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第31話

* *  祈と一頻り話した後また皆のほうに戻って、話をしている間に結構飲んでしまったような気がする。  その結果がこれだ。 「これが俗に言う、二日酔いってヤツかなぁ〜」  初めて酒を飲んで初めて二日酔いを経験してしまった。 「あ、学校行かなきゃ」  のんびりしている場合ではなかった。昨日は平日でもゴールデンウィークの中でもう既に休講が決まっていた。今日の教授からはその連絡は事前になかった。  わっと立ち上がろうとして。 「いたたっ」  やっぱり無理とベッドの中に戻った。 「今日はもうサボろう」 (そう言えば祈はいつ帰ったんだろう)  まったく記憶になかった。記憶にないといえば自分がいつ部屋に戻って来たのかもわからなかった。  しばらくうとうとしていた。  スマホの通知音で目が覚めた。起き上がると少しはまともになったような感じがした。  通知音は祈からのラインだ。 『歩〜具合悪いの〜?』 『二日酔い』 『あ、やっぱり。初二日酔いおめでとー』  祈の笑い声が聞こえるような気がした。 『めでたくないよ。講義サボっちゃった』 『大丈夫。大丈夫。歩の今日の講義全部休講になってた』 『オレもこの後休講だから帰るね』 『お大事に』 『ありがとう』 (ゴールデンウィークに感謝)  僕は思わず合掌してしまった。  スマホで時刻を確認すると十二時を回っている。少し調子よくなってくると腹が空いていることに気づいた。 (昼時か〜風緑は少し忙しい時間かな。主婦さんたちの集まりないといいんだけど)  ベッドから下りてドアを開ける。 「おわぁっ」  目の前に立っている人にぶつかりそうになって慌てて回避。 「歩くん、大丈夫?」 「乃々花さん」  ドアの前に立っていたのはトレイを持った乃々花だった。 「もしかして二日酔い?」 「えっ」  図星過ぎて顔が赤くなる。 「はい。実は。でもなんで……」 「大学あるのに起きてこないから朝起こしにこようとしたら、二日酔いなんじゃないか、寝かせておけばって陽翔が。それでそろそろお腹空くかもと思ってスープ持って来たんだけど……食べられる?」  トレイの上にはスープとパンが載っていた。 「ありがとうございます。丁度何か食べに行こうと思ってました」  乃々花からトレイを受け取った。 「ご迷惑をおかけしました」 「いいのよ〜あれは陽翔が調子に乗って飲ませるから」 (そ、そんなに飲んだ〜?)   昨日の記憶があやふやなことを思い出す。 「実は僕昨日……途中から記憶なくて」 「うん。途中で寝ちゃったから蒼矢くんが部屋まで運んでたわよ」 「えっ」  驚いて身体が硬直してしまった。 (また蒼矢さんに)   そう思うと顔が熱くなってくる。どうにか動揺を悟られないように。 「そうでしたか……それは蒼矢さんに申し訳ないことを……」 「大丈夫じゃない? それと祈くんはお迎えの人が来て帰って行ったわよ」 (お迎えの人……叔父さんだろうか) 「今日は一日私がお店にいるからゆっくり休んでていいわよ」  乃々花のありがたい言葉。 「ありがとうございます」   じゃあねと乃々花はパタパタ階段を下りて行った。  

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