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【第2部 ヘルボルナ大陸】 第1章:出発編 第1話

 揺蕩(たゆた)う意識。眠りから目覚める前のまどろみの中、覚醒するかしないかを行き来する心地良さ。  顔中に触れる〝何か〟の感触。温かく、柔らかい。少しくすぐったくて、自然と笑ってしまう。ガッチリと逞しい〝何か〟に抱き込まれている。決して逃げられない檻を彷彿とさせる。そんなにしなくとも、もうどこにも逃げなどしないというのに。  それに、例え逃げたとしても、逃げ切れる気など全くしない。彼の執着の強さは十分すぎる程に分かっているから。  まだ眠っていたい。昨夜も遅くまで深く愛し合った。その疲れが完璧には癒え切っていない。  でも、それを許してくれるような人でもないから。眠りの淵から徐々に覚醒へと向けて意識を起こしていく。  重い瞼をゆっくりと開いていく。半分まで開けてから眠気の誘惑に抗えず、再び閉じた。その瞼の少し上に、ずっと顔中に押し付けられていた〝何か〟がやって来る。 「起きたのか?」 「……まだ寝てる」 「フッ、きちんと起きてるじゃないか」  顔の近くで彼が笑った。軽く吹き出した際の吐息が圭の顔にかかる。  もうこれ以上は狸寝入りもできそうにないと諦める。開いた視界の先には、10センチも離れていない場所に伴侶の美しい顔があった。何度もこの目覚め方をしているが、心臓は慣れてくれない。ドキリとして起きる目覚めを、もう何回経験したことだろうか。一生このままなのかと思うと、それはそれで少しばかり心配だ。心臓への負荷(ふか)が大きすぎる。 「お早う。ケイ」 「おはよ、アレク」  はにかんで朝の挨拶をすれば、相手も(とろ)けるような笑みを浮かべる。アレクの顔が更に近づいてきた。鼻先同士を擦り合わせる。彼の肌はどこもかしこもスベスベだ。手入れが細部にまでしっかりと行き届いている。肌を触れ合わせるだけで心地が良い。いつまででも触れていたくなる。  しばらくアレクの高い鼻が圭の鼻付近を(こす)っていく。まるで実家で飼っている豆柴のようで小さく笑ってしまう。圭よりも大柄な体躯。歳だって一回りも違うというのに、こういうところは可愛い。  愛おしさが込み上げ、チュッと彼の薄い唇に触れるだけのキスをした。飼い犬のチビにも家族全員がよくキスしていた。その気分でしただけなのに、離れた次の瞬間には深いキスに囚われる。 「んっ」  舌が挿入(はい)り込んで来た。じっくりと吟味するように舌を絡められる。舌が動く度にクチュリと鳴る唾液の音がして、それにも夢中になる。  抱き込まれている状態から腕を抜き出し、彼の広い背へと回した。背筋から肩にかけてを掌でゆっくりと撫でた。掌で感じる上質な筋肉の感触。それだけでも興奮してしまう。  男の筋肉に性的な情欲をかき立てられるようになるなんて高校に入学したばかりの頃には全く想像もしていなかったというのに。固く締まった実用的な筋肉に惚れ惚れする。  その興奮は昨夜、散々搾り取られ尽くした圭の性器を疼かせた。もう出ないと何度言っても執拗な責めから解放されず、出す物がなくなって空イキを繰り返してもまだ終わらず。イきすぎて痙攣する体が良いと、また腰を振られ続け、気を失って眠りにつく。毎夜のことではあるものの、だからと言って慣れることはない。  小さな愚息が息づき始めている。気持ちが良ければどんなに疲れていようとも反応を示してしまう。なんとも元気なことだと自分の体なのに呆れ果てる。 「んっ、ぅっ」  口腔内で行われる淫らな交わり。互いの舌同士が(むつ)み合う。時に優しく。時に大胆に。強弱をつけて翻弄される。  徐々にアレクのことしか考えられなくなる。これが惚れた弱みというものなのだろうか。キスの気持ち良さに酔いしれる。腿同士を擦り合わせた。勃起した下腹が訴えてくる。上ばかりズルいと。こっちも構ってほしいと。  グリッとアレクの腰が押し付けられた。固く勃ち上がった陰茎が無言の主張をしている。圭の腿に当たり、緩く擦られている。  わざと当てていることは分かっていた。アレクもキスが気持ち良いのだと分かり、胸の中が興奮で熱くなる。  ちゅぱちゅぱと角度を変えて何度も互いの唇を食み合い、やっと離れた頃にはどちらも唾液で濡れそぼっていた。朝から何をしているのかと心の中で笑ってしまう。 「チューだけで興奮しすぎ」 「そりゃあするだろ。愛する伴侶を前にして盛らない程、枯れていない」 「んっ」  いたずら好きなアレクの手が圭の性器を揉み込んだ。直接的な刺激に背を反らす。頭を擡げ始めていた圭の陰茎は巧みな手淫によりあっという間に屹立の角度が上がる。  そして、同時に責められる後孔。ツプリと挿入り込んで来たのは中指一本にすぎないが、昨夜散々愛された蕾は余韻を思い出して歓待する。直腸が指にしっかりと抱き着き、うねる。アレクの硬い指の感触にフルルと体が震えた。  徐々に奥へと挿入っていく指の感触。前立腺で止まると、ゆるゆるとその場で擦り始めた。弱い場所へのダイレクトな快感に身悶える。 「んっ、んんっ」  無意識の内にアレクへと抱き着く腕の力が強くなる。上半身を胸筋に擦り付けてしまう。胸のピアスが角度を変え、敏感な乳首が刺激される。胸と性器、それに前立腺の三点責めだけですぐにでもイってしまいそうだというのに、更に再び重ねられる唇。全ての性感帯を愛撫され、快楽に弱い体はあっという間に陥落した。 「んんっ!!」  手淫を施していたアレクの手の中に白濁を吐き出した。昨夜、徹底的に搾り取られたため、量は多くないだろう。出たのが奇跡なくらいだ。  吐精したというのに、アレクの愛撫の手は止まらない。イったばかりの体への刺激はツラい。体中が敏感になりすぎているのだ。