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第54話

 僕らはその後とりあえず飛び散った破片を片付けることにした。用具入れの中に箒と塵取りがあったので危なくない程度に綺麗にした。 「俺たちはどうするか……ちょっと休みたいよな」  ある程度綺麗になった床を見たがここで寝るのはどうなんだ。 「ロフトかぁ……」  蒼矢は視線を上げて呟いた。梯子を途中まで上がって中を覗き込んだ。彼は降りて来ると僕に指で示した。 「上あがってて」 「えっなんで」  僕の言葉には答えずまた部屋の中を物色し始めたので彼の言う通りロフトに上がった。そこは絨毯が敷かれていて、低いカラーボックスやふわふわなローソファーがある、子ども部屋のような雰囲気があった。 「なんか可愛い……ちょっとした秘密基地的な雰囲気」  さっき蒼矢がしたように途中で立ち止まって覗き込んでいると、 「早く上がって〜つっかえてるよ〜」  すぐ真下から笑い混じりの声がした。 「あ! はい! 今すぐ」  僕は慌てて梯子を上がってロフトの床を這いずって移動した。立ち上がると天井に頭をぶつけそうだ。あとから来た蒼矢は手に持っていたものを僕に投げてから梯子を上がり切った。 「あ、毛布」 「いいもの見つけたろ」  やけに自慢げな顔がちょっと可愛い。彼はローソファーに陣取ると絨毯の上にいる僕を手招きした。 「こっちこっち」  隣をぽんぽんと軽く叩く。そこに来いということだろう。僕は犬か猫みたいな格好で移動して彼の隣に座った。  ふぁさ。  僕が受け取った毛布はまた再び蒼矢の手に戻り、そして二人纏めて毛布に(くる)まれた。 (えっえっ近い近いっっ)  僕は慌てて離れようするがぎゅっと肩を抱き寄せられて叶わなかった。 「こうしてたほうが暖かいだろ」 「あーですねー」  大人の蒼矢は平然としていて僕だけが心臓がばくばくだ。 (あたりまえじゃん……僕なんて弟みたいなもんだ。意識しているのは僕だけ……)  それに。 (蒼矢さんはまだ兄ちゃんのことが……)  ずん……と沈んだ気持ちになる。 (何考えてるだろ。僕の気持ちは蒼矢さんに絶対に言わないって決めてるのに。何かを望んではいけないのに) 「ストーブの暖かい空気も上に上がって来てるし、これで夜明けまで持つな」 「ですね……」 「どうした? 眠い?」  僕の沈んだ様子を眠気と思ったのかも知れない。それならその方がいい。 「そうですね……いろいろあって、ちょっと眠いかも」 「じゃあ、少し寝なよ」  「おわっ」  ローソファーのリクライニングをいきなり倒してフラットにする。男二人がゆったり寝るには少しきつそうだけど。 「ははは。くっついていればなんとかなりそうだな」  蒼矢は僕の背に手を回しぎゅっと自分に押しつけた。 (わぁーもうやめてー)  

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