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褒められたい 3
イベント会場でも彼女の自由な振る舞いをフォローしなければならないのに
橋名はいつもよりも回らない頭で必死に走り回って
ようやく終わって帰路に着く頃にはヘトヘトだった。
体力には自信がある方だと思っていたが、心に引っかかるものがあるお陰で
消耗が激しいのかもしれない。
トボトボと背中を丸めて、足取り重く帰路につき
なにもする気が起きずに泥のように眠った。
翌日、セットしておいたアラームで無理矢理起こされる。
弁当を作る、それだけの原動力による早めの起床設定だったが
橋名は身体があまりにもしんどすぎて暫く動けなかった。
それでもどうにか気力だけでベッドから這い出て、キッチンへと向かった。
冷蔵庫を開けて、なにを作ろうかと考える。
“Subはそんなことしなくて良い。ただ黙って命令を聞けば良い”
不意に脳裏に再生された言葉に、思わず手が止まる。
“そんなに毎日じゃなくても…”
余計なことを考えるなとか、いつも受け身でいればいいとか。
それができないから自分には届かないのだろうか?
橋名は急激に虚しさに襲われて、冷蔵庫のドアを掴んだまま止まっていくような心に翻弄されていた。
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