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デザート 8

「橋名くんは俺が欲しいんだ?」 沙凪が聞くと彼はこくこくと頷いている。 「なんでー?」 「サナギさんが好きだから…!触りたいんです!」 必死に訴えかけられて、沙凪は眉根を寄せながら彼の顎が乗った足を動かし彼の身体を足先で撫でた。 「ほらー今も触ってるよぉ?」 「う…違くて…もっと、キスとかしたい…」 どこか睨んでいるように見上げられ、沙凪は彼の頭を優しく撫でた。 「橋名くん、俺はね… 君のそういうとろけちゃってる顔、俺以外の誰かに見られたらって思うとすごくむかつくし 君が誰かに困らされてるのも、他の奴で頭がいっぱいになってるのも…本当は面白くないんだよ?」 それは確かな独占欲で、嫉妬と焦りと、自分への自信のなさもあるのかもしれない。 「みんなの頼れる橋名くんも好きだよ? かっこいいし頑張ってるなって思うと応援したくなる。 俺もしっかりさんな橋名くんに甘えちゃってるからさ。 けどね、俺だって君が誰かに取られてしまうかもと思って焦ったり、どうしたらいいのかなって考えたりするよ」 「サナギさん…」 空になったカップとスプーンをテーブルの上に置いて、ちょっと冷たくなってしまった指先で彼の頬に触れ顔を近付ける。 その真っ直ぐな眼には今だけは自分しか映っていないことが凄く満たされたような気持ちになってしまうのだ。

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