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そんな感じなんだ。 4
「なんか、びっくりしたぁ」
「え?」
「急にお誘い」
「ああ、すみません…
考えなしに、今しかない!と思って…それで…」
連れ立って歩きながらも橋名は苦笑した。
「俺たちそんな仲良かったっけーって。」
篠田はこちらを見上げてくるが、それでもあまり嫌そうには見えない。
「今日ちょっと喋って、いいなって思って」
「はは、そうなんだ?」
確か彼は少し年上だったと記憶している。
なんとなく人付き合いが苦手そうなイメージを持たせる印象だったが、もしかしてこんなことには慣れているのだろうか。
それからお好み焼き屋まで雑談をしたが、思っていたより喋る人だなと篠田の事を観察していた。
歩くスピードを彼に合わせたり、
なんとなくフラフラ歩いているように見えて恐ろしいので車道側を自分が変わったりした。
お好み焼き屋について対面に座り、適当に注文した。
「ここ初めてきた。俺全然店とか知らないから」
そんなことを言いながら、わー、と篠田は店内を眺めて
雰囲気あるね、とか、鉄板だ!などと謎の感想をこぼしている。
別になんでもない普通の昔ながらのお好み焼き屋ではあるのだが
彼はどこか嬉しそうにしていて、それを見て橋名も嬉しく感じた。
「篠田さんって、一人暮らしですか?」
「うん。そーだよぉ。
でも俺料理とかできないから、コンビニ弁当とかーそんなんばっか」
「こんびに…」
「まーみんな結構そんなもんじゃない?」
篠田はそう言いながら水の入ったコップを手に取った。
細くて白い指。そんなところばかりつい目が行ってしまって橋名は苦笑した。
「え?なになに、その笑顔は
俺は彼女に作ってもらってるもんねーみたいな?」
「違いますよ!いませんしそんなの。自分でやってます」
「えーー橋名くん料理できるんだ?」
「できるっていうか、別に普通ですよ」
「俺にとっては普通じゃないしい」
篠田は口を尖らせていて、素直に愛くるしいと思ってしまう。
年上の同性に可愛いとかいう感情を抱くのは今までになかったことで、なんだか新鮮な感じもした。
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