性交は激しいものの、温かいもので包まれているように心地良い。圭の心を歓喜で満たしてくれる。  この人しかいない。むしろ、この人しか欲しくない。  体の奥深くまで暴くことを許すのは、どの世界を見ても、たった一人だけ。 「ん、う……っ……あ、……っぅあっ、ハアッ」  相手を抱き締められるこの体位が好きだ。密着できて離れる場所がない。後孔は相手の大事な場所を咥え込み、離さないとでも言うように食い締める。  もう一度キスを強請った。与えられる唇に陶酔する。上も下もアレクでいっぱいだった。  なんて幸せなんだろうか。大いなる喜びに歓喜の涙を流す。  ああ、好きだ。この人のことが。  もう離しちゃいけない。ずっと、永久に共にいたいと誓えるのはこの人だけだから。 「あれく、あいしてる……あいしてるよ……」 「ケイ……ッ!」  再び腕の中に抱き留められ、奥で射精された。2度目だというのに、どうしてこんなに多いのか不思議なくらいの量を吐き出される。  吐精の勢いにすらまたイった。圭の方は弱々しく精を放った程度。甘イキし続けて精液を垂れ流していた睾丸はあまり多くの精液を残していなかった。  それでも、まだ足りないと最奥が熱望する。吐き出す物がなくなっても、もっと欲しい。 「あれく、まだ、まだだよ」  腰へと絡ませた膝で相手を強く挟み、足先で腰を撫でた。アレクの後頭部の髪に手を差し込み、ゆっくりと上下させる。湿った感触と共に、彼の額から汗がしたたる。雫は圭の唇付近に落ちた。舌を出し、あえて舐め取った。それを見たアレクが獣のような目をランランと輝かせる。 「わっ!」  唐突に性器を引き抜かれ、体をうつ伏せへと返された。腰だけ持ち上げられる。 「んっ!!」  剛直が奥へと一気に直腸を駆け抜けた。挿入される角度が変わる。再び始まった激しい注挿。ズパンズパンと肌を打つ音が正常位よりも大きく響く。 「はっ……う゛あッ!」  腰を持たれ、アレクの思うがままに翻弄されていた。後背位での注挿は正常位よりも奥まで穿たれる。最奥を更に強く打たれ、体の奥にドシンドシンと衝撃に近い程の刺激が何度も繰り返される。 「あ、……っぅあっ、ぅあッ……あああっ……」  ひっきりなしに嬌声が漏れた。口の端からは唾液が零れ、シーツに水玉模様を描く。度重なる激情の波に翻弄され続け、上半身の力が抜ける。シーツを握り締めながら快楽に耐えた。  後背位になったことで前立腺を穿ちやすくなったためか、アレクが意図的にしこりばかりを狙ってくる。カリ嵩の性器へと引っかけるように擦られて悶える。 「ひぅっ! あ、……っぅあっ、―っ!」  縋れるものがなく、シーツへと頬を擦り付けた。過ぎる快感に頭が溶けてしまう。  前立腺ばかりを刺激されていたかと思えば、唐突に最奥へと一撃がやって来る。結腸が擦られ、最奥の柔肉が剛直の先端に押し潰される。この暴力的とも言える刺激に脳内は男根のことしか考えられなかった。 「いい、よぉ! あれくの、ちんぽぉ! らい、しゅきぃ!」 「ケイのココも最高だ」 「ひぃんっ!!」  今度はゴンゴンと奥を突かれた。全身へとさざ波のように刺激が波及する。もう噴き出す潮すら残っていない。射精を伴わない絶頂を繰り返す。白目を剥いて痙攣ばかりしている体。それでも、アレクは容赦しない。 「ひっ! ふぁッ……」  体の震えが大きくなってくる。もう意識を留めておくので必死だった。それすらもそろそろ限界に近い。 「もう手放さないからな。覚悟しておけ。ケイは俺のものだ」 「おれぇ、あれくの……だか、らぁ!」  なけなしの体力の中、緩慢な動作で首だけ後ろを向いた。圭の腰へと指を立て、獣の交尾のように腰を振りたくっている。  こんなに美しい人のこんなあられもない姿を見た人など他にいるだろうか。溶けた頭で考える。  多分、いないだろう。この人がこんなに必死になって求めてくるのは自分だけ。そう思うだけで口角が緩んだ。 「あれくも、おれ、の……?」 「当たり前だろ!」 「あひっ! う、うあッ!」  ピストンが力を増した。もう、直腸の全てが快感を浴びすぎて限界を訴え始めている。後背位で打たれながら、アレクの上半身が圭の背にピタリと重なった。近くに来てくれた美しい顔に口づける。  腰を持っていた手が離れ、後ろから抱き締められた。それでも尻だけは器用に注挿を繰り返している。  舌を絡めるキスをしながら、時折離しては「好き」と言い続ける。その度にアレクが深く舌を挿れ、抱き締める力を強くした。  幸せの絶頂の中、空イキをし続けた意識がプツリと切れた。暗闇に堕ちる意識の中、アレクの手首を掴む。  もう、手放しませんように。  起きても、ここに戻って来られますようにと願いを込めて。
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