5 / 5
雨やどり *オメガバース
大粒の雨が羽織をまだらに染め始め、男は近くの神社へと駆け込んだ。
暫くすると本降りになった雨と共に、質素な着物の若者も飛び込んで来た。
「あ……ご一緒しても?」
「もちろん。わしも間借りの身だ」
若者は会釈し軒下へ入ると、ずぶ濡れの顔を袖で拭う。
「使え」
男は手拭いを差し出した。
「よろしいのですか」
「風邪を引くぞ」
「では、ありがたく」
若者は微笑みそれを受け取った。
若者が男の手拭いで白い肌を伝う雫を拭く。
あどけなさが残りながらも得も言えぬ艶を感じる。
ふと若者は鼻先を手拭いに埋めて呟いた。
「良い香をお使いで……」
はて、香など使っていないが?
すると湿った空気を縫うように甘い香りが男の鼻腔をくすぐった。
その香りは肺を甘く満たし、ずくりと股の間を突いてくる。
「そなた、まさかっ……」
男は焦り若者を見ると、熱く蕩けた瞳と視線が絡んだ。
あたりの音をかき消すかのように雨足はさらに強くなった。
ともだちにシェアしよう!

