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褒められたい 4
サナギさんに褒められたい。
不意に頭の中に浮かんだ言葉に、視界がじわりと滲んだ。
あの人に頭を撫でてもらって、
よくがんばったねって言ってもらえたなら、どんなにか。
今までいろんな人間にそれなりに褒められてきたはずだが
何故だか彼に褒められると、意味がわからないくらいホッとして
彼に頭を撫でられると、それ以外何も要らないような気にさえなってしまうのだ。
だけれどそんな彼に、
不要だと、邪魔だと思われていたのだとしたら自分は
どうしていけばいいのだろう。
「サナギさん……」
胸が苦しくて、しんどい。
こんなことは今までにだってたくさんあったのに。
「……っ、サナギさん…」
その名前を呼ぶ度に、どんどんと。
どうしようもない飢えに襲われる。
傲慢にも、自分だけならいいのになどと考えてしまう。
彼が褒めるのも、頭を撫でるのも、微笑みかけるのも、
自分だけならいいのに。と。
そうやって必死に動くことが、もしかすると逆効果なのかもしれなくて。
だったらどうすればいいのだろう。
どうしたら彼の側にいられるのだろう。
自分は彼の理想ではないのかもしれない。
ウザがられているのかも。
嫌われて、しまったかも。
そう思うと、急に怖くなって橋名は崩れるように床に座り込んで震えるのだった。
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