過ぎる刺激は身体に良くない。  背へと回していた腕を解き、アレクの胸を押した。上半身が離れ、僅かに快感から解放される。 「ダメだってば! 俺、イったから!」 「ケイなら何度だってイけるだろう?」 「そ、だけど……んうっ!」 「昨夜だって、何度もイかせただろう。その度に泣いて乞うて……あぁ、愛らしいな。あのケイはいくら見ても見足りない。延々と見ていたい」 「んあっ!」  ゴリゴリと前立腺を押し潰される。その動きと連動するように性器を手淫する手が速められる。再び絶頂へのカウントダウンが始まりそうになり、急いで性器を握るアレクの手首を握った。性器から指を外させる。粘つく液体に塗れており、それが自分の体液だと思うと羞恥に駆られた。  これ以上いたずらできないよう、恋人繋ぎで指を絡め捕った。アレクは繋いだ手を口元まで持っていく。ペロリと指を舐められ、体中をゾクゾクと歓喜による快楽が走り抜けた。  アレクにかかれば、全身が性感帯になってしまったようにすら感じる。指を舐められただけで気持ち良いなんて考えられない。  しかし、現実として体中が悦んでいる。吐精して力の抜けていた性器を再び蘇らせる程に。 「アレク、やめ、て……。イきすぎると、くる、しい……から」 「その苦しみも快感に変えてやろう」 「んんっ!」  前立腺を押していた指が今度は指先でコリコリとしこりを擦り始めた。また違う刺激に襲われ、体中がゾクゾクしてしまう。  何とか後孔を弄る指を引っ張り抜き、アレクの両手を胸の前でまとめ上げた。これでもう悪さはできない。やってやったという満足感にドヤ顔を作っていると、アレクはそんな圭を楽しそうに見つめていた。  アレクの力を持ってすれば、圭の力なんて足元にも及ばない。手だってすぐに解放できるだろう。しかし、アレクは圭の手を振り払いはしない。楽しそうに見ているだけだ。  ただ、行動を制御できているのは手のみであり、下半身はどうにもならない。アレクの長い脚が圭の脚へと絡みついて来た。再び屹立した性器をゴリゴリと押し付けてくる。圭は少し膨れ面をしながらアレクを睨むも、それすらも愛おしいと瞳が語っていた。  それならばと、今度は圭の方が行動に出た。アレクの手首を束ねていた手を離し、布団の中へと潜り込む。アレクは布団の端を持ち上げ、中を覗き込んでいた。アレクの下腹まで辿り着く。目の前には勃起した剛直。何度見ても逞しい。昨夜、何時間も相手をしたというのに、なぜこうも一晩寝ただけで元気になるのだろうか。〝枯れる〟という言葉をきっとアレクの下肢は知らないのだろう。  屹立を両手で握る。ビクリと一瞬脈動した気がした。掌で感じる逞しさに惚れ惚れする。昨夜もあんなに受け入れ、体の奥深くで愛し合ったというのに、またこの性の象徴が欲しくなってしまう。アレクのことも大概は性欲魔人だと思っているが、圭自身も己の浅ましさにたまに笑ってしまう。こんなに性欲に塗れているなんて思っていなかったのに。  竿を手淫しながら、布団の中を覗き込んでいるアレクへと見せるように舌を大きく出して亀頭を舐め上げた。舌に広がる先走りの塩味。トロトロと鈴口から溢れている。手淫をする手を濡らし、クチュクチュと手の動きに合わせて粘液が音をたてる。 「アレクのちんぽ、あんなにいっぱい出したのに、まだまだ元気いっぱいじゃん」 「あんなに? 言うほど出してないだろ」 「十分だっての!」  アレクが圭を眺めながら苦笑しているのを見て、今度は圭が責めてやりたくなる。布団の中に潜り込んでいる以上、アレクは圭に手出しできない。それどころか、圭の手中にはアレクの性器、つまり男の弱点がある。こんなに状況として有利なことはない。  口内に唾液を溜め、見せつけるように唾液をアレクの性器へとかけた。アレクの透明な先走りと混ざり合う。ヌルヌルになった性器を手淫しながらまた舌を出し、亀頭の滑らかな皮膚を何度も舐め上げる。ビクビクと性器が震え、快楽に耐えているのが分かり、ニンマリと笑んだ。  主導権を握れるのは嬉しい。男たるもの、やはりリードしたい。それは受け入れる側になっても変わるものではない。そう思うのは、男の(さが)なのだろう。いつだって相手を喘がせて、悦に入りたい。本当なら、挿入する側もやってみたいというのが本音だが、きっとアレクは許さないだろうから。  一通り亀頭を舐め終わり、今度は口内へと先端を含んだ。アレクの性器は先っぽだけでも十分大きい。陰茎全てを含む時など、いつも顎が外れてしまいそうだ。今は亀頭だけだからそこまでではないが、それでも大きく開かなければ入らない。  口の中でチュウチュウと音を立てて吸い上げる。舌ではカリ首への愛撫も忘れない。敏感なくびれを舌先でチロチロと舐められれば気持ち良いだろう。アレクにされる時など、それだけで達してしまう時すらある。遅漏な彼は未だ放つ兆しを一切見せないが。  丹念に舌技を駆使しながら視線だけでアレクの顔を見る。興奮した表情で凝視されていた。手の中で反応を示す男根と言い、主導権があるのはやっぱり気持ちが良い。もっと責めてやろうと、性器をより深く飲み込んだ。それでも半分もいかないが。頭を前後させて口での注挿を繰り返す。喉の奥まで飲み込まされている時は苦しいが、そこまでいかなければ耐えられる。開きっぱなしの顎が怠いくらいだ。  たまに角度を変え、頬の内側の肉に亀頭を押し付ける。ダラダラと零れる先走りが口内に溜まる。嚥下するのに躊躇いなどない。アレクの出すものなら、何でも受け入れられる。精液だろうと、唾液だろうと。さすがに排泄物や吐しゃ物の類だけは抵抗があるが、それ以外ならば何でもできる。それくらいにはアレクのことを愛しているという自負がある。  鼻息が荒くなってしまう。こんなにアレクの下腹と接しているのだから、バレてしまうだろうか。