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個人的な話 3

「俺は篠田と高校が一緒で…友達というか。 まぁ俺が一方的に気に入ってあいつの事追っかけ回してただけなんだけど」 彼の言葉には何も言えなくて俯いていることしか出来なかった。 「あいつが持ってるもんとかやってる事ってなんか面白そうに見えてさ。 俺はなんでも真似したんだよね。 同じ大学入って同じ会社に移って、で、あいつの女を寝とった」 「え……」 その言葉に橋名は怖々と顔を上げた。 電子タバコを持つ左手の薬指には、銀色に輝く指輪があった。 「だから、君が思ってるような関係じゃないと思うよ?」 にこ、と彼は微笑んでいてそれは安心していいのかなんなのか複雑に思ってしまう。 「変なやつで苦労するでしょ。 人を不安にさせる行動ばっかり取るし。 俺にも、幸せになってくれたら嬉しい〜だって。どこまで本気なのか…ただのバカなのか…」 橋名はなんだか全身が震えるような感覚がして、頭が真っ白な中でもどうにか言葉を紡がなければと必死になっていた。 「…さ、なぎさんは…バカじゃないです……」 震える声でどうにか言葉を絞り出す。 「きっと…サナギさんは本気でそう思ってる… 例え自分の望んでいない事だとしても…相手の為に合わせようとする…っそんな凄く優しい人なんです…!」

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