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β夫と心中したΩ
β夫と心中したΩ。
βは領主長男。優しい兄のようなβに結婚を申し込まれ、Ωは快諾した。
数年後、β父の悪政によって民衆が反乱を起こす。
行き詰まった一族は、命を絶つしかなく…。
「一緒にきてくれるかい?」
夫からの問にΩは迷わず頷き、小瓶に入った毒をあおった。
気が付くとそこは天国…ではなかった。
「やっと目覚めた…!」
声の主は隣の領主の息子α。
「私は……βは…?」
「俺が屋敷に入った時、息があったのはお前だけだった。あいつは……βは、助からなかった」
Ωは泣き叫び、αを罵った。
「なぜあの人と一緒に逝かせてくれなかったのですか!」
病み上がりの体を起こし、ふらつきながらも死ぬ方法を探そうとするΩ。
そんなΩを寝台に押さえつけたαは静かにその言葉を吐く。
「お前はもう俺のモノだ。あの領地も民も我が一族の所有になった。民たちを丁重に扱って欲しければ、おとなしく俺の妻になれ」
「な、なんて卑怯な!」
Ω、β、αの3人は子供の頃からよく遊んでいた。
優しく物腰柔らかなβに比べ、αはよく言えば豪胆。悪く言えばガサツ。
正反対なβとαだが、同い年で領地の長男という共通点からか、周囲の目からも明らかな親友同士だった。
なのにαはいつも年下のΩをくだらないことでからかってきて…。
「あんなに優しいβが逝ってしまったばかりだと言うのに、あなたはその親友の妻を奪うのですか!貴方には人の心は無いのですか!」
「βはもう土の中だ。あいつにはもう何もできない」
鋭い視線で見つめてくるαにΩは力いっぱい叫んだ。
「だから私は貴方が大嫌いなんだ!」
ひとりで自室へ戻ったα。
Ωが目覚めてホッとした。
自分を恨むくらいの気力があれば、なんとか生きていってくれる気がする。
αは机の引き出しから1通の手紙を出した。
あの時急ぎ読んだその手紙に、αはもう一度目を通す。
−−−
親愛なるαへ
今夜12時に僕たちはこの世を去ることを決めたよ。
我が家の矜持を保つ為に。
僕を愛してくれているΩも、きっと、一緒に行くと言うだろう。
この手紙が君の手に渡るのは午後9時のはずだ。
Ωには薄い毒を飲ませよう。
間に合えば君にΩはあげるよ。
さあ、早馬で駆けておいで。
でも、Ωの心は僕が貰っていく。
君も一生叶わない恋に苦しむといいよ。
君への思いが叶わなかった僕のようにね。
β
−−−
「こいつのどこが優しいんだよ…」
αは手紙から顔を上げると、深く深く息を吐き、静かに涙を零した。
完
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