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第6章:別れ編 第10話
顔中で感じるくすぐったさ。こそばゆくなり、フフッと笑う。
まどろみの中で揺蕩っていた意識が浮上する。重い瞼を持ち上げた。美しい顔で視界が埋まる。
その顔は何度も圭の顔に触れるだけの軽いキスをしていた。笑いながら彼の頬に手を添える。
「くすぐったい」
「起きたか」
チュッと最後に額に唇を当てると、唇同士を重ねてきた。起き抜けの濃厚なキスは寝ぼけた頭を更に蕩けさせる。
やっと離してもらえた時には軽く息が上がっていた。
「アレク、やりすぎ」
「どれだけ離れていたと思っている。全然足りないくらいだ」
「あっ」
アレクの指が一本、圭の後孔へと挿し込まれた。昨夜、剛直を飲み込み続けた場所は難なく侵入者を受け入れる。
「だ、め……あれく……いっぱい……した、じゃん」
「あの程度でいっぱい? 冗談だろう? ケイはすぐに落ちたし、俺のは物足りないとずっと言っているぞ」
「あっ」
指で後孔をかき回されながら性器を押し付けられた。いつでも臨戦態勢を整えている屹立が圭の性器と擦られる。出す物などない圭の性器はフニャリと硬度を失ったままだった。
「むり……おねが、ちょっと、休ませて……」
「……仕方ない」
アレクの性器が離れていく。ホッとしつつも、中に挿入されたままの指は引き抜かれる気配がない。ただ、動かずじっとしてくれているため、まだ刺激としては緩かった。
「アレク、ちょっとだけ聞いてもらっても良い?」
「ケイの言うことなら何でも」
緩く首肯される。アレクの穏やかな顔を見て、今なら何でもきちんと聞いてもらえそうな気がした。
「俺、ずっとアレクに無理矢理されてばっかで、嫌になってたんだ。そしたら、元の世界に戻れた。最初は嬉しかったんだけど、実は寝る度にアレクの事が夢に出てきたんだ。で、見続けるごとに、どんどん心がしんどくなって」
「ケイも……なのか?」
「え?」
大きく見開かれたアレクの瞳に凝視される。思ってもいなかった言葉に圭自身も同様に目をまん丸にした。
「ケイがいなくなってからずっと、俺の夢の中にもケイが見えた」
「アレクも?」
鷹揚に頷かれる。その事実にも驚愕した。
「最初はケイがいなくなったことで、俺の頭が作り出した幻覚かと思っていた。だが、ケイが話していた見たことのない乗り物や、家族だろう者たちを見て想像力で補えるものでないと分かった。だから、きっと、これはケイが今いる場所なのだろうと結論づけた」
後孔から指を引き抜かれ、ギュッと両手で強く抱き締められた。苦しいくらい、強く。
「あれく……」
「ケイは……あまり幸せそうじゃなかった。俺から解放されて元の世界に戻れば、ケイは幸せになれると思ってたのに。むしろ、なぜそこに俺がいないのか。悔しくて堪らなかった」
耳元で懺悔のように零される言葉たち。胸が強く引き締められる。圭もアレクの背へと腕を回し、強く抱き締めた。
「俺も……何でアレクが苦しんでるのに、俺が傍にいないのか、ずっと悔やんでた。アレクがどんどん前みたいになっちゃって、周りの人も離れちゃって。すっごく苦しくて。でも、離れたいって望んだのは俺で。何もできないのが嫌でしょうがなかった」
ずっと胸の内に抱え続けてきた葛藤。誰にも打ち明けられず、悶々としていたことをやっと吐き出せた。胸のつかえが取れたような気がして楽になる。
「ねえ、アレク、どうしてまた人を殺したりしたの?」
それはずっと頭の片隅で考え続けていたことだった。アレクが訳もなく人を殺めるはずがない。そう信じていたかった。
「あれは……言われたから……」
「何を?」
「ケイを、忘れろと。代わりなどいくらでもいると。そう言われて、カッとなった」
