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デザート 1
ランチを邪魔されて、恐らく空腹状態でこんな時間まで働かされていただろうに
橋名はお行儀良く牛丼を食していて、見た目とは裏腹に彼の所作はどこか上品で丁寧で
さぞかしご両親の教育が素晴らしかったのだろうという事が伺えてしまう。
背が高いだけじゃなくてちゃんとしっかり体格も良くて、いつも身なりも清潔できちんとしているし
彼の作る弁当も過ごしている部屋も、その真面目さと几帳面さが伺えて沙凪は頭が上がらない思いをいつも抱いてしまう。
それなのに彼はあんまり自分に自信がないらしく、橋名くんは全然分かってないなーと少々呆れてもいる。
今まで彼は恋愛やパートナーに関しても上手くいっていなかったようなので、その所為で何かコンプレックスがあるのかもしれないけど。
「…サナギさん眼鏡どうしたんですか?」
「あー。今コンタクトにしてるの。
あの眼鏡頑張って使ってたんだけど…この…かけるとこ?が折れちゃってさ…」
以前橋名に歪まされた眼鏡は、結局変えるのも面倒くさくてどうにか誤魔化しながら使っていたわけだが
ついに今日お亡くなりになってしまったのだ。
そもそも無理をさせてた自分が悪いのだが、橋名は複雑そうな顔をしている。
「す…すみません…俺の所為ですよね…」
「えー?いやいや…寿命だったんだと思うよー橋名くんはトドメをさしただけで…」
「トドメ…」
「冗談だってばぁーもぉ真面目だなぁ橋名くんは」
深刻そうな顔をしている橋名には面白くなってしまってついケラケラと笑ってしまう。
「元々結構使ってて度もあんまり合ってなかったからいーの。
替え時だったってこと」
それは本当にその通りで、面倒で放置していた自分が悪いのだが
橋名は肩を竦めながら、そうなのかなぁ、と呟いている。
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