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そんな感じなんだ。 1

心のどこかで運命の人がこの世にいるに違いないと思っている橋名は いつからか、とにかく少しでもキュンとしたら相手のことが気になってしまって 猛烈にアタックし、思ってたのと違う!となれば急激に冷めて離れていってしまうというよくないムーブのせいで 周りからはメンヘラ製造機と揶揄されている。 仕事をこなしている間にも昨日会った相手からメッセージが山のように届いていて 橋名はやっと、仕事が忙しかった、という返事を返せたのだった。 確かにちょっと顔が好みではあったが何度か会っただけで、付き合っているわけでもパートナーになったわけでもないし こちらにはその気はさらさらないのだが相手はどうも違うのかもしれない。 こんな風に熱烈にアピールされ、しこたま構ってもらえて喜ぶSubの方が多いのかもしれないが 橋名は複雑だった。 最近では自分は本当はSubじゃないのではと思うほど、Domに会う度に癒されるどころか疲労ばかり蓄積している気がする。 「おっつはっしー」 「あ…うん、お疲れ」 「お先〜」 有澤は先に帰っていき、橋名は少し残った簡単な仕事を片付け 鞄を持って立ち上がった。 部署には自分だけだったが、会社にはまだちらほら人が残っているようで すれ違う人に挨拶をしながらもエレベーターに向かった。 ボタンを押してぼうっとエレベーターの現在地を眺める。 「お疲れ様です」 後ろから声をかけられ、橋名は頭を下げながら振り返った。 通りすがり際に挨拶をしてくれたのはあの篠田で、橋名は思わず追いかけるように身体をそちらに向けた。 「あ、篠田さん…!」 「んー?」 呼び止めると篠田はゆっくりと振り返り、不思議そうに首を傾けてくる。 「えーとあの……まだ帰らないんすか?」 「うーん。もうちょっとしてから、ですかね」 書類を両手に抱えている篠田は考えるように首を傾けながらも答えてくれた。 フィルターがかかりつつある橋名にとって、なんとなくそのふわっとした雰囲気が素敵な気がして、高速で頭を回転させた。
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