アレクが圭の肩へと額を擦り付けた。その言葉を聞き、また胸が締め付けられる。結局は圭の行動によって起きたことだと思うと、自責の念に駆られる。
「俺にとって、ケイに代わる者などいるはずもない。これまでも、これからも。ずっとケイだけだ。それを侮辱するようなことを言われて、許すことなんて到底できなかった。……今思えば、俺の短絡的な行動だったと恥じている。ケイがいないと、俺は自分を律することすらできない」
「違うよ。俺がアレクの傍を離れたのが悪いんだ。アレクは悪くない。俺のせいだ。そんなに自分を責めないでよ」
好きな相手を追い詰めたくはない。好きな人には、ずっと幸せであってほしい。ポンポンと背中を軽く叩きながら言い聞かせた。アレクは圭の肩口に顔を埋めたまま首を横に振った。
「違う。俺の未熟さが招いたことだ。嫌がるケイに無理強いをしたのも。……失いたくなかった。失ってしまえば、何もかもが壊れる気がして怖かった。その結果がケイの見た通りだ。愚かだろう? せめて笑い飛ばしてくれ」
アレクが圭を抱きしめる手に力を籠める。その手は小さく震えていた。
こんな告白をされて笑える人間などどこにいようか。愛おしくて堪らない。ずっと胸が疼いていた。
好きが溢れて止まらない。全身でアレクを好きだと叫びたかった。
「じゃあさ、どっちも悪いことにしよう? それでおしまい。それにアレクと離れてみて、俺、ちゃんとアレクのことが好きだって気付けた。多分ずっとここにいたままだったら気づけなかったと思うんだ。だから、これは必要なことだったって思おう? 俺は今、アレクのことがすっごく大切だし、本当に心の底から大好きだって思ってる。それに、こうしていられる今がすっごく幸せだよ?」
アレクの肩口に圭も顔を押し当てた。彼の纏う爽やかな香りに汗の匂いが混じっている。あのまま互いに寝落ちてしまったのだろうか。フフッと笑みが零れた。
「ケイ、これから先、死ぬまで俺と一緒にいてくれるか?」
「当たり前じゃん。だって、どうせ俺がやだって言ってもアレクが許さないだろ?」
「当然だ」
「じゃあ、二人でずっと幸せになれるようにしなくちゃだね」
アレクが肩から離れたのに気付き、圭も顔を上げる。蕩けたように幸せそうな笑みを浮かべる相手を見て、自然と圭の口角も上がった。
「愛してる、ケイ」
「俺も。愛してるよ、アレク」
唇同士が自然と重なった。熱い舌が入り込んでくる。口内から漏れるクチュクチュという水音が部屋に響いた。
しばらくの間、口づけを楽しむ。息苦しくなってきた頃になって、ようやく離された。唇は互いの唾液に塗れて濡れそぼっている。銀糸が唇を繋ぎ、ある程度の距離まで来たところでプツリと切れた。
ほんの数か月前まではこんな卑猥なキスなんて知らなかったのに。それどころか、キスすらしたことなんてなく、夢に抱く程度だった。
それが今や当たり前のように口づけを交わし、深く交わる仲になる人ができるなんて。本当に人生は分からない。
しかし、だからこそ面白いのかもしれない。
目の前の愛しい人と一緒なら、どんなことでも乗り切っていけると思えるから。
アレクの美しい顔にうっとりしながら頬を緩めていた時だった。
「それはそれとして、ケイとまた会ったら確認しなければならないことがあったな」
「んー、何?」
「あの男は何者だ?」
「え?」
ギクリと体が強張った。綺麗に笑うアレクのこめかみに青筋が浮いている。ガシリと肩を掴まれた。その手にも溢れんばかりの怒りからか、甲に筋が浮いている。それに、ワナワナと震えているのは気のせいではないだろう。
「あの~、アレクさん? 俺、肩、痛いな~なんて……」
「答えろ」
「あだだだだだ」
ギリギリと肩に爪を立てられ、思わず悲鳴が漏れた。さすがに圭の声を聞いて力を弱めてくれたものの、離してくれそうな素振りはない。
(やっべ~! 超怒ってんじゃん!)
