53 / 145
片付いてる 4
「橋名くんは?モテてるから困ってなさそうなのに」
「そんなことないですよ。
うーん、付き合ってた人は…………」
橋名は思い出そうとして記憶を漁ったが、付き合った記憶があまり見つからなかった。
「…………多分3日くらいで、別れたような…」
「うわぁ…遊び人だぁ」
「違いますよ!
なんていうかそもそも、好きになれる人がいなかったんですよ。
向こうから言われて付き合ってみたもののやっぱ違うなってなっちゃって…」
「そうなの?」
「はい…だから、サナギさんがほとんど初めてっていうか…」
向こうから告白をされてそのような雰囲気になったことは数あれど
結局は無理になってフッてしまってばかりだった。
ゆえに、今目の前でスナック菓子の袋を開けられずにいつまでも弄っている彼の事がこんなに好きなのが不思議なくらいで。
「それに俺は…受け入れてもらえないことの方が多いというか…」
「…え?なんで?」
「…あんま可愛くないからじゃないですかね…デカいし…
求められることも、なんというか…ハードな感じだったり…」
好きでそうなったわけではない。性質も体格も何もかも。
橋名は自分で言ってて少し悲しくなりながらも苦笑した。
調教しがいがあるだとか言われても自分は何故だかピンとこないし。
「ふうん…」
沙凪は永遠に袋を弄りながらも、どこか不思議そうに声をこぼした。
「みんな見る目ないんだねー」
「え?」
「橋名くんはめっちゃい」
彼の言葉はパァン、という小さな破裂音に掻き消され
橋名は思わず身構えてしまった。
ともだちにシェアしよう!

