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第38話
晴れて気温は高くなってきていたけれど、ここは高台で少し涼しい風も渡る。木陰や白いパラソルも点在していて見た目にも涼しげな、ガーデン・パーティー会場だ。
「雨だったらどうするんですか?」
と素朴な疑問。
「雨の時は屋根ができる」
「???」
テントのようなものだろうか。全天候対応。金持ちは凄い。
隅のほうで様子を見ていても、着飾った女性や高級そうなスーツを着た男性ばかりだった。
蒼矢は自分の家だからだろうか、ジーンズを穿いてないだけマシのかなりラフな格好ではあるが、イケメンは何を着ていてもキマっているので、狡い。それにいくらラフとはいえ服自体はそれなりに上質の品物なのだろう。
僕はといえば、入学式の為に揃えたスーツを着ていた。恐らく鳥飼がプレゼントしてくれたのだろうという高級そうなスーツはクローゼットの奥に仕舞ったままだ。
(どういう意味でプレゼントされたなんてこと考えたら、とても蒼矢さんの前でなんか着れないよ)
地味なスーツ、ただの地味な大学生の自分。そんな自分が場違い過ぎてそれ以上進めない。蒼矢がどんどんと中程に歩いて行くのをぼんやりと眺めているしかなかった。
(陽ちゃんすごいっこんな中に入って行ったのか〜)
陽翔も僕とは違い背が高くてそこそこイケメンでコミュニケーション力もある。この中に入って行っても見劣りしなさそうだ。
「あゆ」
一旦僕から離れて行ったはずの蒼矢が戻って来る。
「どうした?」
「僕どう見ても場違いだし、ここにいます。蒼矢さんは楽しんできてください」
堅めの口調で言うと、彼は少し考える素振りを見せた。
「いや、別に俺も楽しくはないけど。あゆに美味しいもの食べさせてあげたかっただけだし」
(なに? それ? 僕恋人?)
どきっとしたけど。
(何言ってんの、良くて弟扱いだよ)
自分の思考にがっくりとした。
「あ、じゃあ……ちょっと待ってて」
何を思いついたのだろうか。蒼矢はまた離れて行った。眺めていると彼はまず給仕の男性に声をかけ、トレイを持ちその給仕の男性と一緒にテーブルを回り始めた。しばらくすると二人ともトレイを持って僕の前に現れた。
「はい、これ持って」
「あ、はい」
言われるままにトレイを受け取る。トレイの上には美味しそうな料理が並んでいた。蒼矢は手が空くと給仕の男性からトレイを受け取る。
「悪いけど手隙でいいから飲み物俺の部屋までお願い出来るかな?」
そう彼に指示をした。
「そうだな、オレンジジュースとアイスティーでいいよ」
「承知致しました。あとでピッチャーでお届けします」
恭しく会釈をするとその場を離れて行った。
その一連の流れを見て、やっぱり蒼矢は別世界の人間なのだと感じた。
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