ダラダラと冷や汗を流す。圭同様に離れていた時の互いの様子を見えていたというのなら、どれもこれも見えていたのだろう。圭と同じであったというのなら、日々の全てを見えていたという訳ではないだろうが、あれだけ淳一に時間を割いたのだから、ごまかしようがない。
その前に、もう彼との間に隠し事や嘘はなくそうと誓ったばかりだ。
「ええっとぉ~、あいつは、……ん~、何て言うか、俺も不可抗力としか言えないし、脅されてあんなことになってたって言うか~」
「何度殺してやろうと思ったことか。……そうか、脅迫されてか。どう殺しても殺したりないな。ありとあらゆる拷問にかけて生まれてきたことを後悔させた後、できうる限り長く苦しめてから殺して、親族に至るまで同じ目に遭わせてやらねば……」
「うお~! ストップー!! ってか、肩! いってーよ!!」
鬼神の表情をしたアレクに掴まれた肩に力を籠められ、涙目になった。あまりの痛さに肩から腕を引き剥がす。掴まれていた場所は手形の形で真っ赤になっていた。
「大丈夫! もうあいつには俺がちゃんと鉄槌を喰らわせておいたから!」
思い切り蹴り上げてやった股間はさぞや痛かっただろう。あんなのを喰らえば暫くは動けないはずだ。
「それに俺だってやられっぱなしって訳じゃねーし。やられたらやり返すからな! ってビシーッと言ってやったし、多分大丈夫だと思う!」
親指を立ててドヤ顔を作る。実際、暴露されて困るのは圧倒的に淳一の方だ。具体的な方法などは全然考えつかないが、それこそ姉や兄に相談すれば良いだろう。特に頭の良い姉はこういった類のことを考えつく天才だ。きっと何か方法を見つけてくれるに違いない。
その前に、こうしてまたアレクの元に戻って来たのだから、そんな必要もないのだが。
「……そうか。ケイがそう言うのなら今は不問にするとしよう。だが、もしも会う機会があったなら、その時は必ずや八つ裂きにしてやる」
ギリギリと奥歯を噛みしめ、般若の形相をするアレクの頬を両手で包み込んだ。
「わ~! アレク落ち着けって! カッコいい顔が台無しだぜ?」
チュッと鼻先にキスをした。続いて頬、そして瞼の上と、至る所に唇を触れさせる。
憤怒に塗れていた顔から怒りの表情が薄れていく。そのことにホッとしながら逞しい体躯をギュッと抱き締めた。
「あんな奴のこと忘れたい。せっかくアレクといるのに、他の奴の話なんてしたくない」
「ケイ……」
抱き締め返され、彼の香りに包まれる。ホワッと心が温かくなった。
淳一の話をされてモヤモヤしていた胸があっという間にアレクに染められる。好きと自覚してからの胸の内を占めるアレクの存在感は圧倒的だ。スリッと彼の肌に頬を擦り付ける。滑らかな肌の感触が心地良い。うっとりと幸福感に浸かっていた時だった。
「ただ、あともう一つだけ確認しなければな」
「えー? まだあんの~? もうイチャイチャしようよ」
「いや、これだけは聞いておかないと絶対にこれから先も気になって仕方ない」
「分かったよ。じゃあ、それだけね?」
溜息を吐きながら抱擁を解いた。真剣な表情のアレクと向き合う。美形の真顔は少し怖い。
「あの女は何者だ?」
「女? ねーちゃんのこと?」
「違う。ケイとキスをしていた奴のことだ」
喉がヒュッと鳴る。背筋がピンと伸びた。再び滝のように冷や汗が流れる。
「えーっと、ナンノコトデショウカ?」
「公衆の面前でしていたな。あの女とは、そういう仲なのか?」
「違う違う! 断じてちがーう!! あれは王様ゲームっていう遊びの中で命令だったからしただけで……」
「ほう? 王様ゲームか。なら、皇帝である俺の命令も当然聞いてもらえるよな?」
アレクが目を細めて意地悪く笑った。怒っている。それも、とてつもなく。
真由美とのキスについては、もう言い訳のしようもない。いくらゲームだったとは言え、きちんとその場で断れなかった圭自身に落ち度がある。
「ごめんなさい……」
「きちんと謝れるのは良いことだ。だが、自らの行いには相応の報いというのがあって然るべきだろう?」
「は、はいぃ……」
有無を言わせない態度が怖い。今まで経験してきた数々が思い出され、フルリと体が震える。
そんな圭をアレクは穏やかな手付きで後頭部を撫でた。
