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ちゃんと捕まえとけ? 3

「大物だわ!」 有澤はどこか感心したように叫んでいて、橋名は複雑になってしまい苦笑した。 「それマジで大事にした方がいい出会いなんじゃね。」 「え?」 「お前のことカワイイなんて言う人間滅多におらんぞ 下手すると今後一生会えんかもしれんからちゃんと捕まえとけ?」 有澤の言葉にはまたもや、確かに、と思わざるを得なかった。 それはそうとこんな話を聞いて、そんな事を言ってくれる彼が急に大変ありがたい存在な気がして 再びカップ麺を啜りはじめるその姿を見つめてしまう。 「…お前ってめっちゃいい友達じゃん」 「は?今頃?」 彼は呆れたように片眉を上げて苦笑している。 思えば自分の悩みなど、ニュートラルである彼にはきっと分かり辛い事なのだろうに ずっと話を聞いてくれるのは有難いことである。 そんな彼がそう言うのだから本当にちゃんと捕まえておいた方がいいのかもしれない。 橋名も、篠田のような人は今後現れないような気がしていて まだ彼のことをよく知らないのに、勝手に運命だと思っているのであった。 そうしていると、休憩室の前を通っていく人影に目がいく。 ガラスのドアの向こうのその人影は、まさに噂をしていた篠田であった。 「あ」 橋名は思わず立ち上がる。 「何?どうしたん」 「ちょ、ちょっと用事」 「え?おい!」 有澤が止める声を無視して、橋名は休憩室を飛び出し 彼の後を追いかけた。

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