何度触れ合っても、いつまでも彼に興奮する淫らな性に。  一度、口の中から性器を抜き出した。ビクビクと震え続けてはいるものの、いつも後孔内で感じている射精前の太さにはあと少し足りていない。ただ、顎がさすがに疲れてきてしまった。少し休憩しても(ばち)は当たらないだろう。  チュッチュッと音をさせながら性器に口づけを施していく。亀頭に。竿に。まんべんなく唇を寄せた。竿の根本ではカプリとかぶりつく。浮いた脈を舌で舐める。逞しい陰茎と、雄の香りにも魅了される。疼く後孔。まだ中で出され足りないとでもいうのか。起きた時にはそんな気など全然なかったのに。この魅力的すぎる性器が悪い。快感という快感を全て教え込まれてしまったのだから。  唇で食んだまま先端へと移動し、今度はカリを唇で挟んだ。はむはむと唇だけで愛撫する。そして、エラの張った亀頭を舌先で左右に舐めた。溢れる先走りが圭の上唇を濡らす。性器を半周ほど唇で愛撫した後、尖らせた舌を出して鈴口へと向けて亀頭を舐めた。トクトクと溢れる泉に舌先を入れる。抉るように舐めた後、鈴口付近を唇で挟み、チュウと吸った。 「くっ」  頭上からアレクの声がする。声を出してくれたのが嬉しい。もっと気持ち良くしたくなる。亀頭全体を再び咥え込み、今度は睾丸を手で包み込んだ。きっと、この中は一晩たって精液で満ちているのだろう。  アレクは回復が早い。いつだって朝になれば子種たちが復活しているのだ。たまに回復魔法でも使っているのではないかと疑いたくもなる。実際に回復魔法を使用しているのであれば、アレクのことだから行為の最中に使って延々と抱かれ続けるだろう。さすがにそんな終わらない快楽地獄には付き合いきれない。魔法なんて使用せずとも体力の限界まで毎夜挑まれているのだから。  先走りを吸い続けながら手の中の睾丸への愛撫に集中する。掌で温め、まずは指の腹で優しく撫でてゆく。竿とはまた違った触り心地がする。アレクの逞しく張りのある筋肉に包まれた美しい体の中で、皺の寄っている場所など睾丸か指の関節くらいだろう。まんべんなく触り、しばらくしたら今度は掌を使ってやんわりと揉み始める。中の精液たちを労わるように。  そして、指の動きを変えていく。指先で皺の方向に沿って往復させる。よくアレクの背中に爪を立ててしまうため、まめに切り揃えているから痛くはないだろう。指先を徐々に裏筋へと向かわせる。同じ男として、裏筋への愛撫の快感は分かっている。いつもアレクに責められて、あられもない声ばかり上げてしまうから。  裏筋を指で上下に擦っていると、もっと強い刺激を与えたくなってくる。鈴口を咥えていた口を離し、舌を竿の裏筋に沿わせて睾丸へと向かう。そして、睾丸の裏筋までやって来ると、今度はその場所を重点的に舐める。  アレクの下腹に顔を埋めている形になり少しばかり恥ずかしいが、それ以上にもっと感じさせたいという思いの方が強かった。興奮で胸がドキドキしているのが分かる。男の下肢に顔を寄せて胸を高鳴らせている好き者だとバレたらどうしようという気持ちと、恥ずかしい言葉を投げかけられたいという2つの気持ちが混在している。こんなM気質じゃなかったはずなのに。アレクに言われるとゾクゾクとした背徳感に溢れる興奮に満ちてしまう。  下腹独特の男らしい匂いにも高揚する。昨夜、圭が意識を失った後、アレクが風呂に入れてくれたのだろう。互いの肌に汗や精液のベタつきはないし、気持ち良く朝を迎えさせてくれる。  それでも、零れた先走りや昨夜の精液の饐えた匂いを思い出して、圭を高ぶらせるのには十分だった。  もっともっと彼の匂いを嗅ぎたい。精液なんて決して良い匂いとは言えないというのに。それなのに、もっと浴びたいし、塗れたいと思ってしまう。アレクの白濁限定ではあるが。  早く出してくれとばかりに竿への愛撫を再開させた。上下に扱きながら夢中で裏筋を舐める。舌を速めに動かし、その後には口の中に含ませる。もちろん、口内でも愛撫は止めない。丹念に舐めねぶってゆく。愛しい人の大切な場所だから。もっと気持ち良くなってほしい。  同性にこんな尽くしたいと思わせるなんて、本当にこの伴侶は稀有な存在だ。他の人だったら、どんなに頼まれたとしても自分からこんなことをしたいとは思えない。それがどんな立場の人であったとしても。  なかなか射精に至らない男根に段々と苛立ってきた。圭はすぐに射精してしまったというのに。この遅漏は本当に頑固者だ。睾丸を口の中から出し、竿へと頬を寄せる。アレクが見つめていることを分かっての行動だ。 「アレク、俺の中、入りたい?」  スリッと頬で擦る。先走りと圭の唾液でぬめる竿の粘液が顔につくが、気にしない。どうせこの後、全身汗や精液、それに自分で噴いた潮などで塗れるのだから。数えきれないくらい抱かれてきたのだ。もう分かっているし、慣れてもきた。 「いつだって俺はケイの中にいたい」  直情的な言葉に後孔がキュンとわなないた。熱く求めてくる視線が心地良い。ギラギラとした目が「欲しい」と雄弁に語っている。この瞳を知ってしまってからというもの、ずっと向け続けてほしくて堪らない。他の人をこんな風に見つめる日が来てしまったら、嫉妬に塗れてしまうだろう。そんな日が来ることのないよう切に願うばかりである。  掛布団をひっぺがす。アレクの逞しい体躯が窓から差し込んでくる朝の光に晒される。彫刻を彷彿とさせる完璧な体に、知らぬ間に喉が鳴った。  アレクの性器を手で支え、その上に自分からまたがる。先端を後孔に当てるが、まだ入れない。膝立のまま体勢をキープさせる。 「アレク、入れたいなら、ちゃんとおねだりして?」  腰を前後させ、蕾でアレクの性器を翻弄する。いつも恥ずかしい言葉を言わされてばかりいるのだから、たまにはこうして言わせる立場になったって罰は当たらないだろう。  