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追いかけたい 2
不審者の如く廊下をウロウロして、外の空気でも吸おうと非常階段に続くドアを開けた。
人1人分しか通れそうにない狭苦しい外階段に出ると、
手すりを掴んで深いため息と共に外の景色を眺めた。
同じようなビルが並んでいるだけのつまらない景色だったが、その中身よりは幾分かマシだ。
「篠田」
ぼうっとしていると、不意に上から声が降ってきて
沙凪はそちらに顔を向けた。
上の階から降りてきたらしいスーツ姿の男が、こちらを見下ろしていた。
黒髪を綺麗に撫で付け、上等そうなスーツにいかにも仕事が出来そうな雰囲気を漂わせた男に
最悪、と思いながらも沙凪はまた元の位置に顔を戻した。
「ゆきくん……なんでいんの?」
「お前こそまだいたのか」
「別にいいでしょ。結構好きな職場なの」
幼馴染である彼は本社の人間で、恐らく普段は自分達に偉そうにしている上の階の住民たちからひとしきりペコペコされて来たのだろう。
それで嫌味を言いに来たのなら面白くなさすぎて、口を尖らせていると彼はこちらまで階段を降りて来たが2段くらい上のところで立ち止まった。
「何か用?」
「またトラブってないだろうな」
沙凪は彼を横目に睨んで、別に同じ所に立っていても見下ろせるくせに
その2段上の所にわざわざ居る彼の態度には呆れてしまう。
「…自分がうまくいってるからって自慢しに来たんだ」
思わず卑屈に返してしまうと、彼は肩を竦め片手をこちらに差し出した。
「まぁな。来月子ども産まれる」
「何その手」
「出産祝い」
「はぁ?誰に言ってんの?」
沙凪がようやく彼に身体を向けると、彼はどこか面白そうに笑って腕を組んだ。
その余裕綽々の態度に、腹を立てる気も失せて、掴んでいた手すりを握りしめた。
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