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何かしたくて 6

沙凪と一緒に会社を出て、夕飯を食べに行こうという話になった。 2人で並んで歩いていると、なんだかこれってもう付き合っているのでは?などと錯覚してしまう。 相変わらずふらふらと危なっかしく歩いている彼の手を取れたらとか 肩を引き寄せられたら、とかそんなことを考えてしまって それが合法的に出来ないのが今の現状なのだけれど。 「最近大変そうだねぇ企画部は」 キョウカ姫のおてんばぶりはもはや会社の名物となっている程だった。 彼の元へも噂がいっているらしく、橋名は苦笑した。 「まあ、実績があるので、キョウカ様は…」 「あはは本当にすごいらしいねえ、彼女」 彼女こそ本当にふわふわしていそうだが、実際例の内職させられたリボンも プレゼンで華やかさを一際ぶち上げていて、何故か先方にも大層喜んで貰えていて 本当に計算なのか素の天才なのかは謎であるのだが。 「今も今度のイベントでのブースの壁を全部ピンクにしたいとか言い出して… 広報とかとも色々揉めてます」 「あー予算もっとほしい〜って言ってたやつはそれかぁ 部長キレてたもんなぁ」 彼女は知らない間にも他部署をも巻き込んでいるらしく それの回収の仕事も増えている気がしてならないが、 愉快そうに笑っている沙凪の横顔には日々のそんな疲れが癒されていくようだった。 「よく頑張ってるね、橋名くんは」 彼に背中を撫でられて、橋名はなんともいえない多幸感に支配される。 「そんな大変な中、俺のお弁当まで作ってくれてるんだもんね?」 Subといえど誰にでも傅きたいわけじゃない。 橋名がそうしたいのは今この世でたった1人だった。 「…俺…、サナギさんのために何かしたくて、堪らないんです…」 「えぇ?結構危ないこと言ってない?それ」 思わず足を止めると、彼は少し先を行って振り返ってくる。
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