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どうしたいか 10
「お、れも……すき…っ」
沙凪の掠れた声に思わず目を見開いてしまう。
彼の瞳から涙が一筋溢れて、ぎゅう、と絡めた指に力を込められる。
「橋名くんが…好き……」
「サナギさん…」
夢なのかもしれないと思う程に橋名は胸がいっぱいになって、彼の唇に深く口付ける。
眼鏡がかちかちと当たっていたけれど、そんなのを気にしている余裕もないくらいだ。
「ん…、ッ…、う…ぁ」
彼に唇を押し付けていると、あっという間に昇り詰めてしまった。
肩で息をしながらも、唇をくっつけたまま余韻に浸ってしまう。
好きな人に、好きと言ってもらっただけなのに。
意識が飛びそうなくらい嬉しくて、幸せだった。
ようやく唇を離すと、沙凪は目を細めながらも橋名の頬を撫でてくれた。
「…サナギさんのこと…絶対幸せにします……」
彼を見下ろしながら勝手に気持ちが飛び出していく。
沙凪は微笑みながらも頷いてくれた。
彼はDom失格だなんて言っているけど、
橋名にとってはやっぱり運命の人だと思ってしまうのだ。
追いかけて、捕まえて、
どうしようもなく抱きしめて好きと伝えたくなってしまう。
それをこんなにも、許してくれる人だから。
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