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好きで自販機よりでかいわけじゃない。 4

結局有澤が戻ってくる前に作業を終わらせた橋名は、 色とりどりのリボンを段ボール箱に投げ込み会議室を出た。 一体なんに使うのかは謎だが、その破天荒なやり方とは裏腹に確実に実績を示し 企画部の扱いを格段に上げているキョウカ女史のいうことは無下にはできない。 突然の思い付きでわがままを言い始める彼女に企画部は全体的に振り回され気味ではあるのだが…。 狭い廊下を歩いていると、再び携帯端末が小さく唸った。 迷いながらも画面を見ると、昨晩の相手はよほど自分を気に入ったらしく、早く返事をよこせというような催促だった。 「はあ…」 思わず深いため息が溢れてしまう。 命令してくれるなら誰でもいいわけじゃない、むしろ的外れだと 満たされるどころかなんだか削がれているようにも思えてしまうのだ。 「うわっ!」 返事をどうするか画面と睨めっこしながら廊下を歩いていたせいで、曲がり角から飛び出してきた誰かにぶつかってしまった。 屈強な橋名が倒れることはなかったが、相手を吹っ飛ばすと同時に変な持ち方をしていた段ボール箱が落ちてしまい 廊下にリボンを撒き散らしてしまった。 「わ、す、すみません!」 橋名は慌てて携帯端末をポケットに突っ込み、目の前に倒れている人物に駆け寄った。 スーツ姿の男性は、パラパラとリボンを落としながら顔を上げる。 「いたた…、あぁびっくりしたぁ…」 黒髪の男は、黒く澄んだ瞳で橋名を見上げた。

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