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追いかけたい 10
「俺はサナギさんに傷付けられてなんかいない…っ!
サナギさんはすごく俺を大事にしようとしてくれている…
今だって、嫌なら、命令すればいいのに…どうしてそうしないんですか!?」
「それ、は……」
橋名の濡れている瞳を見ていると、どうしたらいいのかわからなくなる。
「傷付いているのは…サナギさんなんじゃないんですか…っ…!?」
橋名は沙凪の胸に額をつけるようにしてボロボロと泣き始めた。
そんな風に子どもみたいに泣いている彼に沙凪は困惑しながらも、胸の内側がザワザワと熱くなってしまう。
すごく怖くて逃げ出したいのに、自分なんかの為に泣いてくれている彼を置いて行ってはいけない気がして。
「俺はこんな風にサナギさんに気を遣ってもらって…困らせたいわけじゃないんです…っ
本当は…俺が…あ…あなたを追いかけたいよ…、怖いのなら俺が手を引いて歩きたい…っ
あなたのために考えたい…あなたのために、俺にできることならなんでもしたいんだ…っ」
縋るように泣きじゃくられて、沙凪はそわそわと彼の頭に触れた。
震える大きな身体は、守ってあげなきゃいけないはずなのに。
「ひ…必要と…、されたい…っ…
あなたを守りたいよ……サナギさん……」
どうしてそんなに真っ直ぐに、俺なんかの為に泣くの?
聞きたいのに声が出なくて、涙があふれてしまって、ただ彼の頭を撫でていることしか出来なかった。
怯えて、逃げようとして、そんな風に彼が泣いてくれることで守ってもらってる気さえする。
それは多分、Domとして最低なのだと思う。
「俺は……っ、こんな俺が…嫌だ……っ」
そんな事を、言わせていいわけがないのに。
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