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そんな感じなんだ。 5

とりあえず頼んだビールが運ばれてきて鉄板越しに、お疲れ様的な乾杯をしてから口をつける。 自分から誘ってしまったとはいえ緊張はしていたので、橋名は一気に半分くらい飲み干してしまった。 「篠田さんって結構楽しい人なんですね」 「あーそれよく言われるんだぁ。 意外、とか。コミュ障かと思った、とか? まあ普段喋る必要ないから喋ってないだけなんだけどねぇ」 篠田はそう言いながら、どこか面白そうに笑った。 やがてお好み焼きの具材が入ったボウルが運ばれてくると彼はきょとんとしてボウルを見下ろしている。 「え、なにこれ自分で焼く系?」 「系?って…」 そのギャルのような言い草に橋名が笑ってしまうと、篠田はボウルを両手に首を傾けている。 橋名が慣れた手つきでボウルの中の具材を混ぜ合わせ始めると、彼もそれに続いたが ボウルの持ち方も匙の持ち方も幼稚園児のように危なっかしくて 本当に料理ができないんだな、と妙に納得するのであった。 「これでいい?あってる?」 「もうちょっとちゃんと下から混ぜないと… あとこう持った方が、いいかと…」 「こう?」 自分で食べたいと言っていた割に苦戦している篠田に、この人こんな感じなのか、と橋名はますます好き度が上がってしまっていた。 それになんだか尽くしたいような欲求が溢れてきてしまって、つい口を挟んでしまう。 橋名は自分の持っていたボウルの中身を鉄板の上に流し、綺麗に形を整えた。
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