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追いかけたい 8
ああ、バカみたいだ。
結局自分はいつも遅いんだ。
取り返しが付かないところまで来て、もうどうしようもないのに気付いてしまって。
どうすることもできなくて、ただ絶望するしかない。
「…お…俺、本当だめだなぁ…!
い…いい子ぶってさ…、こんな時まで橋名くんに嫌われたくないとか思ってる…
もっと突き放して…、嫌われるように振る舞ってあげなきゃ…駄目だったよね…!」
「……何を言ってるんですか…?」
「ごめん…橋名くん…、俺はずっと自分に嘘付いてるんだよ…
俺は……さ…Subと、向き合うのが…、好きな人と…向き合うのが怖いんだ……」
ゆきくんは本当に優秀なDomだと思う。
人の気持ちを見抜いて、いつも先回りしている。
俺は苦手だ。
だから酷く劣っている。
自分の気持ちだってこんなになるまで気付かないんだから。
沙凪は泣きながらドアに背を向けた。
「…俺は…恋愛どころか…人と向き合う資格なんてないんだ…
君を…振り回して、傷付けて…ほ…本当にごめん…ね…」
自分はやっぱり人を好きになってはいけなくて、こんな風にめちゃくちゃに傷付ける事しかできなくて。
きっと今までも全部自分の所為だったんだろう。
「ありがとう橋名くん…
今までの橋名くんの気持ち、全部全部嬉しかったよ…」
沙凪は乱雑に涙を拭って、一度深く深呼吸して歩き出すことにした。
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