108 / 145
ちゃんと守らせて 2
橋名は彼とどんな話をしていたのだろうか。
思い出すとまたモヤモヤしてしまうけど、橋名はそわそわと沙凪の髪に触れてくる。
「市原常務は…、友達って言ってたけど
サナギさんのこと大事に思ってるみたいだった…」
彼の少し泣きそうな顔を見上げながら、沙凪は小さく息を吐いた。
「……ゆきくんは俺のこと助けてくれたんだ…
俺が、前付き合ってた子を追い詰めちゃって…、
その子は…お前を殺して私も死ぬって言って…
ゆきくんが来なかったら本当にそうなってたかもね」
「……どうしてそんなこと…」
橋名は怖々と尋ねてきて、沙凪は当時のことを思い出してしまい
んー、と口を歪めた。
「…沙凪といると苦しいって言われちゃった…。
どこかに行っちゃいそうで、怖くて不安だって。
自分なりにちゃんと向き合おうとはしてたけど…やっぱり俺は逃げてたのかなぁ…分かんないけど…
でも…ゆきくんがいいならそうすればって言ったら、凄く怒ってさ…」
沙凪は起き上がって、両手でぐにぐにと自分の顔をいじくり、何故か泣きそうな顔をしている橋名に微笑んだ。
「…ゆきくんは責任感じてるんだと思う。
その子が本当はどうしたかったのか、どう思ってたのかは分かんないよ。
でも、俺が追い詰めた事には間違いない…
だからゆきくんと幸せになったのならよかったって思うし…
ゆきくんには色々申し訳なかったなーって思うよ」
彼が橋名に何を言ったのかは分からないけど、きっと嘘は言っていないだろう。
彼は真っ当な人間で、ちゃんとしたDomで、
ケアしろと怒られたのも100%自分が悪い事だ。
沙凪は結局また自信がなくなるけど、大切にしてくれようとする橋名の気持ちも受け入れたくて
どうすればいいのかわからなくなりながらも、どうにか笑顔を取り繕っていた。
ともだちにシェアしよう!

