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何かしたくて 1

色々な事があった休日が終了して、沙凪はため息 をつきながら仕事をこなしていた。 今日はいつも以上に仕事が捗らず、ついついトイレに逃げてきては鏡の中の自分を見つめてしまう。 一回ならいいかと思ってしまった自分に、ほれ見たことか、とまた別の自分が嘲笑ってくる。 「本当に…へんなの……」 あの日は橋名にめちゃくちゃに迫られてしまい、逃げ帰るようにしてきてしまったが 橋名は変わらずメッセージを送ってきてくれていて、 好かれるように頑張るとか、努力するとか、そんな事をする必要など全くない人材なのにと思ってしまう。 誰かのためにこんなに一生懸命になれるのは普通に人として素晴らしいはずで よりにもよって自分なんかにその能力を使うことはないだろうに。 沙凪は自分の軽率さが招いた結果だと自己嫌悪したりもするのだった。 「そりゃ…橋名くんは可愛いけどさ…」 付き合えたら幸せなんだろうな。 恋人じゃなくてもせめてパートナーとかで側にいられたら。 そんな事を考えてしまって、苦笑する。 「いやいや…ばかばか…何考えてんの…」 沙凪はため息を零しながら、鏡の向こうの自分に 自重しなさい、と命令しておいた。 きっとそのうち飽きてくれるだろうし、そもそも自分のようなダメ人間は勝手に幻滅されて去っていかれるのも時間の問題な気がした。 じゃあいっか、と沙凪はまた最悪な性格の落とし所にハマって あんなに可愛い子が好き好き言ってくれてるんだから、ちょっとぐらい楽しんでもいいんじゃ?という快楽主義に飲み込まれてしまいそうになるのだった。
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