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橋名くんになら 2
至って普通の風呂場だったが、いつも彼が使っているのかと思うと無駄にドキドキしてしまって
あんまり色々と見ないようにした。
そういえば今日弁当作れなかったなぁと若干後悔しながらも
部屋に戻ると、相変わらずシャツ一枚で沙凪は床に座ってぼうっとしているようだった。
「あの…ありがとうございました」
「うん。本当に何もなくてごめんね
人が来る事想定してなかったから…」
沙凪はそう言いながらも、冷蔵庫まで這っていく。
小さな冷蔵庫はほとんど中身が入っていないようだった。
「お、お茶がかろうじてあるぞぉ」
彼はそう言いながらペットボトルの麦茶を取り出して、
コップあったかなぁ…、と苦笑しながらキッチンの戸棚を開けている。
「サナギさん…ここにどれぐらい住んでるんですか…」
「2年ぐらい?」
結構な年数だと思うが、引越したてのような勝手の悪さに橋名は苦笑する。
本当に一体どうやって生活しているというのだろう。
彼はコップを見つけられたのか麦茶を注いでこちらに持ってきた。
「はい。俺もシャワー浴びてくるね」
コップを渡され、一人にされてしまった橋名は
仕方なく床に座って大人しく麦茶を飲んでいることにした。
朝食でも作りたかったが、冷蔵庫のあの空っぽ加減と調理器具の皆無さには太刀打ちできそうにない。
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