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片付いてる 3

来る途中でコンビニに寄って買ってきた酒などをその机の上に広げながら、小さな机を挟んで向かい合って座った。 机が小さいせいかうどん屋よりも近くに彼を感じて 余計にドキドキしながらも橋名は渡された缶ビールを握り締めた。 「なんか、橋名くんがここにいるの変なかんじだ」 沙凪はそう言って肩を竦めながら、缶ビールに口を付けている。 橋名も彼の家にお邪魔していることがなんとなくまだ実感がなくて どういう顔をしていいか分からなかった。 とはいえ、どこか彼の香りがする部屋は妙にそわそわしてしまうのだった。 「サナギさん…は、恋人とかパートナー、どのくらいいないんですか…?」 「んー?そうだなぁ。ちゃんと付き合ったって感じの人は… 5年、いや6年くらいかなぁ…? あとはまぁ…ね。てきとうかな…」 彼の言葉に当然のことではあるのだが、居たんだ、というような気持ちにはなってしまう。 「どんな人、だったんですか?」 「気になる?」 「そりゃ、まあ」 「んふふ。そっかぁ」 沙凪は机の上に頬杖をついて何故かニヤニヤと笑っている。 なんでそんな顔をするのか分からなかったが橋名は聞いちゃまずい事だったのかと眉根を寄せた。 「どんな人、かぁ…、うーん、そうだなぁ… 一生懸命さんでいい子だったけどね。 ちょっとだけ、結婚出来たりするかなぁ〜って思ったりもしたけど やっぱ俺だと…よくなかったみたい。」 そう言いながら沙凪は横を向いて、締め切られたカーテンを見つめていた。 彼がそんな風に考えていた相手がいるということは、些か悲しくも感じるのだが そんなことよりもその寂しそうな横顔の方が辛くて。 「…すみません……」 橋名は聞かない方が良かったらしいと後悔しながら謝った。 「んーん。全然ヘーキ。って言ったら彼女に失礼かもだけど もう結構前の話だし」 沙凪はいつものように間延びした声を出しながらコンビニの袋をガサガサと漁って スナック菓子を取り出した。

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