本音を言えば、早く飲み込みたい。アレクの男根を愛撫し続け、我慢が利かなくなっているのは圭も同じだった。  剛直が中を穿つ気持ち良さは何にも代えられない。胸への愛撫も、性器への刺激も気持ち良いことには変わらないが、この場所は別格だ。男なのにメスにされ、あられもない姿を晒してしまう。屈服させられるのが堪らない。〝アレク〟という絶対的な存在に嬲られ、好きにされ、淫らな自分を解放できる快感を思い出し、後孔が大いに疼いた。圭の性器からも先走りが溢れ、性器やアレクの腹を濡らす。 「弱ったな、そんな恥ずかしいことは今まで学んでいないのだが」 「んじゃ、俺が教えてあげる」  アレクの性器を指先で撫でた。ビクビクと震え、我慢させているのが分かって悦に入る。 「アレク、どこに何入れて、どんな風にしたい?」  見せつけるように腰を前に突き出した。アレクの方からは、はしたなくヒクつく後孔と彼の男根が見えていることだろう。それに、フル勃起した圭の陰茎も。想像しただけで酷く淫らな光景だ。自分がしているとは思いたくもないが、そんな格好をしていることにも興奮してしまう。もう露出狂と同じではないか。 「ケイの中に俺のを入れて、思い切り擦ってほしいんだが」 「もっとHに言ってくれなきゃダメ~」  クスクスと笑いながら腰をくねらせる。アレクの方も興奮しているのが分かり、楽しくなってくる。  もっと見せつけてやろうという気になり、胸のピアスを引っ張ってみた。背徳的な快感が上半身を駆け抜ける。それは後孔まで伝わり、ヒクヒクと括約筋を更に震わせる。 「あっ、あっ」  久しぶりに行う一人遊びも気持ち良い。しかも、そんなあられもない姿を好きな人に見られているというのがまた堪らない。大好きな相手に「待て」をさせながら、自分だけ快感に塗れている。こんな酷いことをしながら興奮してしまう淫らな体。普段なら翻弄されてばかりの情事において、主導権を握れている状況が楽しくてならない。 「ほら、俺、一人でイっちゃうかもしれないよ?」 「それだけは勘弁してくれ」 「だって、俺、気持ち良いの弱いから」  自分からこんなことを言うのは少し恥ずかしいが、事実である。どこもかしこも性感帯にされ、すぐに逐情するような体にされてしまった。まだ16だというのに。この後、アレクに見放されてしまったらどう過ごして良いか分からない。彼しか受け付けられない体なのだから。 「ね、早く。もっと俺のこと、求めてよ」  好きって言ってほしいし、激しく求められたい。この麗しい男の全てが自分のものだと実感したい。  これでもかとばかりに、今度は竿を支えていた手を離し、己の性器を手淫し始める。胸のピアスを引っ張りながら自分で性器を慰めているというのに、後孔には何もできないもどかしさ。そして、その後孔の下で準備を万端に整えているアレクの男根。彼の先走りで括約筋は濡れてしまっている。いつだって受け入れられる状態だ。きっと、昨夜のまぐわいによって、柔らかく解れているだろう。早くもっと淫らに求めてくれたら、この中でアレクの剛直を味わえるというのに。 「あっ、気持ち良い……ね、このままじゃ、アレクの入れる前に出しちゃう……」  その言葉は嘘ではない。手淫の気持ち良さで高ぶる体は、二度目の逐情へと着々と準備を進めていた。さすがに二度も吐き出したら、もうそれ以上はいらない。昨夜だって、これでもかという程イかされ続けたのだ。  だから、早く言ってほしい。もっと求めてくれないと。 「ケイのまんこでちんこを擦って、ザーメンで腹いっぱいにさせたいんだが……というよりも、ケイの痴態でちんこがもう痛い。勘弁してくれ」  本当にツラそうに眉間に皺を寄せるアレクに、さすがにちょっとやりすぎたかと苦笑する。胸と性器を弄っていた手を離し、アレクの性器を支えながらバキバキに腹筋の浮き出た腹に手を添えた。 「ん~、本当はもっといっぱいちゃんとおねだりさせたかったけど~、可哀想になってきたから挿れさせてあげる」  上から目線の言葉と態度だが、今、主導権を握っているのは圭の方。だから許される。……と、思っている。 「んっ」  アレクの性器を少しずつ後孔の中へと挿れていく。徐々に開かれていく括約筋。その様をアレクにしっかりと見せつけるため、腰を突き出しながらの挿入だ。 「アレクの、おっきなちんぽ……俺の中、入ってくの……見える?」  アレクが凝視しながら頷いているのを見下ろすというのは気分が良いものだ。今まで、こういう機会はありそうでなかった。いつも性交の主導権はアレクにあり、好きにされるばかりだったから。 「んっ、うぅ……ッ」  昨夜、散々飲み込んだというのに、やっぱり挿入時は少し苦しい。眠りに落ちて、体が硬くなってしまっているのだろうか。性交時、連続で受け入れている時はどんどん楽にアレクを中へと入れられるようになるのに。  カリ首が括約筋を通る感触。性器の中で最も太い場所が通過するこの瞬間は、何度経験しても息を詰めてしまう。それと同時に、これからこの巨大なイチモツが自分の中に入ってくるのだという緊張や期待に包まれる。  まだ想い合う前は、この時が一番嫌だったかもしれない。この後、長く苦しく凌辱される時間が始まることを告げていたような気がしたから。もちろん、中出しされる時も嫌悪しかなかったが。  今では、彼の一部が挿入ってくることが喜びでしかない。一つになっている時が最も安心する時間と言っても過言ではないのだ。自分の中が欠けたピースで埋められる感覚。入っていることがあるべき姿なのだと、正解だと告げられている気がする。 「んっ……んっ……」  ゆっくりと中へと進めていく。途中、前立腺付近をカリ首が通過し、敏感なしこりが押し潰される。アレクの調教によって、主張し、より一層感じやすくなってしまった場所だ。