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褒められたい 1
沙凪のことを考えていたいのに、普通に激務がそれを許さなくて、
それでも橋名はどうにか弁当をこさえ彼に渡しに行くような日が続いていた。
彼との関係性は相変わらず平行線で、それでも彼の為に動けるだけで充分だと思っていたはずなのに
何故か妙にやきもきしてしまう。
激務で物理的に疲弊するほどにそれは顕著だった。
あんまりちゃんと休めていないような日々が続いて、それでも一時の癒しを求めて沙凪に弁当を届けに行く。
だけどある日のことだった。
「…橋名くん、あんまり無理しないでね?
お弁当も…そんなに毎日じゃなくても俺大丈夫だよ?」
沙凪はいつものように微笑んで、そんな風に言った。
疲れも相まってか、橋名は呆然となってその笑顔をいつまでも見つめている他なかった。
気が付けば彼の背中が遠く廊下の向こうに消えていて、橋名は心底震えてしまう。
そんなに毎日じゃなくても、って。
ただそれだけのことに信じられないほどショックを受けている自分がいた。
迷惑だったのだろうか。今までだってずっと。
自分の何が悪かったのか、彼を怒らせてしまったのか。
そんなことを一生考え続け、明確な答えも一生出はしなかった。
必要とされていないのかもしれない。
その言葉が身体を蝕んでいくようだった。
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