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第64話
* *
翌年四月。
おれは無事K大学芸術学部の学生になった大学は履修の仕方によっては、四年生ともなると講義がほとんどない学生も少なくはない。しかし芸術学部は製作の為に通う者も多い。
蒼矢とは自宅の沿線が同じなので時間を合わせて電車に乗ることもあったし、大学では昼食を共にするなど幸せな日々が続いた。勿論それは傍目には友人としか映らないだろうが。
蒼矢は以前から無料のサイトにイラストをアップしたり公募で賞を取ったりしていて、この頃にはSNSを通じて依頼なども受けていた。イラストレーターの道へと着実に進んでいた。
鳥飼と再び会ったのはこの頃だ。
学食のテラス席で蒼矢、陽翔と一緒に昼食を取っていた時だ。
「蒼矢」
まずは蒼矢の名を呼ぶ。
「鳥飼さん、今日はどうしたんですか?」
「今日は講演会の打ち合わせだ」
鳥飼は在学中に起業したとかで、OBに依る講演会の講演者として呼ばれたそうだ。
そんなことを蒼矢と話してからやっとおれたちに気づく。
「風見……と従弟くんだっけ?」
「こんにちは」
おれと陽翔は同時に挨拶をした。
それから四月から五月にかけて数度会う。
(OBってそんなに何度も来るものなのかなぁ)
漠然とそんなことを思っていた。
何故かいつも蒼矢の居場所がわかっているかのように遭遇する。必ずおれも一緒にいる。
(まぁ……本当はもっと来ていて会わない時もあるのかも知れないけど)
いつも何故かおれを見る目が怖いような気がするのはきっと思い過ごしだろう。
* *
その年人気となったゲームがあった。
「ごめんな、歩。クリスマスプレゼント第一希望の物が手に入らなくて」
「いいよ、兄ちゃん仕方ない、何処も品切れだもん。俺こっちのゲームも欲しかったから。兄ちゃんありがと」
「歩〜」
おれは十歳年の離れた弟が本当に可愛くてできれば望みを叶えてあげたかった。だから歩が一番欲しかったゲームをプレゼントできなかったことが悔しくてならない。
それを年明けに蒼矢に愚痴った。
「あ、じゃあ、鳥飼さんに聞いてみる?」
蒼矢から意外な一言が返ってきた。
「え? なんで、鳥飼さん?」
おれがそう思うのも無理はない。彼については何も知らなかったし、興味もなかった。
「だってそのゲーム、鳥飼さんの会社が作ってるものだろ」
「鳥飼さんて……」
「そうだよ、Bird Entertainmentの社長だよ。言わなかったっけ?」
「言わなかった……と思う」
ちょっと自信がなかった。もしかしたら聞いたのかも知れないがゲームには興味もなかったし、そのゲームの存在自体歩にプレゼントの希望を聞いた時に初めて知ったのだ。その時にはもう既に手に入り難いものとなっていた。
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