少し触れただけで得も言われぬ悦楽に包まれる。 「んあっ、ぁっ」  騎乗位の腰が揺れる。無意識のうちにその場所を腰が往復する。膝立ちの脚はつらいのに。それでも、そこで得られる快楽の方が魅力的すぎる。カクカクと細かく腰を振り、一人で悦楽に耽ってしまっていた。 「ケイ一人でばかり気持ち良くなっていては、寂しいぞ」 「んっ、わかって……んっ、んんっ」  アレクからの抗議の言葉に頷きながら少しずつ奥への挿入を再開させた。拓かれていく体内。苦しいくらいの大きさに息を飲む。毎回、この挿入という行為には限界まで体を酷使する。括約筋も直腸も、性交を除けばどちらも普段ここまで大きいものが通ることはない。意識の全てが後孔に持っていかれる。  苦しいのに。それすらも愛おしい。  中に入っているのがアレクだから。どんなに酷使されたとしても、耐えられる。 「んっ……ふっ、ぅ……」  どんどんと奥深くまで受け入れてゆき、トンと奥で性器の進行が止まった。結腸まで辿り着いた。  アレクの性器はまだ全て受け入れられてはいないが、結腸を抜かない限りはこれ以上奥まで入れられようがない。  そして、自分で結腸を抜くのは苦手だった。人体の構造を無視したかのような行為に、体が悲鳴を上げてしまう。抜いてしまえば更なる悦楽が待っているのは分かっているのだが、無意識のうちに体が竦んでしまうのだ。  グッグッと何度か押してみるが、やっぱり無理だった。固く塞いでしまっている。昨夜はあんなに何度も行き来したというのに。 「んっ、はぁっ、ぁっ」  腰を回し、グリグリとアレクの性器で結腸を擦った。生まれ出でる快感に肌を染める。 これだけでも十分気持ち良い。結腸もまた、性感帯の一つである。刺激するだけで性器と同様に快感に包まれる。  一人遊びのように巨大な肉塊を使って結腸で快楽を得る。熱く、脈動する剛直。その存在感は奥まで受け入れることでより一層高まる。隙間なくみっちりと嵌まっている肉棒が少し動かすだけで敏感な直腸を擦り、そこから性器では得られない快楽で満ちるのだ。一度はまってしまえば虜になってしまう。  もちろん、愛しい人限定で。 「んっ、んんっ」  トン、トンと何度も奥を性器の先端で突く。腹まで勃ち上がった圭の性器からもダラダラと先走りが零れて竿を伝う。そして結合部を濡らし、アレクの陰毛や腹を汚した。  もっと刺激が欲しくなる。脚に力を入れ、性器の注挿を大きくした。前立腺も強く擦られる。結腸の壁と前立腺、二つの場所で味わう極上の悦楽。もう、知ってしまってからというもの、この快感を味わいたくて淫らな行為から抜けられなくなってしまった。 「ああっ、あっ、きもち、い……」  ぬっぽぬっぽと結合部から音がする。卑猥な音にすらも耳が犯されている気分だった。それを醸し出しているのは、圭自身であるというのに。  徐々に高められていく性感。睾丸の中が騒めき始めていた。出させてくれと。この狭い場所から、放たれて自由になりたいと。  手が勝手に性器を握ってしまう。上下に擦ると、中と外の両方から快感に襲われる。こんなの耐えられる訳がない。快感には、とことん弱い体なのだから。 「ふっ、んんんっ……あっ!」  手淫する手を速めた。一気に駆け上がって来る射精欲。気付いた時には白濁を放っていた。量の少ない粘液がアレクの腹の上に水玉を作る。  結腸までアレクを受け入れたまま、動けなかった。ヒクヒクと体を痙攣させ、快感の余韻に耽る。 「さて、一人遊びはもう満足したか?」 「えっ……?」  そう言えば、確かに独りよがりの行為をしてしまった。中にいるアレクは太く硬いものの、まだ射精に至る程の大きさではない。圭の顔が一気に青褪める。  アレクの性器をオナニーの道具のように使ってしまった。自分だけ気持ち良くなった代償は大きい。そう物語るように中に受け入れている性器が主張を続けている。 「あ、あの、……俺、もう、2回もイったから、ちょっと疲れちゃった、かなぁ? ほら、昨日の夜も、いっぱいしたし……」 「そうか、俺はまだ1度も今日はイってないんだ」  ベッドに横たわったまま、とても良い笑顔でアレクが語る。爽やかで、朝の始まりに相応しい顔で。  この、下腹でまぐわったままの状況でなければ。  アレクが腹筋を使って上半身を起こした。 「んっ」  中の性器が動作と連動するように動く。まだイったばかりの敏感な体が震えた。  いきなり近くなった綺麗な顔にドキリとする。やっぱり何度見ても美しいし、見飽きない。「美人は三日で飽きる」なんて諺があったが、絶対に嘘だと思う。いつまでも見惚れてしまうのだから。  アレクの両腕が圭の背へと回った。ギュッと抱き締められる。温かい人肌に包まれ、陶然とした。  射精した後のこの抱擁は幸せに満ちている。体が満足した後、愛情で満たされる感覚。今が最高に幸せな時だと実感する。圭もアレクの広い背に腕を回した。小さく擦りながらアレクの肌を堪能する。  しばらく抱き合っていると、おもむろに顔を上げるよう顎を掬われた。近づく端正な顔。目を閉じてしまうのは勿体ないが、この後訪れる行為のために瞼を下ろした。クチュリと音をさせながら交わる唇。上も下もアレクの体を挿入されている状態に満足する。  アレクが唾液を口内へと流し込んできた。当たり前のように飲み下す。体の中までアレクの体液で満たしたいという彼の思いだろう。喜々として受け入れる。アレクの中で作られたものなら、全てが愛おしい。 「んっ」  角度を変えながら何度も唇を貪っていると、下からトンと突き上げられた。結腸の壁が押される。その後も何度も奥を穿たれ、思わず唇を離してしまう。 「んっ、あれ、く……ま……って……」  背へと回していた手を首へと上げる。密着していた上半身が離れ、刺激に体をくねらせた。  アレクの手はいつの間にか圭の腰を掴んでいる。