「あのぉ……お手柔らかに、お願いしますね?」
「俺が大切なケイに酷いことをするはずないだろう?」
綺麗に笑う顔が本当に怖かった。
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「やだ、こんなとこで!」
アレクだけがカッチリといつもの白い軍服を着たかと思うと、圭は全裸のままベランダへと連れられてきていた。眼下に広がる城下町は今日も賑やかな喧噪に満ちている。それに、広い城の敷地内でも働いている人たちはたくさんいる。そんな人たちにいつ見られるとも分からない場所に一人だけ何も身に着けていない状況というのは恥ずかしすぎる。
目立たないよう、ベランダの隅にうずくまっていたが、無理やり立たせられる。そして、後ろを向かせられて手すりを持つよう促された。窓からいつも見ていた広い街並みが目の前に広がっている。
「あっ!」
腰を持たれ、アレクの性器が後孔内へと侵入してきた。首だけで後ろを向く。アレクは軍服を一切乱さず、下腹だけを寛げて挿入していた。日中の穏やかな日の光が降り注ぐ中、一人だけそれにそぐわない格好で淫らな行為をしていることに羞恥が募る。
「やっ、アレク……んんっ!」
ズンと奥を突かれた。あがりそうになった嬌声を必死に喉の奥へと飲み込んだ。
アレクはゆっくりと注挿を始める。太く長い剛直で敏感な場所を擦られては堪らない。咄嗟に手すりを掴む甲へと口を押し当てた。
「んぐっ、んっ……んんっ」
徐々に注挿の速度が速くなってくる。パンパンと肌を打つ音が響き、恥ずかしくて腰をくねらせた。
「ケイ、もう少し刺激的にしてみるか」
耳元で囁かれたと思うと、右脚を抱えられる。そして手すりに掛けられた。体操で鍛えた柔軟性で痛かったり苦しかったりということはないが、それと羞恥は別物だ。大きく開かせられた股間は見られてしまわないかと気が気でなかった。
それなのに、下腹は頭を擡げて先走りを零し始めている。こんな状況だというのに。
「んんっ、んんー……ん、んんっ」
ボロボロと涙が零れる。恥ずかしい。それなのに、気持ちが良い。
露出狂への興味関心なんて一切ないというのに。興奮してしまっている。
「もっと乱れて良いぞ」
「……っ!!」
腰の動きはそのままに勃起した性器を擦られる。前と後ろから訪れる激しい刺激に堪らず背を反らした。
性器が直腸で往復する度、前立腺と結腸を苛めてくる。特に当て掘りするようにカリ首で前立腺付近をグリグリと何度も擦られると堪らなくなる。過ぎる刺激にプシャッと潮を噴き出した。それでもアレクの手淫もピストン運動も止まらない。
「んんっ! んー、んんっ!」
注挿が激しくなってきた。結腸を力任せに擦られて腹の奥が熱くなる。重く突かれるS状結腸の奥が痺れるような快感を全身へと行き渡らせる。もう気持ちが良すぎて訳が分からなくなってきていた。
「気持ち良いか?」
コクコクと何度も頷いた。
「おねが……そと、やらぁ……」
「だが、ケイが俺のだと知らしめるには良い場所だろう?」
「ここ、じゃなければ、何……でも……する、からぁ……あんっ!」
「何でも? 例えば?」
「あれくの……すきにして……おれのこと、ぜんぶあげるから……ッ!」
手すりから手を離され、ベランダに胡坐をかいたアレクの上へと座らせられる。自重もあり、最奥まで剛直を飲み込む。圧倒的な存在感に圭は口をパクパクと何度も開閉させた。
「ケイ」
首だけで後ろを向かせられて唇を重ねられる。そのまま下から何度も突き上げられ、腹の奥底がぼこぼこと打たれて形を変えてしまいそうだ。
「んっ、んんっ」
唇の端から唾液が零れる。垂れた雫は圭の肩を濡らした。
「ね、向き合って、したい」
キスの合間に強請った。アレクは圭の体を回転させ、向き合う格好にさせる。やっと抱き合える体勢になり、ギュッとアレクを抱き締めた。
「んっ、んんぅ」
今度は圭自身が体を浮かせて性器を注挿させる。自分の感じる場所に当てながら奥まで飲み込み、腰を上げる。それを何度も繰り返した。
性器が刺激を欲してアレクと体を密着させる。騎乗位で腰を振り乱しながら勃起した息子をアレクの軍服へと擦り付けた。布地に裏筋が当たる感触が気持ち良い。床オナなどに興味はなかったが、もしかしたらこんな感じなのだろうか。そうだとしたら、確かに癖になってしまうかもしれない。
