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追いかけたい 5
どこか必死な眼には、彼もまた許されたかったのかもしれないと感じてしまう。
「…俺は本当に怒ってないよ。
ゆきくんが幸せだったら嬉しいし…それで良かったって本当に思う」
沙凪は彼の頬に触れて、その整っている顔を少し抓ってやった。
「助けてくれてありがとう…だよ?」
思えばこうやってちゃんと話したのは久々だったのかもしれない。
良い友達だったのに、やっぱりそれを壊したのも自分だった。
「……篠田…お前はやっぱり…」
彼は何か言いかけたが、ガチャリと開いたドアによって遮られてしまった。
2人は同時にそちらを見ると、ドアを潜るように顔を出した橋名と目があった。
「……サナギ…さん…?」
橋名は2人の状態を呆然と見ながら声を零していて沙凪は慌てて彼から手を離した。
「は、橋名くん…」
「あの…ご、ごめんなさい……」
橋名はどこか泣きそうに目を細めて、再びドアを潜って走り去ってしまった。
「っ…まって…!」
絶対に変な誤解をされたと思うと居た堪れなくなって、沙凪は反射的にドアに走った。
「あ…おい…」
彼が何か言ったが、沙凪は聞こえずにただ橋名を追いかけるのだった。
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