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第23話

「陽翔たちはもう行った?」 「はい。一時間くらい前に出ました」  陽翔と乃々花は別口で兄の墓参りに行ってくれている。こっちに引っ越してからも毎年欠かさずお参りしてくれて、昨年は一緒に行かないかと誘われたがなんやかやと理由をつけて断った。  陽翔たちは帰りに実家に寄り、その後は店を開ける。今日は僕は一日休みを貰った。 「十年も経ってるし、無理に行ってくれなくてもいいんだけど」 「無理にじゃないだろ」  話をしながら蒼矢は僕を助手席に誘い、ドアを開けてくれる。女子じゃないんだからそんなことしてくれなくてもいいのに。でも心の底では優しくしてくれる蒼矢にどきどきしてしまう。  僕が助手席に座るとドアを閉めるところまでやってくれて、運転席に回った。  シートベルトを締めながら。 「陽翔にとってゆきは従弟であり幼馴染であり友人でもあったわけだから」 「そうですね……」 (それに比べて僕は……実の弟のくせに一年間お墓参りにも行かなかった……)  ちくんと胸が痛んだ。  車が静かに動き出した。  僕らが一緒に墓参りに行くことになったのは数日前のこと。  その日もいつも通り蒼矢はカウンター席に座っていた。ホールに目を配りながら、陽翔と三十日のことを話していた。昨年同様「一緒に行くか」と誘われ「じゃあ行きだけ乗せて貰おうかな」と僕は答えた。それを蒼矢が聞いていた。 「あゆ、俺も行く予定だから一緒に行くか」  それは意外な申し出だった。実は毎年蒼矢が墓参りに来てくれていることは知っている。でも一度も会ったことはないし、家に寄ることもなかった。きっと一人きりで兄と話したいのだろうと思っていた。 「え……でも……」  ちらっと陽翔を見る。先に誘ってくれたのは陽翔だ。陽翔が断ってくれればなんて思った。 「歩さえ良ければいいんじゃないか」  甘かった。それは確かに選択するのは自分だろう。 「それに俺ら店あるから急いで帰らなきゃいけなし、蒼矢だったら帰りも乗せて貰えるだろ。たまには実家でゆっくり叔母さんたちに顔見せておいで。そんで夜は歩の誕生日パーティーするぞー」  本人より盛り上がっている陽翔は置いておいて、少し考えた。 「じゃあ、お言葉に甘えて。蒼矢さんよろしくお願いします」 「了解」  蒼矢の運転する車に乗るのは初めてだった。イケメンは運転も上手いらしい。急ブレーキ急発進などまったくなく右折左折もスムーズで心地が良い。  しかし。 「あーやっぱ渋滞に引っ掛かっちゃったか。ちょっと時間かかるな」 「いいですよ、ゆっくり行きましょう」  

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