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雨やどり *オメガバース

大粒の雨が羽織をまだらに染め始め、男は近くの神社へと駆け込んだ。 暫くすると本降りになった雨と共に、質素な着物の若者も飛び込んで来た。 「あ……ご一緒しても?」 「もちろん。わしも間借りの身だ」 若者は会釈し軒下へ入ると、ずぶ濡れの顔を袖で拭う。 「使え」 男は手拭いを差し出した。 「よろしいのですか」 「風邪を引くぞ」 「では、ありがたく」 若者は微笑みそれを受け取った。 若者が男の手拭いで白い肌を伝う雫を拭く。 あどけなさが残りながらも得も言えぬ艶を感じる。 ふと若者は鼻先を手拭いに埋めて呟いた。 「良い香をお使いで……」 はて、香など使っていないが? すると湿った空気を縫うように甘い香りが男の鼻腔をくすぐった。 その香りは肺を甘く満たし、ずくりと股の間を突いてくる。 「そなた、まさかっ……」 男は焦り若者を見ると、熱く蕩けた瞳と視線が絡んだ。 あたりの音をかき消すかのように雨足はさらに強くなった。

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