固定させ、トン、トンと下から突いていた。  注挿は大きなものではない。しかし、敏感な結腸の壁を何度も的確に押されて、快感を逃すように首を振った。 「ケイ? 分かってるだろう?」  耳元で囁かれてビクリと体が跳ねる。アレクはまだイっていない。さっさと射精へ導けと言われていることは分かっている。  しかし、圭としても絶頂したばかりなのだ。そんなすぐにアレクを満足させられるような注挿をできるはずがない。 「ごめ、待って……ちょっとしたら、また、頑張る……から……あっ!」  下から勢いよくズドンと突かれた。刺激の強さに背を反らす。脚がピンと伸びた。中にいるアレクを喰い締める。それだけでアレクの形を感じて更に気持ち良くなってしまう。 「くっ、これで待てなど……できるはずがないだろ!」 「あっ」  両脚の腿を持たれ、一気にベッドへと押し倒された。背中に当たるシーツの感触。脚を顔の近くまで上げられている。くの字型に体を折り曲げられて苦しいというよりも、中に挿入されている性器の感覚の方が圭の意識の大半を占めていた。 「あっ!」  膝裏を押されて腰が浮く。アレクが性器を半分抜き出し、一気に奥へと向けて突き込んだ。ビリビリと結腸へと響く。そして、そのまま激しい注挿が始まった。 「あっ! ああっ、あっ!」  ズボズボと遠慮なんてない抜き差し。先ほど圭がしていた出し入れなどとは比べ物にならない。そして、どんどんと勢いが増してくる。 「ああっ!!」  注挿の激しさに結腸が負けた。アレクの亀頭が奥まで挿入される。ズッポリと抜けた結腸の先、S状結腸は昨夜ぶりのアレクを歓待していた。括約筋で感じるアレクの陰毛と肌の感触。アレクの性器が全て入ったことが分かり、直腸が歓喜に打ち震えていた。 「ああっ! あっ! ん、ああっ!」  本格的なピストンが始まった。上から振るわれる腰は絶頂を迎えて間もない圭を思いやる素振りなど微塵もない。好きに穿ち、自分の快感を求める動きだ。  しかし、性交に慣れた圭の体もその行為を受け入れる。直腸全てが激しい摩擦運動から快感を貪っていた。  肌を打つ音が寝室に響く。朝に相応しくない、淫靡な空気が満ちている。激しすぎるまぐわいから意識を守ろうと、アレクの背に縋り付いた。爪を立て、必死にしがみつく。 「ああっ! ぐっ、――っく……ぅ、あ……んッ!」  良すぎて意識が途切れそうになる。結腸も気持ち良いが、S状結腸の奥の壁はまた格別だ。柔肉を遠慮なく苛められ、組み敷かれた体が身悶える。  昨夜、訪れた数えきれない程の絶頂に加え、起きてからの2度の逐情に体は既にヘトヘトだ。それでも、両脚を取られて押さえつけられている状況ではなすすべもない。受け入れている後孔で感じるアレクの熱。絶対的な存在感で圭を捕らえて離さない。  キュウキュウと直腸がアレクの性器に絡みついているのが分かる。それなのに、その締め付けすらものともせず、アレクは我が物顔で圭の中を穿ち続ける。  擦られ続ける前立腺も気持ち良すぎてツラい。カリ首が通る度に引っかけられ、それだけでもイきそうになるというのに、それに加えて密着した竿に浮き出た脈による刺激。つまり、アレクが中にいて動いている限り、ずっと快感に責められ続けているのだ。ある意味、絶頂地獄と言っても過言ではない。  どんどんと湧き上がる射精欲。もう吐き出す物がないのに、この欲だけは常に昂る。  そして、その先にあるのは射精を伴わない絶頂だ。これがまたツラい。出せば終わる吐精とは違い、いつまででも快感が体内にくすぶり続ける。そして、何度でも訪れるのだ。  脳内の回路は焼き切れて馬鹿になってしまう。性交がこの世の中の全てであり、目の前の相手以外はどうでも良くなってしまうのだ。 「っン……は、ぁっう、ああ……っ!」  体内でグルグルと巡る熱。もう、イくことしか考えられない。後孔がわなないている。ビクビクと体が大きく震えた。アレクの背中を掻き毟る。傷がついてしまうかもしれないなんて思う余裕はない。考えられるのは絶頂のことだけ。 「ああああっ!」  アレクが大きく腰を引き、一気に最奥まで貫かれた。 「ケイ……ッ!」  強く抱き締められる。中で感じる熱い飛沫。圭の中がアレクで満たされる。  圭自身もアレクの吐精によってもたらされた快感で絶頂を迎えていた。ただし、射精を伴ってはいない。昨夜も何度も経験した。全身がガクガクと震え、自分でなど制御できない。体内に受け入れている性器と、強く抱き締めてくるアレクだけが圭の全てとなり果てる。  目の前にチカチカと星が舞っている。綺麗と思うよりも、過ぎる快感に過呼吸になりそうだ。気持ち良すぎて頭がおかしくなる。いや、もう既になっているかもしれない。アレクのことが好きだということと、セックスが気持ち良いと言うこと以外何も分からない。  早く起きて身支度を整えて、やるべきことをやらねばならないとか、そんなことは微塵も考えられなくなっていた。桃色の思考だけが広がる頭で、大好きな人を抱き締める。  少し汗で湿った温かい人肌。普段、汗などかかないというような澄ました顔で執務を行っている人物と同じなんて今は思えない。  圭だけが見られる、特別なアレク。心も体も満足する。  もう十分満足したのだ。 「んっ」  ヌポリと音をさせて後孔から引き抜かれる性器。放ったばかりなのに、すぐに力を取り戻している。 「やっ、もう……体、むりぃ……」  もはや凶器にしか見えない凶悪な男根に、涙声が出る。這ってベッドから逃げようとしても、下半身がガクガクと震えたまま言うことを聞かない。腕の力だけでシーツを掴み、前へと進もうとしたが、腰を掴まれ、あっけなく引き戻された。 「まだまだできるだろう?」 「やぁ、も、できないぃ!」  全身で藻掻いたつもりだったが、腰を浮かされ、括約筋に触れた熱棒の感触で血の気が下がる。 