唇同士でも深く交わりながら注挿を繰り返した。アレクから唾液を飲まされ嚥下する。胃の中も彼の体液で満たされるようで嬉しくなる。
アレクの長い舌が圭の口内を隅々まで舐め回した。口蓋、歯列、頬や舌の裏、歯肉に至るまで、触れていない場所など存在しないくらいまで犯し尽くす。
お返しだとばかりに圭も舌をアレクの口内に潜り込ませた。いたずら好きの舌へと絡ませる。グチュグチュと音をさせながら深く淫らに触れ合わせていると、ヂュッと音をさせて舌を吸われる。
「んっ」
ビクリと体が震えた。中にいたアレクの分身を締め上げる。次の瞬間、飲み込んでいた性器が体積を増し、圭の直腸を圧迫した。
「んん~……ッ」
腰をくねらせ、過ぎる快感から逃れようとするも、腰を両手で掴まれてズンッと奥まで突かれる。大きすぎる衝動に性器から白濁を放ってしまった。しかし、アレクは気にした様子もなく圭の腰を持ったまま下からドチュドチュと音をさせながら突き上げてきた。
「んんっ! んんー、んんんっ!!」
主導権がある体勢のはずなのに、圭の思い通りになど一切ならない。それどころか、好き放題に穿たれ何度も吐精する。イって敏感になった場所をそれよりも強く刺激され、休む間もない。
「んんんんんっ!!」
再び潮を噴いた。アレクの軍服も互いの顔も濡らす。もう頭も体もグチャグチャだった。乱れに乱れた思考は気持ちの良いことしか考えられない。
「おく、もっといっぱい、して……」
「こうか?」
「あんっ! そう! そこぉ!!」
S状結腸を重点的に突かれて背を反らした。アレクの首へと腕を回して抱き締める。もう、声が漏れてしまうなど考えられなかった。
「ひうッ! はひ、ひっんっ」
唇の端から唾液がダラダラと零れ落ちた。アレクが圭の後頭部に手を置き、自分の肩へと圭の顔を誘う。軍服に涙と鼻水、唾液に塗れた顔を押し付けた。
その間中にも性器の注挿は止まらない。
もう訳が分からなかった。馬鹿になってしまった頭で、腰をくねらせてアレクの性器を食い締める。
「も、むりぃ……げん、か……ぃ……」
度重なる逐情により睾丸は空っぽだった。それでも快楽の連鎖によって空イキを繰り返した。射精を伴わないことにより何度でも絶頂を迎えられるが、その分だけ体への負担は蓄積される。実質、数えきれないほどイったのと同じことだ。
「そろそろ、出すぞ」
コクコクと何度も頷いた。早く奥に熱い粘液を浴びせかけられたい。期待に直腸が疼き締め付けた。
「くぅっ」
「ああああっ!」
低い呻き声と共にアレクの剛直が深々と突き刺さる。意識を失う前にも何度も逐情したはずだろうに、S状結腸は大量の白濁で溢れかえっている。
互いに息を弾ませながら落ち着くのを待った。
そして徐々に意識がはっきりしてくると、この異常とも言える状態に圭の顔面が蒼白になる。
真昼間から外で全裸になり、あられもない声を上げながら淫らな行為に耽り、更にはアレクの服まで圭の様々な体液で濡れそぼっている。とんでもない状況に羞恥で震えが止まらなくなった。
「安心しろ、ケイのあられもない姿など、誰にも見せるはずがないだろう」
「え?」
「きちんと目くらましの魔法がかかっている。こんな可愛い伴侶の乱れた格好、俺以外の目に晒すなんてもったいないことはしない」
アレクの言葉に全身から力が抜けた。
(よ、良かったぁ……)
ホッとしたものの、全身ぐしょぐしょになっているアレクの格好は変わらない。
「でも俺、アレクのこと汚しちゃった」
「ならば共に風呂に入ろうか。久しぶりにまた互いに洗い合いたいと言ったらしてくれるか?」
「うん!!」
ハキハキと大きな声で返事をした。目の前にいる大好きな人に抱き付きながら。
「あっ」
圭を抱きしめたままアレクが立ち上がった。陰部は挿入したままだ。
「あんっ、あっ」
駅弁スタイルで部屋へと戻る。中を穿つ性器は既に力を取り戻していた。
これは洗い合う前にもう一戦はありそうだ。
それでも良い。今は愛する人とのまぐわいを楽しみたい。
久方ぶりの逢瀬を渇望していたのはどちらも同じなのだから。
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