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何かしたくて 5
「……橋名くーん」
仕事を片付け終えてPCの電源を落としている最中、聞こえてきた声に橋名は飛び上がるように椅子から立ち上がった。
企画部の部屋の入り口に沙凪が立っていて、様子を伺うようにドアの隙間から顔を覗かせている。
「サナギさん…!」
橋名は思わず笑顔になってしまいながらもそちらへと走っていく。
「残業してたの?」
「はい、でももう終わりました」
「そっか。これご馳走様でした
今日もひじょーに、美味しかったです」
沙凪は綺麗に包み直された弁当箱を差し出してきて、
それを受け取りながらも、今日も自分が作った料理が彼の身体の中に入っていったと思うと心底幸せを感じてしまうのであった。
「サナギさん、今から帰るんですか?」
「うん。まあ」
「あの、じゃあ一緒に、帰っていいですか?」
「え?あー、うん、じゃあ、はい…」
彼が頷くや否や、すぐ準備してきます!、と橋名は自分の机に戻り
宣言通り帰宅の準備を数秒で終わらせると彼の元へと向かった。
ここ数日残業続きでなかなか彼を誘い出せなかったので
今日はチャンスなのである。
部屋を出ると、沙凪は廊下の壁を背に待っていて
若干息を切らせながら出てきた橋名を見上げると苦笑した。
「本当にすぐだったねーえらいぞぉ橋名くん」
冗談っぽく沙凪は褒めてくれて、もっと褒められたい、などと思ってしまう橋名であった。
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