「ん、ああっ!」  ズブズブと再び挿入り込んでくる凶器。遠慮など微塵も見当たらない。 「ああっ、やはりケイの中は最高だ」  満足気に聞こえてくるアレクの呟き。しかし、圭の方はそれどころではない。 「むりぃ……も、むりだよぉ……」  ヒックヒックと泣きじゃくりながら限界を訴えても聞き入れてはもらえない。この状態になって許されたことなど一度としてなかった。 「ああっ、あっ……あっ!」  奥へと向けて進む性器は、正常位の時とは挿入の角度が変わり、先程とは違う悦楽に包まれる。直腸内の性器側の襞を強く擦られ、腰をくねらせた。  もう勘弁してほしい。心の底からの願いは、アレクには通じない。性交に突入した後のアレクは性欲に実に忠実だ。後は早く満足してくれるのを祈るばかりとなる。 「ああーっ! ん、ぁああっ!」  過ぎる快感に潮を噴いた。シーツを派手に濡らしてしまう。先ほど絶頂を迎えてからというもの、ずっとその気持ち良さが続いているような状態だ。痙攣する体を止められない。目の前のシーツを強く握りしめた。この気持ち良さを少しでも逃がすように。そうでもしないと、逃れられない悦楽の大波に攫われて、自分を見失ってしまいそうだった。 「あっ、ああっ、あー……ッ」  目と鼻と口、全てから体液が溢れ落ちる。意味のある言葉など紡げない。今の圭が分かるのは、後孔を素早く注挿する暴力的ですらある性器のことだけ。アレクの性を受け止めるだけの存在だ。  ただ、何にも代えがたい快感だけは全身で感じている。後孔内に充満している淫らな欲。同性を受け入れる器官になった体だ。  プルプルと圭の性器は震えていた。出せる物がなくなり、激しい動きに翻弄されるだけの飾りになり果てた。  それなのに、激しく腰を振るアレクがその性器を大きな掌で包み込んだのだから堪らない。 「やぁっ! 壊れ、ちゃうッ!」  後孔でピストンされながら敏感な亀頭を指で撫でられ、どんどんと訳が分からなくなってくる。もう快感で殺されてしまいそうだ。 「ああああっ! ん、あああッ!!」  全身がビクビクと大きく震えた。駆け抜ける絶頂。それなのに、まだ激しい注挿を続けられている後孔。 「ほら、ケイ、まだ終わってくれるなよ?」  上半身を引っ張り上げられる。背中にアレクの肌の感触を感じながら、ズブズブと自重で奥まで性器を受け入れていく。S状結腸の奥の壁に切っ先が突き刺さる。そのまま下から激しく突き上げられ、身をくねらせた。 「ああああっ! んあっ、ああっ!」  アレクのイタズラ好きな指が圭の胸へと伸びてきた。ピアスを引っ張られる。そして、伸びた乳首を指先で擦られ、激しい快感に襲われる。 「らめ、そこぉ! ばか、なっひゃう……!」 「どんなケイも可愛いから、いっぱい見せてくれ」 「んひぃぃぃっ!」  アレクが満足いくまで胸で遊ぶと、今度は両脚の膝裏に手を入れられた。脚が浮き、結合部だけが圭を支える軸となる。 「やめへ、やめ、へよぉ!」  ズブズブと下から突き上げられる巨大な性器。翻弄されてばかりの体。そして、たまに潮を噴く性器。ずっと訪れている絶頂により、何がなんだか分からなくなっていた。  プツリと意識が途切れる。暗闇に堕ちて行く中でもずっと、体だけはアレクに翻弄され続けていた。 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆  重い瞼をゆっくりと持ち上げた。うつ伏せの視界に入るのは、真っ白いシーツ。ノリが効いていて気持ちが良い。新しい物と交換されているのだろう。  全身怠いものの、汗や精液などによる気持ち悪さはなかった。意識を失った後、アレクが風呂に入れてくれたことは分かる。  腰を中心に全身が痛い。圭の体が柔らかいからと言って、アレクはいつも無茶をし過ぎる。目覚めた後、悶える羽目になるのはいつでも圭ばかりなのだ。  しばらくの間、ベッドの上で腰を擦ったりゴロゴロと体を動かしたりしていたが、意を決して起き上がろうと努力する。プルプルと震える両腕をベッドへと突き、緩慢な動作で上半身を起こした。たかがこれだけの動きなのに、随分と時間がかかった気がする。  そして、ここからが難関だ。無茶をされ過ぎた腰はズキズキと痛い。這ってベッドサイドまで行き、大きく深呼吸を一つ。そろりと右足を出してみた。 「てやっ!」  精神統一をして立ち上がろうとするも、やはりその場にくずおれた。尻だけが上がる情けない姿のまま静止する。痛みの中心部でもある臀部だけは守れたのが幸いだが、ベッド横で突っ伏したまましばらく身悶えていた。  心の中でアレクへの罵詈雑言を並べ立てた後、サイドテーブルなどに手を突いてヨロヨロと起き上がる。ジクジク痛む腰を擦りながら、ベッド横に落ちていたバスローブを掴む。窓から差し込む光と太陽の位置で、何となく昼すぎだろうことを察していた。真昼間から全裸というのはさすがにどうかと思い、ノロノロと緩慢な動作で身に着ける。  何とか壁に手を当てながら寝室を歩き、居室へと辿り着いた。使用人の部屋へと通じる紐を引っ張ると、馴染みの執事が訪れた。朝食代わり程度の軽めの昼食を頼み、ダイニングテーブルへと腰を下ろした。  たかだかベッドから降りて食事をお願いしただけだというのに、随分と時間がかかった気がする。通常であれば、30秒もかからないことだというのに。  運ばれてきた食事に口を付けながらこの後の予定を考える。ここ最近、ユルゲンは毎日忙しそうで、自習ばかりを言いつけられていた。課題はたんまり与えられているため、暇を持て余すということはないが、ずっと勉強ばかりの毎日というのも飽き飽きする。  少しばかりの反抗心で、今日は読書デーにでもするかとボンヤリ考えていた。勉強机に座っているのもこの腰では長くもたないだろう。