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橋名くんになら 7
好き、ってなんなんだろう。
欲望が満たされなければ体調にも異常を来たす性質を持ちながら
自分に忠実にいればいるほど、大切であればあるほど傷付けてしまって。
相手をどうにか傷付けないように立ち回ることが、好き、なのであれば。
どういう覚悟をすればいいんだろう。
自分の首を両手で掴んで、そっと目を閉じた。
瞼の裏側に橋名を想像して、小さく微笑む。
「橋名くんになら……」
彼が泣きながら、好きだと言って、首を絞めてきたら。
きっと。
沙凪は自分の最悪の感情にすぐさま妄想を打ち消し、さっさと布団に潜り込み目を閉じることにした。
自分はやっぱり、彼といる資格なんてないのかもしれない。
ただただ一生懸命だった。
相手が望むように、先読みして、
思いを汲んで、先回りして、
歩きやすいように、危険がないように。
守れるように、してきたはずだった。
だけど、どんなに追いかけても
どんなに尽くしても満足してもらえない。
不満はない、充分で、だけど不安だから、怖いから。
そんな風に求められるから。
どれだけでも削ってあげたかったけど。
確かめたい。
永遠が欲しい。
そんなもの別に、くれてやっても良かったけど。
人として、さすがにダメじゃない?くらいの僅かなもので
本当はどこか疲れていただけなのかもしれない。
一生懸命愛してるけど
精一杯やってるけど
完璧でいようとはしてるんだけど
まだ足りない、まだ欲しいという。
Subとかいう生き物を愛することは、
奈落に宝石を落とし続けているみたい。
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