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第71話

 もう限界寸前だった。  おれの昂りは天を向き、たらたらと雫を垂らしている。  自分の気持ちとは裏腹に。  このままだと蒼矢ではない男にいかされることになる。そんなのは絶対嫌だと思った。それならせめて自分の手で。 (触りたいっ)  しかし手は頭上で自分の服に縛られていて身動きが取れない。 「こっちはどうなってるの?」  鳥飼はおれの昂りには触れずにそのもっと奥の窄んだ場所を指先で触れた。おれの表情の変化でも見ようとでも言うように穴が空くほど見つめ、相変わらず下卑た笑いを浮かべている。 「んんっっ」  突然指が二本めり込んできた。  身体に痺れが走った。いきなりそんなことをされては本来ならかなり痛いはず。蒼矢はいつも丁寧に慣らしてくれるのでこんなことは初めてだ。しかし痛覚が鈍くなっているのか痛みはそう感じない。それに、薬のせいかそこは熱くもう開きかけている感覚すらする。 「思ったより……平気そうだな。慣れてるのか」  鳥飼はすぐに指を引き抜いた。  ベッドの上で立膝になった彼がおれからも良く見えた。ガチャガチャとベルトのバックルを外し、ジーンズの前を開くと、もう既にいきり立った昂りがブルンっと飛び出してきた。 「や……っだ」  そんな言葉も虚しく、鳥飼はおれの両腿を押し広げその凶器を宛てがった。その瞬間を前にしておれはぎゅっと目を瞑った。 「ああぁぁぁぁぁっっ」  指とは比べ物にならないくらいの衝撃が走り、その途端おれは欲望を勢いよく放った。 「ずいぶん早いな、いいのかっ」  鳥飼の声も欲に濡れ上擦っている。 「お前の中、熱いっすげぇイイ……っ」  乱暴だった。激しく揺さぶられた。  蒼矢にはいつも優しく愛撫され、ゆっくり愛される。  それなのに、乱暴にされている今も同じだけの快感を感じ、あられもない声を上げる。  おれはそんな自分が悲しくて目尻に涙を溜めたが、次第にそんな思いすらも霧散してまうくらいにその行為に流されていった。  何度揺さぶられ何度欲望を放っただろう。朦朧とした意識の中では、おれを抱いているのが鳥飼ではなく蒼矢へとすり替わっていた。  気がつくとベッドの上に一人寝ていた。ゆっくりと上体を起こすとべとついた身体は綺麗に拭かれ、服もきちんと着せられていた。  薬の効果はどうやら消えたようであの時の異常なまでの熱さはなく、身体が自由に動かせないということもなかった。しかし全身には怠さがまだ残っていた。 「やっと目が覚めたか」  出会った時のような冷たい声が響いた。  顔を向けると開け放たれたドアの前に鳥飼が立っている。リビングの明るさが目に痛い。  おれは何も答えず虚ろな目で彼が近づいて来るのを見ていた。 「いいものを見せてやろう」  鳥飼はスマホの画面をおれに向けた。  最初は上手く焦点が合わず、次第にはっきりおれの目に映ってきたのは。  事後のおれの姿だった。

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