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そんな感じなんだ。 3
大人しくて地味に見える篠田だったが、穏やかな口調といいふらーっとした動作といい
意識してみると可愛いような気がしてきて
橋名は一人で勝手に盛り上がりながらロビーのベンチでそわそわしていた。
こういう勝手に期待して勝手に尽くしてしまうのが良くないのだと薄々気付いてはいるのだが
どうにも自分の欲求を前にすると抑えが効かない。飢えているから尚更かもしれない。
こんな風に待たされているのも悪い気はしないもので。
10分ぐらいと言いつつも15分程経ってようやく篠田は下りて来て
エレベーターから彼が出てくるや否や橋名は立ち上がって駆け寄った。
「ごめんね、待たせちゃって」
「いえ、全然!」
「本当に待ってたんだ。偉い偉い」
篠田は冗談っぽくそういうとちょっとだけ背伸びをして橋名の頭をぽん、と軽く撫でた。
「え……」
「それで、どこにいくの?」
「あ、えと、篠田さんは何食べたいですか…?」
「うーんそうだなぁ……お好み焼き?」
「お…」
やばい好きかも。
ちょろい橋名は、今まで名前を思い出すのにすら苦労していたくせに
その小首を傾げながらの“お好み焼き”の言い方に簡単にやられてしまって
なんとなくほわんとした気持ちになりながらも、じゃあ行きましょう、と歩き出した。
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