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世間話 4

「ゆきくんも無理しないで。 仕事もほどほどにしなさいね」 「どの立場で言ってるんすか…」 彼はため息をつきながら、だけどどこか嬉しそうにしていた。 自分も思わずくすくす笑ってしまうと、 急に視界が暗くなって何かに身体が包まれるような感覚が襲ってくる。 「あっ常務!お疲れ様です!」 声が降ってきて、沙凪は視界を塞ぐ何かを退けながら上を見上げた。 橋名が沙凪を後ろからホールドして、尚且つちょっと持ち上げて由紀から遠ざけようとしている。 「お疲れ様…」 「何してるんですか?何話してたんですか?」 彼は眉を下げながらも由紀に詰め寄ろうとしていて沙凪は、どうどう、と彼の胸を押した。 「ちょっと世間話してただけだって」 「…世間話?」 「大丈夫だから。ほら行こ、じゃあね!常務!」 沙凪は橋名の背中を押して廊下を歩き出すのだった。

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