それなら、ソファでダラダラしながら本でも読んで過ごす方がマシだ。満足に外に出してもらえない圭には、城下で話題の本が常に山積みになっている。ビジネス書などは手に取る気すら起きないが、活劇小説の類は圭でも楽しめる。元の世界にいた頃は読書なんてほとんどしなかったのに、ところ変わればというやつだ。  食事を終えて好きな作家の最新作を読みながらソファに寝そべっていると、トントンと扉を叩く音がする。返事をすれば、盛大に疲労の表情を浮かべたユルゲンが入ってきた。 「……ユル、大丈夫?」  圭自身も大丈夫かと言われればダメと答えるくらいには倦怠感に包まれているが、自分よりも程度の酷い相手を前にすると、その痛みなども少し和らぐように思える。 「ケイ様、助けてください……」  圭のいるソファの近くで膝をついたユルゲンに目を瞠りながら駆け寄ろうとする。しかし、ピキリと腰が痛み、ユルゲンに辿り着く前に圭もくずおれた。2人して床で身悶えるという地獄絵図のような惨状が広がる。 「ケイ様、いかがなされましたか?」 「性欲大魔神に腰ぶっ壊されたぁ~」  床に転がりながら身を捩らせていた圭を見て、ユルゲンが呆れたような顔をする。ユルゲンはそのまま立ち上がり、圭の傍まで来て腰を下ろすと、圭の腰へと手を当てる。徐々に痛みの取れて行く腰。手が離れる時にはすっかり普段通りとなっていた。 「ユル、ありがとぉ~」 「いえ、これも陛下のせいでしょうから」  ユルゲンの言葉にウンウンと盛大に頷いた。 「で、ユルの方はどうしたの?」 「ああ、そうでした! ケイ様! 陛下のご説得を! お願いいたします!!」  ガッシリと手を握られる。少し痛いくらいに。驚きに目を見開いていると、そのまま立ち上がらせられる。ドレスルームで服を着替えさせられ、今度は廊下へと連れて行かれた。廊下にいた使用人に茶の用意を指示し、アレクの部屋の前で待つこと約5分。焼き菓子やティーポットなどの載った盆が手渡される。 「陛下、失礼いたします」  ノックの後、部屋へと入ると、不機嫌な顔をしたアレクが机に向かいながら書類を確認していた。しかし、ユルゲンの後ろにいる圭の姿を見ると一気に顔が綻ぶ。 「ああ、もう茶の時間か。ケイ、ちゃんと起きれたか?」 「誰かさんのせいで、さっき起きた」  今度は圭の方がムスリとしていると、苦笑しながらアレクが近づいてくる。顔を撫でられるも、仏頂面は崩さない。アレクの指先が圭の頬を擦る。気持ち良いが、顔には出さない。怒っているのだと態度でしっかりと示す。 「アレク、ちゃんとユルの言うこと聞かなきゃダメだよ」 「きちんと聞いて、こうして働いているだろう」  少し呆れたような表情をしながらアレクがソファへと腰を下ろした。圭とユルゲンもソファに座る。ユルゲンが茶の支度をしてくれる間中、アレクは隣に腰かけた圭の顔や頭を撫でていたが、アレクの言葉にユルゲンの額に目に見えて青筋が浮かんだ。 「きちんとしている人は、当然公務を嫌がりなどしませんよね?」 「それとこれとは話が別だ」  薄茶色の液体の注がれたカップを手に取り、アレクは不機嫌面に戻りながら茶を啜る。空いた手で圭の体を撫でさすりながら。  アレクとユルゲンの攻防はティータイム中ずっと続いていた。話の内容が分からない圭を置いてけぼりにして。  しばらくは圭も淹れてもらった茶を飲んだり菓子を食べたりしていたが、あまりにも疎外感があってつまらない。 「ねえねえ、何の話してんの?」  普段は仕事の話には口を挟まないようにしているが、さすがに退屈すぎてつい口に出してしまった。 「来月の公務の話です。陛下が行かないと駄々をこねてばかりいるんですよ」 「何で?」 「ケイに逢えないなど、冗談じゃない」 「え? アレク、ずっとどっか行っちゃうの?」 「ずっとじゃありませんよ。たったの3日間です」 「それだけで?」  アレクに睨まれ、ビクリとする。手にしていたカップを握ったまま動けなくなった。 「ケイは3日も俺に逢えなくて平気なのか?」 「いや、寂しいとは思うけど、だって仕事なんだろ? 仕方ないじゃん」  元の世界に戻っていた間を除き、確かにアレクと何日も離れたことはない。もちろん、これが1週間とか1か月とかいうなら話は変わるが、たかだか3日くらいのことなら我慢できない訳じゃない。 「どっか遠くに行くの?」 「隣のヘルボルナ大陸です」 「へー、シルヴァリアじゃないんだ。良いな~」 「……良いか?」 「え? 良いじゃん。別の国ってことだろ? 楽しそうじゃん」 「至って面白いことなど何にもないぞ?」 「どっか遠くに行けるっていうのが良いんだよ。あーあ、俺も行ってみたいな~」 「ケイも行きたい?」 「そりゃ、行けるなら行きたいに決まってんじゃん」  圭の一言に執務室内の空気が変わる。アレクとユルゲンに凝視され、ビクリとする。 「ユルゲン、ケイの支度はどれくらいかかる」 「急げば、何とか会議までにはギリギリ間に合うかと」 「何をしても急がせろ。金ならいくら使っても構わない」 「かしこまりました」  突然立ち上がった2人に圭は驚いたまま動けなくなる。アレクは颯爽と執務机と戻り、書類の束へと目を通し始める。 「さあ、ケイ様もモタモタしている時間はありません。これから忙しくなりますよ?」 「な、何が?」 「準備に決まっているでしょう! シルヴァリア帝国の皇后陛下による、初の外交です。覚えることはたくさんありますよ! のんきに茶など飲んでる場合ではありません!」 「が、ががが外交~!?!?」  ユルゲンに引きずられるように部屋から出て行く。目を白黒させている圭をよそに、その日から新たなレッスンや勉強などに忙殺される日々が始まった。

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