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そんな感じなんだ。 6
「わーすごい。上手だねえ」
篠田はおばあちゃんのように感心している。
会社での篠田は、経理部という部署も相まって割と仕事が出来るような印象ではあったのだが
たかだか具材を混ぜるだけの事に苦戦している姿には可愛らしくもどこかやきもきしてしまう。
やがて彼はこちらをじっと見つめてくる。
「…俺のもやってほしい」
「あ…じゃあはい」
橋名は彼からボウルを受け取り、確実に自分が調子に乗っている事を自覚しながら具材を手早く混ぜて
先陣の隣に流した。
「ありがとう」
そんな風に言われると尚のこと。
ジュウジュウと音を立てながら焼きあがっているお好み焼きを眺めていたかと思ったら
彼はこちらをまたじっと見てくる。
橋名はなんと声をかけていいかわからず、首を傾けると篠田はにこっと笑って
「はんぶんこしよーね?」
などというもので。
「か……」
かわいすぎんか、と言いかけて橋名は思わず片手で口を塞いだ。
「か?」
「いや、あの、こっちひっくり返しますね…」
橋名は慌てて誤魔化しながらも、ヘラを両手に先陣を手早くひっくり返した。
おおすごい上手、と篠田はまた褒めてくれる。
結局橋名は焼きあがったお好み焼きを綺麗に切り分けて、皿に取り分け箸まで添えて彼に渡すのだった。
あつい、と言いながらも篠田は満足そうに橋名が焼いたお好み焼きを食していて
それを眺めているとなんとなく幸せな気持ちになってしまうのであった。
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