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第51話
「蒼矢さんこそなんでここに?」
誤魔化す為でもあったが単純にそれが不思議でならなかった。
「ああ、あの子だよ」
「あの子?」
「ほら、あゆが誕生日の時に連れて来た友だち」
僕が連れて来た友人はたった一人。
「祈!」
僕ははっとした。
『何かあったらそれを握ってオレのこと呼んでくれっ』
祈がお守りをくれた時に言った言葉通り、僕は心の中で祈の名を叫んだのだ。それがどういう意味を成すのかわからなかったが、藁にも縋る思いだった。
(こういうこと……? なんなのこのお守り)
ポケットの上からそれを撫でた。
「十一時過ぎくらいに陽翔から連絡があって、あゆが帰ってないんだけど一緒にいたりしないか? って」
(陽ちゃん……)
心配をかけてしまっただろうなと思うと胸が痛む。
「大学生の男子を心配する時間ではないけど、何しろあゆだろ。バイトを休む連絡も貰わなかったし、何かあったんじゃないかって」
(そういえば鳥飼さんが唐突に現れたから連絡するの忘れてたっけ)
バイトを休む時には必ず了解を取っている。それ以前に今まで友人と夜遅くまで出かけるようなことすらなかったかも知れない。
(僕ってもしかして寂しいヤツ認識されてる? たぶん蒼矢さんにも)
何だかいたたまれない気持ちになる。
確かに今回は『何か』あったわけだから、その認識も不幸中の幸い的なものかも知れない。
「俺はとりあえず陽翔のところに行った。陽翔には家で待っていて貰って連絡できるところには連絡する、俺が車で探しに行くってことになった。行く前に念の為鳥飼さんにも電話してみたが出なかった。出発しようとしたところで――来たんだよ」
そこまで一気に経緯を話して、ふっと息を吐く。
「俺がそこにいるって知っていたのかな?」
不思議そうな顔をして。
「車の窓を叩かれて開けたら祈くんだった」
『歩が鳥飼に連れて行かれた! 居場所はオレがわかるからっ案内するからっ』
「彼は焦った様子でそう言ったよ。最初は俺も訝しんだけど」
『お願いだからオレを信じてくれっ早くしないと、歩が危ない!』
「どうしてそんなことを知っているのかわからなかったけど。でももしかしてと思ったよ。もしかして、あの子昔のあゆみたいに不思議な力を持ってるのかな?」
蒼矢がじっと僕の顔を覗き込んだ。
「蒼矢さん……知って……」
まさかそのことを蒼矢が知っているとは思わなかった。
「昔ゆきに聞いた。でも内緒だろ? それがあゆを傷つけていたみたいだから。今でもそういう力があるのかわからなかったし……」
「…………」
僕は返答に困った。それを察したのかそれ以上は突っ込んでこなかった。
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