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第70話

 唾液が滴る程に口内を蹂躙されても鳥飼を突き放そうとする腕を上げることすらできなかった。それどころか身体の芯に熱は溜まり続ける。口を離されると崩れ落ちそうになる身体は鳥飼に支えられた。 「随分良さそうだな」  ふふっと耳元で満足そうな笑い声がした。 「あ……」 (そんなこと……ない)  唇は戦慄(わなな)いて言葉にならない。  突然すっと身体が宙に浮んだ。鳥飼に抱き上げられたのだ。 「随分軽いな」  ひょろっとした男だが思いの外力があるようだ。隣の部屋まで軽々運ばれてしまう。自分では手足をばたつかせて抵抗しているつもりだが、実際には僅かにしか動かせていない。  隣の部屋は寝室だった。  鳥飼はおれをベッドの上に放り投げると、ベッド脇の洒落たスタンドライトを点けた。淡い光がおれを照らす。  一人暮らしだと言っていたがベッドは何故か無駄に広い。  鳥飼はトレーナーを脱いでシャツのボタンを二、三個外してからベッドに膝を乗せ、おれを覗き込んだ。その瞳には明らかに情欲の色が滲んでいる。  これから何をされるのか。  一目瞭然だった。 「や……っ」  やっとそれだけを発してふるふると首を横に振る。  鳥飼は時間が惜しいとでもいうように、セーター、ロングTシャツ、タンクトップと、三枚一辺に脱がしに掛かった。それらはおれの頭上で両手を捉える枷となった。 「やっぱり綺麗だ……」  溜息のような声が漏れる。 「何もつけてないのにこんなにも白い肌をしているんだ……」  言いながら頬を撫でる。 「見えない部分はもっと白くて綺麗なんだろうっていつも想像していたよ。今はほんのりピンク色で余計に綺麗で……いやらしいね」  その手は頰から滑り下り首を伝って胸までやってきた。 「男は初めてだけど、男もここはこんなふうに立つのか」  ぎゅっと乳首を摘まれた途端「ああっ」と声が漏れてしまう。 「ここ、感じるんだ」  卑猥な笑みを浮かべると、彼はそこに歯を立てた。 「あぁぁんっ」 (こんなの、嫌なのに……っ。蒼くん以外に触れられたくないのに……っ)  脱がされる前からそこは服が擦れるだけでじくじくと熱くなっていたのだ。そこだけじゃない。蒼矢にいつも触れられる場所は何処もかしこももう既に熱を持っていて、スラックスの前も欲望の証で押し上げられいた。  鳥飼の唇が胸から腹へ噛みつかれながら下りて行く。きっと肌には赤い花が散っているだろう。 「ここもキツそうだな」  どれだけ欲情しているのか。  とうとうそれに気づかれてしまい、スラックスの前を寛がされた。そして下着ごと一気に引き抜かれる。どさっとベッドの下に落ちる音がした。 「まだほとんど何もしていないのにすごいことになってるな」  

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